#22 旅路
コートに入るとリサがコート奥に向かって声をかけた。
「ハイ!ソフィア!」
ソフィア、と呼ばれた少女がこちらに気づくと立ち上がり、ニコニコと笑いながら手を振り、馨とリサの元に駆け寄ってきた。
「うわ…」
馨は駆け寄る少女の身長に驚愕した。
ノースリーブのシャツに、ブロンドの髪をポニーテールにした少女はリサとハグで挨拶をする。
「リサ、しばらくコートにこないから心配したのよ」
「ごめんね、ソフィア。その代わり新しい仲間を見つけてきたの」
リサは馨の後ろに回りこみ、両肩に手をポンと置き、ソフィアに見せるように馨を紹介した。
「カオルよ」
「えっ?」
突然紹介された馨は何をしたらいいのかわからず、リサに助けを求めたくて後ろを振り返る。
「カオル、こちらソフィア。彼女とはここで一緒にバスケするのよ」
「初めまして、カオル」
ソフィアはニコッと笑って馨にそっと右手を差し出し、握手を求めた。
馨もそれにつられるように右手を差し出し、握手する。
見上げてしまうほどの身長のソフィア。
(楓よりちょっと低いけど…こんな背の高い女の人、初めて見た…)
180はあるかと思われるソフィアの身長。
リサが彼女の身長について馨に自慢しないということは、彼女の身長はここでは当たり前なのだろうか。
そういえば、バレーボールの選手でも男性顔負けの身長の選手がいるのだから、180を超える女性がいても当たり前なのかもしれない。
だけど、こうして目の前にすると知っていても圧倒されてしまう。
「どうしたの?カオル?」
顔を覗き込むリサにハッと我に返り、馨も自己紹介をする。
「初めまして…。馨、です。あの、背が高いんですね」
驚きを隠しきれない馨に、ソフィアはケラケラと笑い出す。
「まぁね。最初は背が高すぎて嫌だったけど、バスケでセンターやるようになってからはもっと伸ばしたいって思ってるわよ」
「えっ!」
馨にとって「もう十分高いのに」と思う身長なのに、まだ伸ばしたいだなんて…
(…贅沢すぎる)
その身長を2センチでも分けて欲しいくらいなのに。
「身長伸ばしたくて律儀にカルシウム摂ってんのよね~、ソフィアは」
「リサ!知ってたの?」
「そりゃあ、食事のたびに魚やミルク食べていれば嫌でも気づくわよ」
「oops!」
二人のやり取りに、同時に笑いが発生する。
誰にも内緒にしていたのに、とオーバーにアクションをとるソフィア。
(そっか、日本でもアメリカでも、カルシウム摂るって発想は一緒なんだ)
そう思うと笑いが止まらなかった。
すると、再びリサが顔を覗き込んできた。
「カオル、やっと笑ったね」
「え?」
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