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#16 前に進むその思い


いつの間に寝てしまっていたのだろう。

気がつけば外は既にうっすらと明るくなっていて、薄いカーテンからはわずかに太陽の光が入っている。

ベッドに横になったまま壁にかかる時計を確認するとまだ明け方の時間帯。


(まだこんな時間か…)


寝そべったまま大きく伸びをして、天井を見つめる。

…なんだか長い夢を見ていたような気がする。

そして、決意したばかりの事を思い出す。


『楓と一緒に、バスケがしたい』


そう決めたはずなのに、心の奥底の気持ちがまだ弱いままでいる。

だからこの前の練習試合に参加させてもらった時も体がこわばり思うように動けず、昨晩の彼からの挑戦も躊躇してしまった。


『俺はもう誰にも負けない。…お前にも』

『1on1だ、馨。…勝負しろ』


一緒にバスケをしたかった相手からの「挑戦」

受けて立つべきなのに、断ってしまったのは、自分の中にある弱い気持ちのせいだという事はわかっている。

わかっているのに断ってしまった。

やりたいことを見つけてここに戻ってきたはずのに。

この揺らぎは、何だ。


(……私、何してるんだろ…)


こんな自分は嫌だ…

自分に苛立ちながらベッドから起き上がり、薄手のパーカーに着替えて、そっと家の玄関を出る。

玄関脇に止めてあるマウンテンバイクに乗り、猛スピードで漕ぎ出し、南へと向かった。



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