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#21 流離人 vol.2


3年生との引退試合の後から流川のプレイは少し変わった。

それは僅かな変化でしかなかったが、気迫だけがまるで違っていた。

練習中の集中力、プレイに対する鋭さ。

特にオフェンスに対しては突出して鋭さを増していた。

怖すぎるくらいの気迫だった。

その強すぎるまでの気迫に物怖じし、特に何も指示という指示をしない流川に疑問を持つ者もいた。

しかし、何も言わず強気なオーラを放ちながら黙々と懸命に練習する流川の姿を見ているうち、それにつられるように部員たちの意欲が上がっていった。

しかし流川自身、まだ迷いはあった。


「これでキャプテンが務まるのか」


「自分はこれでいいのか」と。


ただ自分本位でプレイしていては今までと何の変わりもない。

何かすべきだとわかっていても、どうしていいのかわからず、その気持ちが更にプレイへの集中心をかきたてていった。

そして、バスケをしている間はその迷いから解放された。

がむしゃらにプレイすればするほど、その解放感が強いことは3年生との引退試合で一度体感したことだった。

重い枷(かせ)を外されたかの様に一気に気持ちを爆発させる事ができた。

だから流川は以前以上にバスケに対して強い気持ちで臨んで行った。

だけど…

その解放感は一時的なものであった。

練習を終えてふとボールを持つ手を止めた瞬間からまた気持ちが元に戻ってしまう。

「キャプテン」という立場からくるものなのか、はたまた違うものからきているのか。自分でもわからなかった。

…探してもわからなかった。

…見つからなかった。

深く考えすぎて、自分は一体何なのか。そんな事まで考えるようになっていた。

その反動で、流川はバスケにますます集中していった。

それは流川にとって皮肉でしかなかった。

負の感情が自分の力になっている事が流川を苛立たせた。


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