#22 旅路
馨達が次に公園に来たのは2日後だった。
また来ると言っていたマイケルの姿は今日は見えなかった。
そのせいなのだろうか、今日の公園は先日の賑わいはなく、少し落ち着いている。
今日は彼は来ないのだろうか。
「今日は空いてるわね!」
よし、とばかりにソフィアはポニーテールを結びなおす。
マイケルのプレイが見られないのは少し残念だと思ったが、人が少ない分、今日はコートを使えそうだ。
「マイケルがいなくて残念だったわね、カオル?」
「だからやめてってば!」
ソフィアはからかう事を忘れない。
もう、本当に違うのに。
今日はそのソフィアと1on1をする事になった。
「ようやくカオルとできる!」とソフィアは気合十分だ。
カオルとてやる気十分だ。
アメリカという土地に逃げに来たのではない、自分の力を証明するために来たのだと自分自身を納得させる為にも、負けるわけにはいかなかった。
ソフィアは180センチはある長身のセンタープレイヤー。
165センチの馨とはミスマッチの身長差だ。
しかし、今まで馨といつも一緒に1on1の相手をしていた流川もそれ位の身長はある。
十分対応できるし、いつもの身長差だ。
ますます負けるわけにはいかない。
1on1を始めてみると、ソフィアと初対面の時にリサが言っていた通り、勘のいいプレイヤーだということがわかった。
考えるより先に体が動くという感じでなかなかリング近くへの侵入を許してくれない。
経験も豊富なのだろう、それも手伝っていて、とてもいいディフェンスをする。
しかし、馨も経験の豊富さでは負けてはいなかった。
特に身長差のある相手とは。
馨は一瞬の死角をつき、ソフィアのディフェンスをかわす事に成功する。
(抜いた!!)
それと同時にレイアップシュートの体制に入る。
(もらった!!)
シュートを確信し、リングに向かって跳ぶ、
その瞬間。
一瞬のうちに背後に人の気配。
バシィィッッ!!
「あっ!!!」
馨の手からボールが離れた瞬間、ソフィアが後ろからボールを叩き落とした。
方向を変えられたボールはコート脇へとバウンドしていく。
「抜いたと思った?まだまだ甘いわよ、カオル」
誇らしげに笑うソフィア。
勝ち気なそのプレイ、面白いと思った。
「…にゃろう」
馨もつられてニヤリと笑う。
楓との1on1でも後ろから叩き落とされた事があったっけ、と思い出す。
あの時、私は互角に戦えていた。
だから、ここでも戦えるはず。
「負けないよ、ソフィア」
その後も攻守を交代しながら1on1を続ける。
身長差のハンデを物ともしない馨のプレイにソフィアは面白味を感じていた。
お互いに負けん気の強さを持っていた二人は互角の戦いを見せる。
ソフィアとの身長差を動きの素早さでカバーする。
その早い動きに指笛を鳴らすギャラリーも現れ始めた。
そのギャラリーの中に「面白いプレイヤーがいるな」と見ている人物がいた。
マイケルだった。
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