#22 旅路
公園ではやはりバスケをする人が集まっていた。
普段から賑わっている公園だったが、今日はいつも以上に盛り上がっているような気がした。
歓声と感嘆の声が周囲から湧き上がる。
歩きながらその様子を見ると一際目立つ人物がいた。
「あの人かな…?」
金髪を綺麗にオールバックにきっちりまとめているがとてもラフな格好をしている長身の男性。
長身ながらその動きはしなやかで、相手が持っていたボールをスルリと奪い去っていく。
「うまい!!」
相手の動きを完全に読み切った動きだった。
顔は余裕の笑顔を浮かべていた。
縫うようにドリブルで相手をかわしていき、ブロックもなんのそので豪快なダンクを決める。
リングが大きな音を立てる。
「……!!」
そのダンクの瞬間、馨の目にある人物が重なって見えた。
自分とよく似たストレートで黒い髪の人物が…
思いっきりリングにボールを叩きつける、そんな姿が…
馨は思わず目を擦る。
「うおおおお!!!」
「すげぇっ!!!」
馨が錯覚を見た直後に大きな歓声が上がる。
きしむリングから手を離した彼の元に自然と人だかりが出来る。
皆、彼を讃えている。
いつも以上に公園が賑わっていた原因は彼のプレイだということが見てとれる。
馨はその様子をじっと見つめていた。
(すごくうまい、あの人。とても柔軟な動きをするし、そしてなによりあのジャンプ力…!物凄い飛距離だった)
彼のダンクはリングから少しだけ遠い位置からのジャンプから繰り出された。
ほんのワンプレイだったが馨は目を奪われてしまった。
(ダンクは楓のを見慣れてるつもりだったけど…あの人のは全然違う…!豪快なのは一緒だけど、なんだろう、格が違うっていうか…)
流川のダンクも周囲をアッと言わせるダンクだったが、彼のダンクは何か違って見えた。
やはりアメリカという環境の違いなのだろうか…
考え込む馨の肩に後ろから誰かが手を触れる。
「カオル!」
「あ、ソフィア…!」
学校が違うソフィアとは会うのは久しぶりだった。
「久しぶりね、カオル!」
「ソフィア!ごめんなさい、ここに顔を出してなくて」
「そうよ、まだカオルとは1on1やってなかったでしよ?私、待ってたんだからね」
ソフィアとは1on1をやらずじまいて別れたきりだった。
申し訳ない。
「そうだったよね、ごめんね」
ソフィアの後ろには馨と同じように申し訳なさそうな顔をしたリサが立っていた。
「私こそごめんね、カオルを誘おうと思ってたんだけど、できなくて」
リサの誘いを一度断ったのは私の方なのに、と馨は軽く頭を振る。
「そんなことないよ、リサ」
誘ってくれたのに断ってしまった。
謝らなければいけないのはこちらの方だ。
それ以降、リサが馨を誘わないでおいたのはもしかしたら馨が自分の意思で公園にくるのを待っていたのかもしれない。
これは馨の想像でしかなかったけれど、そんな行動をしてくれたリサに感謝していた。
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