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#20 流離人 vol.1


ふらりと足を運んだ海岸。

太陽は西に傾き、その光を海に反射させ、細かく打つ波一つ一つをキラキラと輝かせていた。

昼間は海水浴客でにぎわう湘南の海岸。

今は昼間ほどの賑わいはないが、夏の海の余韻を楽しむ人々の姿が多く残っている。

一歩海岸に足を踏み入れれば波の音が静かに響き渡る。

今日は海からの風が強いような気がする。

時折吹く風が気持ちよく感じる。

太陽の光は徐々に空をオレンジ色に変えていく。

特に目的もなく太陽を正面に、波打ち際ギリギリを歩いていく。

湿った砂浜に残った足跡は波によって消されていくが、付けた本人はそれを気にせずにゆっくりと歩き続ける。

眩しく輝く太陽。

普段何気なく見ている夕焼け。

なぜだろう、オレンジ色の空がこんなにも悲しく見えるなんて。

感情の違いでこんなにも見え方が変わってくるだなんて。

…知らなかった。

特に、一人で歩く海岸は…。

こんなにも寂しいものだったのかと夕日を見ながら流川は感じていた。

ふと足を止めると同時に強い風が吹き抜けていった。

突然の強風を受け流すようにとっさに顔を逸らす。

確かめるように視界を開けていくと正面には水平線。

水平線と、微かに色づく空。

その境界線をじっと見いる。


(…広い…)


当たり前のことだったが、改めて広いと感じた海。

全てに繋がっている海と空。

だけど「それ」はあまりにも遠い。

遠すぎる…。

ぎゅっと目を閉じ、見えない足元を見る。

風が、やさしく通り抜ける。


「どあほうが…」


搾り出すように出した声は、風に流れ、消えていった。



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