#17 ふたりぼっち vol.1

いよいよ男子決勝。

馨達女子バスケ部は客席の最前列で試合を観戦した。


「やれやれ…間に合ってよかった」

「ここのエースは本当にのんびり屋ね。決勝戦なのに遅刻なんて」

「彩子先輩!し、知ってたんですか?」

「会場入り口であれだけギャーギャーやってれば嫌でも気づくわよ。」

(…恥ずかしい…楓のせいだ…)


馨は思わず頭を抱えた。



会場内は大きな熱気に包まれる。

試合開始直後、流川は二人の選手からマークを受ける。

ダブルチームだ。

前評判のあった流川のオフェンスを徹底的なマークで防ごうという作戦だった。

それでも流川はマークを振り切り、得点を重ねていく。

得点のたびに沸く歓声。

馨も得点が決まると両手を挙げて喜んだ。


しかし、徹底的なマークは疲労を呼び込んだ。

大量の汗と、次第に強くなる体の重みが流川を襲う。

体力が、もたなかった。

ゼイゼイと肩で息をしながらもプレイを続ける流川を、馨はただ黙って見ていた。


(……楓…)


黙って見守る馨の視線を感じ取り、流川は力を振り絞る。

しかし疲労から逃れられず、思うような動きができなかった。

エースを完全に抑えられ、富中男子バスケ部は敗退した。


(……負けた)


拳を握り締めてフラフラになりながら目下を通り過ぎる流川を見て、馨は不安げな顔でそれを見送った。

いつもと変わらず、無表情だったが、悔しそうな顔をしていた。



6/8ページ
スキ