#18 ふたりぼっち vol.2

その次の瞬間だった。

馨は何かの糸がぷつりと切れたように大声で泣き出した。

馨がこんな風に泣いているのは今まで見たことがなかった。

流川の上着を両手でギュッと握り締め、泣いている。

自分の中の「叫び」をぶつけるような、

今まで溜め込んでいたものを吐き出すような…

そんな感じだった。



性別など特に気にしていなかった。

最初は性別の差などなかった。

しかし、年齢を重ねて、たやすく抜いてしまった身長、それに伴って表れたパワーの差。

それでも一緒にバスケをしていて面白かった。

身長差も、パワーの差も、すべて当たり前の事だと素直に受け入れていた。

だから、性別の違いなど気にしていなかった。

性別でチームは違うけれど、それも当たり前だと思っていた。

当然の事だと、なんの意識もなく受け止めていた。

確かに、一緒に試合に出られたら、これほど楽しいものはないだろう、これほど嬉しいことはないだろう、と思ったことはあった。

もし、同じチームでプレイしたら、きっといいコンビになると思っていた。

それが出来ないのも、無意識のうち「そんなもんだ」と受け入れていた。

しかし、あんな風に性別が違うからといって、マイナスに考えたことなど一度もない。

一緒に試合に出られなくて残念などと思ったこともない。

ましてや、馨が男だったら、なんて想像したこともない。

女だから勿体ないだなんて、考えたことすらない。

だから、あんな風に考えていたヤツがいたと思うだけで心の奥底が嫌な感情でいっぱいになる。

思い出すだけで胸の奥から何かがふつふつと湧き上がる。



馨はどう思っただろう。

自分の全てをを否定されたのと同じだ。

コイツはコイツなりに自分との差を埋めようと必死だった。

身長差に負けないように、パワーの差に負けないように。

自分と「互角」でいようと…

自分はそれに答えるために、全力でぶつかった。

性別など関係ない。

そう思っていたのに。



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