#2 出会い
「みんな気合い入ってるな、赤木」
赤木と木暮は部員の練習風景を体育館入り口で見ていた。
「当然だ。もっともっと練習して今度こそこいつらに全国制覇してもらわんとな」
「ははっ、相変わらず手厳しいな」
目の前の練習風景を赤木はキャプテンだった頃には見せなかった優しい目で見守る。
自分が長年抱いていた全国制覇の夢は叶わなかった。
しかし、こいつらなら、きっと………
「コラァ!リョーちん!ルカワにばっかりパスして!!!ズルだ!ズルー!」
「なにおう!花道!神奈川ナンバーワンガードの絶妙なパスに文句つける気か!」
「…素人は黙って見てろってんだ。全く…」
「なんだと!ミッチー!」
「はぁーっ……どあほうが」
「ふんぬー!!てめー!ルカワ!!!」
試合形式の練習に桜木が外から野次を飛ばし、内輪モメが発生していた。
「……やっぱり不安だ…」
前言撤回。
赤木は眉間にシワを寄せて一抹の不安を感じていた。
その時。
「あのー……赤木さんですか?」
「ん?」
後ろを振り返ると一人の人物が。
黒の薄手のニット帽を深く被り、太めのフレームの眼鏡をかけている。
帽子からのぞく黒い髪が目にかかっていた。
黒のパーカーに黒の短パン。
少年のような装いだが、声のトーンから女性だと判断できる。
「はぁ…そうですが、何か…」
すると彼女はいきなり赤木の両手を強く握り、ぱっと笑顔になる。
「やっぱり!目の前で見ると本当に大きいですね!赤木さんのブロック、圧巻でした!」
「!!!!」
赤木は突然握られた手に反応して思わず固まってしまう。
「木暮さんですね!?陵南戦の3P、感動しました!」
赤木の手を握ったまま木暮に顔を向ける。
(…? あれ……?)
彼女の顔を正面で見た木暮はわずかに首をかしげる。
「あ、あの……すみませんが…手っ、手を……」
いきなり握られた手が恥ずかしいのか、赤木は吃ってしまう。
「あっ!失礼しました。つい…」
直ぐ様パッと手を離すと体育館へ一歩踏み入れて行った。
「………」
「どうした、木暮」
腑に落ちない、といった表情で来客に視線を向ける木暮に赤木が問う。
「いや、どこかで見た顔だなと思って…」
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