#22 旅路
アメリカといえばニューヨークのようなビル街が真っ先に浮かんだが、住宅地に入ると至る所に緑が植えられていて少しアンティークな印象を受ける。
そして、人々が集まる公園の一角には当然のようにバスケットリングが設置してある。
全ての公園にあるわけではなかったが、日本と比べると段違いで目に入る。
バスケットリングにはプレイヤーが集まり、各々練習したり3on3が繰り広げられ、自然と観衆が出来る。
当然素晴らしいプレイには拍手と指笛が鳴り響く。
「アメリカ」と一括りにするには広大な土地だが、この国ではバスケは身近なスポーツなんだと改めて感じることが出来る。
NBAというバスケのプロチーム、そして彼らが試合をするためのバスケットボール会場。
試合を行えば会場やその周辺は大盛り上がりになる。
日本で言えばプロ野球がその位置にいるかもしれない。
それほど浸透しているスポーツなのだ。
馨がリサと1on1をしてから何日か経った。
あれからリサと公園には行っていなかった。
慣れない環境、聞き慣れない言語の中での勉強について行くのに必死だった。
あれからプレイしたいとは思っていたものの、まずは勉強だと感じた。
使い慣れない英語での会話、そして英語での授業。
先生やクラスメイトも馨がわかるようにゆっくり話しかけてくれたり、通じない言葉があったら言葉をわかりやすくして説明してくれたり。
そのたびに馨は思うのだった。
「私には判らない事ばかりだ」と。
そう思うたびに自分を恥ずかしく、情けなく感じた。
私の知識はこんなちっぽけなものなんだ、と。
相手の言っている事はなんとなく汲み取る事はできる。
でも会話となると難しいものだった。
自分の話したい言葉の単語が出て来なくなるたびにもどかしく思い、「恥ずかしくて情けない」思いをする。
その思いを少しでもなくそうと思って知識を頭に詰め込む日々を送っていた。
ボールの感触を忘れたくなくて家に帰って家の前の歩道でドリブルしてみたりボールを操ったりしていた。
家の前の道路と歩道は車通りと人通りが少なかったので周りの迷惑にはならないのが馨には幸いだった。
それでも、放課後に図書館で辞書やテキスト、ノートと睨めっこする勉強漬けの状態は肩が凝る。
今日も図書館で英語を頭に叩き込んでいた馨は、んっと背伸びをする。
窓を見るとまだ外は明るかった。
そういえばリサからの誘いを勉強したいからと断った事があったな、と思い出す。
久々に公園に行ってみようか…
リサとソフィアはいるだろうか。
あれから一緒にプレイしていないけれど、また受け入れてくれるだろうか…
少し不安になりつつも、プレイする事が恋しかった馨は机の上の本を鞄に入れて公園へと向かった。
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