#20 流離人 vol.1
3年生が引退した今、2年生にその役目が回ってくるのは当然の流れ。
ミニバスをやっていた頃はムードメーカー的な人物がキャプテンをやっていたので中学でも当然そういった人物がなると思っていた。
…まさか自分に声がかかるとは。
正直キャプテンという役目が自分に合っているとは思えない…。
一瞬、考え事をする流川に長谷は言葉を続ける。
「……返事をしないという事は、嫌なのか?」
「……いえ、でも…」
嫌、ではないが…すぐに「はいやります」とも言えなかった。
その後の返事ができなくて、流川は黙ってしまう。
「まぁ、そうだな…。お前が人の上に率先して立ってチームをまとめていくタイプではない事、私は十分知っているつもりだが…」
「では…どうして…」
自分の中でも引っ掛かっていた事が長谷の口から出てきて少し驚く。
それだけわかっていながら、どうして…
「そうだよな。そう思っていながら…。それでも、お前に頼みたい。もちろん強制はしないが…、流川、お前にならキャプテンが務まるはずだ。私はそう思ってる。」
「監督…」
突然の長谷の依頼に流川は戸惑いを隠しきれなかった。
なぜ、監督は俺をキャプテンに…?
監督の言う通り、自分はチームをまとめて引っ張っていくような事は苦手だ。
自分で言うのもどうかと思うが、自分はどちらかというと一人で突っ走るバスケをする人間だ。
そんな自分をあえてキャプテンに任命するなんて。
監督は何を考えているんだろう…
自分がバスケ部を引っ張っていくキャプテンに…?
監督には考えがあるからこそ、自分に声をかけたのはわかっているが…。
断りたい気持ちでいっぱいだったが、監督の「思惑」と「期待」を考えると一つ返事で拒否することはできなかった。
「あの…、考えさせてください…。」
「そうか。3年生との送別の試合は来週だ。いい返事を待ってるよ」
「…失礼しました」
流川は長谷に頭を下げ、体育準備室を後にした。
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