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#20 流離人 vol.1


試合は4点差で3年生チームの勝ちとなった。

しかし、稲村の顔はすぐれず、心には敗北感が残っていた。

勝った気がしない…

稲村にとって後味の悪い試合となった。


「センパイ…お疲れ様でした」

「……」


後ろから流川の声が聞こえるが、返事をする気にもならなかった。

流川のプレイは一段階上に進んでいた。

キャプテンになったから責任からなのか…それとも別の何かが彼を成長させたのか…


「流川、お前…」


稲村が口を開くのと同時に流川が上からかぶせるように話しかける。


「センパイ。俺、もう負けませんから」

「……」

「…失礼します」

「待て、流川」



そのまま向きを変え立ち去ろうとする流川を稲村は呼び止めた。


「俺は、今度新設される高校にスカウトされた。学校の意向でバスケに力を入れるらしくてな…俺はそこに行こうと思う。俺も…二度と負けねぇからな、流川」


何を言っているんだ俺は、と小さく吐き捨てながら体育館を出て行く稲村に、流川は首を傾げる。


「……?」



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