#21 流離人 vol.2
薄手のコートのポケットに両手をつっこみ、花弁が舞い散る参道を歩く。
一人でここに来るのは初めてだったせいか、妙に寂しさを感じる。
そして、一人で見慣れた景色を見てきたせいも相成って少し感情的になっている。
一人で電車に乗ってきた事を今になって少し後悔するが、春の暖かい風に自分を置けば、気持ちが切り替わるかもと思ってやってきたのだから自分の行動を責めるしかない。
バスケに対する思いが少し変わった今、一人になった寂しさを紛らわす事ができるかと思っていた。
でも、そう思えば思うほど、いつも近くにいた人物の記憶が蘇ってくる。
春…夏…秋…冬…。
そんないくつもの移り行く季節を共に歩いてきたはずの君が、いない。
そう思った時に胸の奥が痛み出した。
切ない痛みをやり過ごしたくて足を止め、桜を見る。
その時だった。
一瞬だけ強い風が辺りを吹き抜けた。
その風を受けて桜の花弁が一気に散っていく。
沢山の舞い散る花弁は、牡丹雪のようだった。
豪快かつ優雅な牡丹雪を流川は思わず見入ってしまう。
次々と舞い降りる花弁は手を伸ばせば自分の手のひらに捕らえる事ができる程だった。
無意識にその花弁を捕らえようと手を伸ばすが、花弁はするりと逃げてしまう。
掴めそうで掴めなかった。
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