#21 流離人 vol.2


オオオオォォォーー……

三人のマークの上からダンクを決めた流川に驚きと感嘆が混ざった声が体育館に響いた。

ダンクを決め、リングから手を離し着地した瞬間、富ヶ丘メンバーが駆け寄る。


「すげぇっ!流川!!」

「お前、どうなってんだ!?三人のマークの上からダンクって!」


流川はメンバー達の喜びの声に応える事ができなかった。

自分でも夢中で、自分でも何をしたのかよくわからなかったからだ。


(なんだ、今の感覚…)


流川はダンクを決めた自分の右手のひらをじっと見つめていた。

「負けたくない」という気持ちで決めたダンクシュート…。

その流川の懇親のダンクはゲームの流れを変えた。

富ヶ丘中のメンバーの動きは格段によくなり、流川にパスが回るようになる。

流川もまた、先ほどのダンクで勢いづいたのか、その後、三本のダンクを三人のマークマンの上から決め、四中を蹴散らした。

そして、この練習試合でなんと66点中51得点を流川一人で挙げ、「富ヶ丘中の流川」の名前をしらしめる結果となった。


「くそっ!三人でも流川を止められないのか!」


四中の監督は悔しさをぶつけていた。

一方の富ヶ丘中の面々は歓喜に沸いた。


「やったな、流川!」

「流石、富中キャプテン、やってくれるぜ!」


メンバーはそう言って流川の背中を叩く。


「いて…」


喜びのあまり力強く背中を叩くメンバーに流川は顔をしかめる。

そこに長谷監督がメンバーの前に立ち、優しく微笑んだ。


「よくやった。いい試合だった。そして流川…」

「…はい」

「キャプテンらしくなったな」

「……」

「お前らしい『キャプテン』だ」

「…はい…」


長谷監督はそう言った後、クールダウンするよう部員にいい、四中ベンチへと挨拶をしに行った。

流川に長谷監督の言葉が印象強く残った。


『キャプテンらしくなったな』


と。



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