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#22 旅路


マイケルは公園を出たところで立ち止まり、チラリと後ろを振り返る。

木々の間から、ベンチに座って右手を見つめている馨の姿が見えた。

男として女性を家まで送り届ける任務を果たせなかったのは残念だったが、今日はカオルと話をする事ができてよかったと再び歩き出す。

自分のこれからの事を改めて人に話す事でより気持ちが引き締まった。

頑張ろう、という気持ちが大きくなった。

カオルは自分と境遇が似ていると言っていた。

誰も自分の事を知らない土地に行ってゼロから自分の力を試す、確かに近いものを感じる。

こんな偶然があるんだと自分でも驚く。

だけど、「気持ち」までは似ていないように思えた。

これからの事をワクワクした気持ちで話した自分と違って、カオルはうつむき加減だった。

目標に向かってアメリカに来たはずなのに、浮かない顔をしていた。

『じゃあ、なんでそんな顔をしているんだい?』

マイケルはそう質問しようとと思ったが止めた。

日本で何かあったのか、それともアメリカに来て何かあったのか。

そう聞きたかったが、聞くことが出来なかった。

聞くことで追い打ちをかけてしまうような気がして。

それに、カオルは明らかに過去の事を言うのを躊躇っていた。

そんな相手に「いいから言ってご覧よ」と言うことは出来なかった。

ましてや初対面の相手だ。

お節介な事をしては失礼だ。

何があったのかは聞けなかったが、過去の事に負けず前を向いて欲しいと思いながらもう一度公園の方に振り返る。


「あ、カオルがカナガワのどこに住んでいたのか聞いておけばよかったなぁ。
オススメの場所とか店とか色々リサーチできたのに…こりゃ失敗したなぁ」


せっかく日本に行くのだからそれくらいの他愛のない話は聞いておけばよかったと、マイケルは頭を掻いた。



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