#22 旅路
しばしの休憩の後、後半が始まる。
馨にすぐさまマークがつく。
あの3人のうちの一人だ。
コートに視界を広げるとメンバーそれぞれにマークがついている。
(マンツーマンか…)
後半になって作戦を変えてきたか、そう思った。
「アナタ、もう思うように走らせないわよ」
マークについている相手がニヤリと笑う。
自分の名前は名乗ったはずなのに、もう忘れてしまったのか。
それともわざとバカにしているのか。
…どちらでもいい。
馨も相手に合わせて笑う。
「いや、後半も存分に走らせてもらうよ」
後半も前半同様に互角の試合展開を見せる。
得点も抜きつ抜かれつだった。
しばらくして馨にボールが渡る。
ドリブルをしながら相手の隙をうかがう。
フェイクを仕掛け、大柄の相手の脇を走り抜けようとする。
その時。
バシィッ!!!
「あっ!」
先程抜こうとした相手の手がボールを叩いた。
弾かれたボールは相手チームの手に渡り、一同反対方向へ走る。
「ごめん、リサ。油断した」
「ドンマイ、カオル」
横を走るリサに謝った後、キッと前のボールを睨みつける。
(クソッ、抜いたと思った瞬間を狙われたか)
相手の横を通った瞬間、「抜いた!」という思いが僅かな隙を生むのかもしれない
前半で手応えを感じたとはいえ、相手は自分より背が高くて強いチーム。
前半より後半の今の方が相手の対処の仕方もわかっているだろう。
今度は油断しない、と気を引き締める。
相手チームのシュートは外れ、ソフィアがリバウンドに跳ぶ。
リングに嫌われたボールはソフィアが跳んだ方に弾かれる。
(ソフィアがボールを取る!!)
ベストポジションにいたソフィアがボールを取ると確信した馨はすぐさま自チームのリングへと走る。
予想通りソフィアがリバウンドを取り、既に走っている馨に長距離のパスを出す。
「カオル!!」
リサが叫ぶ。
馨がボールを受け取ろうとチラリと後ろを見ると、速攻を阻止しようと相手チームも走っていた。
ボールを受け取り、リングに向かって走る。
ゴール下には誰もいない。
完全にフリーだ。
レイアップでボールをリングにくぐらせようとした瞬間、
「単純!!」
「!?」
バシィィィッ!!!
「!!!!!」
後ろからボールを叩き落とされた。
(ウソっ!?)
フリーだと思っていたのはほんの一瞬で、馨をマークしていた彼女はすぐに追いつき、馨のすぐ後ろにまで走ってきていた。
弾かれたボールはリサが拾い、態勢を立て直す。
(くそっ……)
今の速攻は確実にもらったと思っていた。
それが、いつの間にか追い付かれていた。
「easyね。すぐ追い付いたわ」
「……」
ボールを弾いた相手がまたニヤリと笑う。
「さっきの自分のプレイはできて当たり前」というよりは「アナタのプレイなどそんな程度」と言わんばかりの笑い。
…気に入らない。
少しイラッとする馨にソフィアが小さく声をかける。
「カオル、気をつけて」
「ごめん、ソフィア。速攻のチャンスだったのに」
「違うの、そうじゃなくて…」
「大丈夫、次は決める」
「カオルのプレイじゃなくて、相手のプレイよ」
「…相手の?」
「うん…なんか嫌な感じがして」
「嫌な感じだったのは会った時からじゃない」
「それはそうなんだけど、なんか変な感じがする…」
「大丈夫だよ、ソフィア」
不安げな顔をするソフィアに馨はニコリと笑って返した。
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