#18 ふたりぼっち vol.2
午後からは女子の決勝。
ようやく少し落ち着いた馨を女子の控え室まで送っていった。
泣き止みはしたものの、馨の顔には生気がない。
我ここにあらずだった。
控え室の扉の前に着くとタイミングを見計らったかのように彩子が中から出てきた。
「どこいってたの、あんたたち!…ちょっと馨、アンタどうしたの?顔が真っ青じゃない!具合でも悪いの?」
「……」
馨は答えられなかった。
馨への疑問は隣にいた流川へと向けられる。
「ねぇ、どういうことなの?何かあったの?」
「……いや、別に…」
流川なりに無表情で答えたが、彩子にはそれが通用しなかった。
むしろ、その無表情が不自然と思えるほどに。
「…何かあったのね?」
「……」
事情を聞かれたが、詳しくは言えなかった。
正直、自分の受けた衝撃も大きくて。
自分の口から、言えなかった。
うまく、話せなかった。
女子の試合、馨は試合に出たものの、絶不調だった。
ボールは簡単にスティールされ、シュートも入らない。
なんとか、自分を取り戻そうと必死だったが、ダメだった。
無理もない。
「あんなこと」の後では、無理もない。
そんな馨を試合に出したままにはできず、あっさりと交代させられた。
悔しさと、悲しさが入り混じった複雑な顔が目に焼きついた…。
エースプレイヤーの不調は大きく、女子バスケ部は大差で敗退した。
流川は馨の姿を観客席から見守っていた。
自分は今、こうして見守ることしかできない。
なんだか、歯がゆかった。
どうして、こうなった。
どうして、こんな思いをしなければならない。
俺たちは、何もしていないのに。
ただ、もっと上手くなりたくて、誰にも負けたくなくて、バスケをしていただけなのに。
ポツリと彼女の名前をつぶやく。
その途端に胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
やり場のない気持ちをどこにも向けられず、がぁん!と目の前の手すりを拳で叩きつける。
その音は、試合終了後の歓声にかき消され、叩きつけた本人の耳にしか届かなかった。
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ようやく少し落ち着いた馨を女子の控え室まで送っていった。
泣き止みはしたものの、馨の顔には生気がない。
我ここにあらずだった。
控え室の扉の前に着くとタイミングを見計らったかのように彩子が中から出てきた。
「どこいってたの、あんたたち!…ちょっと馨、アンタどうしたの?顔が真っ青じゃない!具合でも悪いの?」
「……」
馨は答えられなかった。
馨への疑問は隣にいた流川へと向けられる。
「ねぇ、どういうことなの?何かあったの?」
「……いや、別に…」
流川なりに無表情で答えたが、彩子にはそれが通用しなかった。
むしろ、その無表情が不自然と思えるほどに。
「…何かあったのね?」
「……」
事情を聞かれたが、詳しくは言えなかった。
正直、自分の受けた衝撃も大きくて。
自分の口から、言えなかった。
うまく、話せなかった。
女子の試合、馨は試合に出たものの、絶不調だった。
ボールは簡単にスティールされ、シュートも入らない。
なんとか、自分を取り戻そうと必死だったが、ダメだった。
無理もない。
「あんなこと」の後では、無理もない。
そんな馨を試合に出したままにはできず、あっさりと交代させられた。
悔しさと、悲しさが入り混じった複雑な顔が目に焼きついた…。
エースプレイヤーの不調は大きく、女子バスケ部は大差で敗退した。
流川は馨の姿を観客席から見守っていた。
自分は今、こうして見守ることしかできない。
なんだか、歯がゆかった。
どうして、こうなった。
どうして、こんな思いをしなければならない。
俺たちは、何もしていないのに。
ただ、もっと上手くなりたくて、誰にも負けたくなくて、バスケをしていただけなのに。
ポツリと彼女の名前をつぶやく。
その途端に胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
やり場のない気持ちをどこにも向けられず、がぁん!と目の前の手すりを拳で叩きつける。
その音は、試合終了後の歓声にかき消され、叩きつけた本人の耳にしか届かなかった。
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