#21 流離人 vol.2
見上げた空は青かった。
ところどころに雲が浮かんでいた。
海を見ていた時も思った。
「この空はどこまでも続いて、繋がっている」と。
遠く離れているけれど、繋がっているのだと、理屈なく感じた瞬間だった。
そんな気持ちになった時、なぜか一人ではないと思った。
馨とは常にバスケットによって繋がっていた。
時間があれば1on1をし、時間が合えばお互いの試合を観戦する。
試合が終わればダメだしをしたり歓喜したりする。
…部活が終われば約束する事無くどちらかが終わるまで待つ。
当たり前の事が当たり前でなくなった今、ボールを持つ手を止めた時についしてしまう「辺りを見回す癖」…
そんな事をしてしまう自分の「理由」がわかった。
そんな行動が今まで当たり前だったのに、今、自分自身そんな行動を意識するようになったから。
…もう、やめよう。
辺りを見回すのは。
見回してもアイツはいないし、虚しくなるだけ。
それに、バスケをする事が自分の全て。
バスケをして、強くなって、試合に勝つこと。
そう誓ったばかりだ。
もう、こんな気持ちになるのはよそう。
桜を見ながら、流川はそう思った。
流川は帰り道、駅前のスポーツショップに立ち寄った。
そこで黒のリストバンドを一つ買った。
このリストバンドに思いを閉じ込めよう。
閉じ込めるけれど、常に身につけて、忘れないように。
「流離人~さすらいびと~」
fin
2012.02.04
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素敵なイラストを戴きました