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#20 流離人 vol.1


数日後、流川は体育準備室に足を運んだ。

軽く扉をノックし、それを開ける。

どういうわけか開け方が丁寧になってしまうのは多分心なしか緊張しているせいだと思う。

何気なく開けていた扉が、今は違ったものに感じる。

扉の前で会釈する流川を見た長谷は姿勢を改め椅子に丁寧に座りなおす。


「どうした、流川」


流川は長谷の前に立ち、一呼吸置く。


「監督…俺、やってみようと思います。…キャプテン」


真っ直ぐな視線だった。

流川なりに悩んだのだろう。

その結果の、真っ直ぐな視線だ。


「そうか…やってくれるか、流川」

「…はい」

「キャプテンだからって何も気張らなくていいんだぞ、流川。お前はいつも通りのプレイをしていけばいいんだ。それが、お前の力だ」

「…はい」


全ての流れを知っていたかのような長谷の発言…全て見越していたのだろうか。

流川はプレイでチームを引っ張っていく人間だと。

それを流川自身で見出すように促したのだろうか。

もし、そうだとしたら恐ろしい監督だ…と思った。

…監督の反応を見る限りでは、監督の想像通りに事が運んだようにしか思えないが。



流川は富ケ岡中のキャプテンになった。

部員たちはさも当然のようにそれを受け入れた。


『流川ほどの実力がある人間がキャプテンに選ばれるのは当然』


と。

そして、3年生の送別会と称した「3年生vs1・2年生の試合の日を迎えた。



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