#17 ふたりぼっち vol.1

決勝戦の日…

男子と女子の決勝が同日・同体育館で行われた。

午前中に男子、午後に女子の日程だ。

決勝だけあって、会場は熱気にあふれ、選手達には緊迫感が漂っていた。

そして、富中バスケ部の面々も緊張感でいっぱいだった。


「あぁ…どうしよう…」


控え室の前で腕を組み、行ったり来たりを繰り返して落ち着きのない水沢。

そこに馨が後ろからソロリと忍び寄る。


「よっ!!!」

「うわあぁぁぁぁ!!!!!!」


後ろから両手でドンと押すと面白いようにオーバーアクションを取る水沢に馨は楽しくてお腹を抱えてクククと笑う。


「なっ…馨先輩!今はそれどころじゃ…」

「緊張しすぎだって、水沢。いつも通りやってれば大丈夫だって」

「ち、違うんですよ…!」

「…は?」

「流川先輩、まだきてないんです…」

「な……!!!だってもうすぐアップの時間じゃ…」

「そ、そうなんですよ。今日は一緒に来なかったんですか?」

「だって、男子と女子は集合時間が違うから…」

「………」


お互いを見合って青ざめる


「…どうしましょう…馨先輩…」

「…あんのどあほうが…あれほど言ったのに…」


馨の目が眼光鋭くギラリと光る。



---



会場入り口で腕を組み人差し指をトントンと鳴らし、イライラしながら仁王立ちする。

外の穏やかな陽気がいっそうイライラを増幅させる。


「ったく、遅刻厳禁ってあれほど言ったのに…決勝戦で遅刻なんてありえない。絶対ありえない!」


今の馨は流川に飛び掛りそうな勢いだ。

そこへ事件の主がゆっくりと歩いてやってくる。

頭をガシガシとかき、あくびをしながら。


「あのヤロウ!!!」


姿を発見したと同時に入り口から飛び出すように走り出す。


「楓ぇぇえ!!」


その勢いそのまま、流川に飛び掛り、首元のシャツを思いっきり掴む。


「なぁにやってんのよ、アンタはぁ!」

「おぉ、馨」


馨とは正反対で流川はいたって平常心。


「『おぉ』じゃないでしょ!とっくに集合時間過ぎてるでしょうが!!のんびり歩いてる場合じゃない!」


流川の背中をグイグイ押しながら会場へと急がせる。


「ったく、なんでこんな時間に!」

「や、寝坊した。道にも迷った」

「じゃあもっと急ぎなさいよ!」

「んなことで体力消耗したくねー」

「だから早く起きろって言ってるの!ほらほら!さっさと歩く!緊張感なさすぎ!」


二人のやりとりを偶然見ていた彩子は苦笑いをしている。


「なーにやってんのよ、あのコ達…」




5/8ページ
スキ