#3 同じ顔

流川と馨以外の一同は自然に体育館に集まり、各々驚きの顔を隠せないでいた。


「会えばわかる、ってこの事だったのね…」


彩子は腕を組んで安西の言葉に納得した。


「これは驚いたな…」

「あの流川が双子だとはな…」


木暮と赤木はお互い顔を見合わせる。


「しかも超そっくりときたもんだ」

「…だな。世の中には兄弟とは思えないほど似てない兄妹もいるってのによ…」


宮城は目を丸くしたままで、三井はチラリと赤木を見る。


「あのルカワのヤロウと同じ顔がこの世に2つ存在するとは…恐ろしいぜ」


色んな感想をお持ちのようで…。

流川姉弟といえば少し有名な存在だった。

そっくりの美形の双子がいると。

富ヶ丘中、男バスの流川楓、女バスの流川馨。

二人とも1年の時から花形プレイヤーだった。

そのお陰で余計に目立つ存在となった。

ことに弟の楓の人気は女子には圧倒的で、男バスの練習を見にくる女子は多くいた。

馨はそんな弟の影響を受けてしまい、女バスの練習にも女子がのぞき見をしにきていた。


「目立つ子たちだったからね」


彩子が得意げに中学時代を語った。

赤木は腕組みをして目を瞑る。


「なるほど。やはりバスケ経験者か…」




流川と馨は部員と離れて体育館を出た辺りで座り込み、何やら話をしている。

それを見ながら桜木は腑に落ちない顔で眺める。


「ウーム、なんか引っ掛かる…」

「「?」」

「あの二人、しばらく会ってないっていう雰囲気だったぞ」


桜木の感じた違和感に三井も同感のようで、その話に乗っかる。


「確かにな。姉弟なら同じ家に住んでいてもおかしくないのに二人の反応はちょっと変だな」

「アヤコさんも『帰ってきた』とかそんなことを…」


さすがに鋭い。

少し考えた宮城が一つの案を出す。


「県外の高校へ行ったとかじゃないスか?」

「…おお!なるほど!」


桜木が手をポンと叩く。


「県外なんてもんじゃないわ」


桜木の横で彩子が真剣な顔つきで首を振る。


「なんだ、違うのか?」


赤木の問いかけに彩子がチラリと馨を見ながら低めの声で言う。


「…アメリカよ」

「ぬ……!!…アメリカ…!」


馨は中2の夏に突然アメリカに行った。

直接の理由は彩子にもよく判らないと言う。

ただ、バスケ部のエースがいなくなった衝撃は大きかったそうだ。

彼らが3年になった年が楽しみだった富ヶ丘中にとっては……


(まぁ、女子の別の意味での衝撃もそれ以上に凄かったけどね…)


彩子が当時を思い出し、呆れ気味に眉間にしわをよせた。


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