#21 流離人 vol.2



それは、蜃気楼。


街中を歩けば…目の前の景色が霞んでいるように感じる。


空は厚く重たい雲に覆われ、太陽はその雲に姿を隠していて見る事が出来ない。


あの雲を取り払ってしまいたい。


あの雲の向こうにある光が見たい。


どうしてあの雲はそこに存在するのか。


どうしてそこまで太陽の姿を見せてくれない。


…それは自分自身にも当てはまるのかもしれない。


扉を開ければ光が見える「はず」なのに、堅く閉ざされていて開ける事ができない。


自分の中の、もう一つの声が聞こえてくる。



(本当に、それは開ける事ができないの?)



開ける事ができる扉を自分は「開けない」のかもしれない。


本当は開ける事が出来るのに、その扉を開ける一歩がでないのかもしれない。



(どうして、開けないの?)



多分、その一歩が出ないから…


流離い歩けばどこへ吹くかわからない風が吹き抜ける。


この風はどこに行くのだろうか。


考えても答えは出ない。


探しても見つからない。


自分の、存在する「証」は。


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