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#19 ふたりぼっち vol.3


流川は苛立つ気持ちを外に出しながら階段を下りていく。


しばらく降りた後、まるでそこに流川がくるのを知っていたかのように階段下で待っている人物がいた。



「流川、先輩…」



水沢イチローだ。


馨のアメリカ行きは富ヶ岡中の話題の中心になっていた。


来年度、女子バスケ部の中心となって引っ張って行くと思われていた馨のアメリカ行き。


当然ながらバスケ部は騒然となり、ミーハーな女子達はどうしてこうなったのかと噂話で盛り上がっていた。


そんな中、二人と仲のいい水沢に質問との嵐が襲っていた。


当然ながら詳しいことなど何も知らない水沢はただただ困り顔を振りまくだけだった。


混乱の中、こうして話題の渦中にいる流川と対峙することができたのである。



「流川先輩、馨先輩は…馨先輩は本当にアメリカに行くんですか?」



憔悴しきった顔の水沢を見て流川は少し目を細める。



「…あぁ」


「どうして…っ!どうしてなんですか!?」


「アイツが決めたことだ」


「決勝戦の…稲村キャプテンの事が原因なんですか?」


「…!」



水沢の言葉に流川はピクリと反応する。


…あんな奴の言葉のせいではない。


違う。


絶対に違う。



「…関係ねぇよ」



そう言って階段を降りきり、水沢と一瞬肩を並べ、流川は更に下の階へと足を運ぶ。



「流川先輩っ!いいんですか!?」



流川は振り返ることはなかったが足を止めてポツリと言う。



「馨が決めたことだ。関係ねぇよ…」



そう言って流川は階段下へと消えていった。



「流川先輩…」



静かに階段を降りていく流川を見て、水沢はこれ以上動くことはできなかった。


追いかけて引き止めて、もっと問い詰めたかった。


彼には彼女を引き止める力があるはずだ。


そうして欲しかったが、水沢にはその彼を引き止める力はなかった。


階段を降りていく流川を引き止める力が…







なぜ、自分には力がないのだろう…


もっと強ければ、今すぐにでも変えられるのに。


手に入れたい力は、動かさなければ自分のものにできない。


未熟な自分たちができることは動くこと。


前に向かって動くこと。


気持ちはなんであれ、前に向かって進まなければ、何も変わらないのだから。


色んな思いが交差する。



「ふたりぼっち」
fin
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2011.06.10
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