#2 出会い

流川はボールを持ったまま二人の間に立つ。

二人の会話がピタリと止まる。


「なんだ、ルカワ。話のコシを折りやがって」

「てめーにゃ関係ねーよ」

「なにっ!」


そう。このどあほうには関係ない。

無視を決め込む。

自分が用があるのは自分よりはるかに小さい、ニット帽の人物。


「………」

「………」


上から黙って見下ろすが、相手はこちらを見ようとしない。


「てめぇ!このルカワ!無視するな!」


…無視無視。

流川は桜木の言葉など聞こえないフリをして彼女に話しかける。


「…どうしてここにいる」

「………」


相手は無言。相変わらず反応しない。


(…まったく…)


返事をしないので、ニット帽を上からグッと掴み、そのまま上方向に強引に引っ張りあげる。


「あっ……!」


思いもよらぬ報復に、思わず声が漏れ、帽子を取った人物を見上げる。


「な、なっ……」


桜木は二人の顔を交互に何度も見ながら声を詰まらせる。

帽子から現れた真っ直ぐな黒い髪。

帽子のお陰で髪はぺしゃんこになっていたが、長めのショートカット。

眼鏡をかけているが、この顔は…

言葉にならない声を出している桜木の横で流川はニット帽を彼女に渡す。


「やっぱりお前か」


桜木が二人を交互に指差し、ワナワナと声が震える。


「ル、ルルルル、ルカワが二人……!!」


眼鏡をかけているが、誰が見ても一目瞭然だった。

今、向かい合ってお互いを見ている二人の人物の顔は恐ろしいほどそっくりだった。

背丈、髪型、性別の違いによる微妙な顔付きの違いがあるものの、力強い切れ長の瞳は間違いなく同じものだった。


「………!!」

「すげぇ…」

「おんなじだ…」

「こっ…これは…」

「そうか、どうりで見たことあると思ったら…」


今度は一同、驚きのあまりポカンとしている。


「…やっぱり…わかった?」


意地悪そうに微笑みながら静寂を破る。


「……たりめーだろ」


見下ろしながら応える。

しばらく会ってなくても当然わかる。


「あながち、『ルカワが二人』っていうのは間違ってないけどね」

クククッと企むように笑いながら桜木をチラリと見る。


「???」


桜木は固まったままだ。


「私もルカワだし」

「??????」


桜木は意味がわからず、頭の上にハテナマークをいくつも出している。


(……どあほう)


流川は軽くため息をついた。



To be continues
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