#2 出会い
「え?バスケ部を見学に、ですか?」
「そうなの。誰がくるのかしら…安西先生は教えてくれないし…」
遅れて用具を持ってきた晴子に彩子はふーっとため息をつけながら安西とのやり取りを報告する。
「あ!そうだ!山王に勝った湘北を見たいって人ですよぉ、きっと!!」
「そうねぇ…」
無名だった高校が最強山王を破ったのだ、そうかもしれない…
「ハッ…!きっとこの天才桜木を見物したい奴に違いない!!。…あぁ、本調子ならこの桜木のスーパープレイが拝めたものを…」
彩子と晴子の隣で片膝をついてドリブルの基礎をしていた桜木が何やら呟いている。
「はーーっ……」
流川はあからさまなため息をついてスタスタと桜木の前を通り過ぎる。
「ぬ…!ルカワ、てめえ!!」
桜木は立ち上がってため息の主を追いかけようとした矢先ーー
スパーーン!!
「集・中・せんかぁ~~!」
彩子のハリセンが桜木の後頭部に炸裂した。
「ア、アヤコさん…本調子ではない桜木になんて事を…」
桜木は頭を抱えて涙ながらに訴える。
「暴れる元気があるんだから大丈夫よ!!!」
彩子がハリセンを桜木に向けて怒鳴る横で晴子がクスクス笑っている。
(…どあほう)
流川はチラリと桜木を見たのち、再び深いため息をついた。
立てなくなるほどのケガなのにもう動けるようになるとは野生というのは恐ろしい。
野生の生き物は厳しい自然界を生きるためにケガの回復が早いと聞く。
そういえば、試合中左足を傷めて立てなくなる程だった赤木の治りが極めて快調だったのは、きっとこの野生の血が入っているからに違いない。
野生身溢れるあの顔、そして全ての者を一蹴するあの迫力。
……間違いない。
あれは野生の血だ……
勝手に納得して流川はシュート練習を始めた。
.