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#20 流離人 vol.1


流川の怒りが収まりきらないうちに試合は開始された。

流川の怒りは試合にぶつけられた。


「なんだ、流川のヤツ。気合入ってるな」

「なんか、気迫が違うっつーか…」

「怖いくらいだな」


その強い気迫に同じチームの部員は物怖じし、3年生は今までに見なかった流川の鋭さを感じていた。

そんな部員たちの会話を聞きながら稲村はつまらなそうに呟いた。


「ふん。キャプテンになったからって気張りやがって」


稲村がボールを受け取ると、すかさず流川がマークにつく。


「流川…」

「……」

「調子に乗るなよ」

「乗ってねーです」

「お前がキャプテンだって?」

「…悪いですか」

「ふん、別に」


自分がキャプテンになったことを気に入らない、といった稲村の態度に流川のイライラは募る。

稲村と流川が対峙するのを見て、部員たちは興味本位で「新旧キャプテン対決だ」と騒ぎ立てるが二人の耳には入らない。


「お前に務まるのかと思ってな」

「……」

「できるのか?お前に」

「関係ねーです」

「…生意気な」


稲村と流川の攻防。

稲村はキャプテンを務めるだけあって、その腕も確かだった。

その強気で負けず嫌いな性格ゆえ、プレイも強気そのものだった。

そんな稲村のプレイと流川のプレイは共通するものがあったが、両者はそれを意識などしたことはなかった。

激しいオフェンス力を持つ二人の1on1。

その激しい1on1に誰もが息を飲んだ。

特に流川のオフェンスは今まで見たことのないほどの激しさを感じた。

それは、なぜか。

見ている部員にはわからなかった。

流川本人にもわからなかった。

正確に言うと、意識していなかった。

今までぶつけられなかった気持ち。

今まで堪えてきた気持ち。

それが知らない間に一気に爆発していた。


(なんだ、コイツ…)


流川の凄味を目の前にして稲村は思わず息を飲む。


(今までと、違う…?)


ちょっとした違和感だった。


(うまくなってる?気のせいか?)


今までの流川とは何かが違う。

一本芯が入ったような…何かの意志を感じた。



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