#2 出会い


「ったくゴリのヤツ、さっさと隠居生活を送っていればいいものを…」


ドリブルの手を止めて桜木が扉を見ながら文句を言う。

それを聞いた三井と宮城がニヤニヤと笑みを作りながら桜木に近づいてくる。


「素直じゃねぇのな、お前も、…赤木も」

「ぬ?」

「バスケがしたくてウズウズしてるんだぜ、花道と一緒で」

「うっ……」

「………」


流川はそんなやり取りを少し離れたところで眺めていた。

桜木は図星だった。

復活したとはいえ、試合形式の練習への参加時間はほんのわずか。

もちろん激しいプレイはご法度。

他の時間は基礎練習とストレッチのみの彼はプレイに飢えていた。

流川もバスケがしたくてウズウズする気持ちは理解できる。

今朝のことといい、短時間でさえ待てないのだ…3日もやらなかったらどんなにイライラするだろうか。


(………)


三人の会話を聞きながら流川はシュート練習をしていた手をふと止めて、思わず考えてしまう。


「宮城くん、ちょっと…」


安西は小さくオイデオイデをして宮城を呼ぶ。


「…先生!なんでしょう」


宮城が安西の元に駆け寄る。


「あ、彩子くんも一緒に。…赤木くんと木暮くんにも聞いてもらおうかな」


「「「???」」」


三人は頭に「?」を浮かべながら安西の元へと集まる。


「実は今日お客さんがくるんです」


安西は眼鏡の位置を直しながら話を続ける。


「練習を是非とも見学したいという方から私に連絡がありましてね。…いかがですか?」

(え、それだけ…?)


要点しか言わない安西に全員が思った。


「先生がいいとおっしゃるなら俺たちは構いませんが…」

「そうですか、それはよかった。じゃあ決まりですね」


宮城の了承を得た安西はそのまま体育館を後にしようとする。


「…っと待って下さい!安西先生!」


一同呆気に取られた意識を遮断するかのように彩子が安西を止める。


「見学って…いったい誰がくるんですか?」


一番聞きたかった事だ。

…と言うか一番大事なところじゃないのか、それは。

安西はゆっくり振り返り、にっこりと微笑む。


「そうですねぇ……会えばわかりますよ」


意味ありげに眼鏡を光らせて、ほぉっほぉっほと笑いながら再び体育館を後にして行った。


「な………」

「なんで教えてくれないんだ…」

「一番重要なトコなのに…」


四人はやりきれない気持ちの中、安西の後ろ姿をただただ眺めていた。


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