#15 挑戦する者たち


「あなたもバスケットを?」

「はい…。小さい頃から…」


真っ直ぐ安西を見て答える馨に、安西は優しく微笑む。

小さい頃からバスケをしていたという事は、流川楓もまた小さい頃から彼女とバスケをしていたことになる…と安西は思った。


「…そうですか。」

「……」


馨はシャツの裾をきゅっと掴み、唇に力を入れた。

この人なら自分の気持ちを真正面から受けとめてくれるに違いない…。

初対面の安西だが、自分の「想い」を話してみようと心の中で思った。


「あの……安西監督…。お伺いしたいことがあるのですが…」

「……なんでしょう」

「あの……」


馨は安西に自分の「想い」を話し始めた。

先ほど自分の中ではっきりと見ることができた「想い」を。


「なるほど…」

「私は、どうしたらいいでしょうか」

「……」

「単なる思い付きにすぎない事はわかってます。でも…」

「ふむ…」


安西は真っ直ぐ前を見る瞳にかつての流川の目を思い出した。


『アメリカに行こうと思ってます』

『もっとうまくなりたい。ただそれだけす』


あの時の目と一緒だった。

力強い意思を感じる視線。

純粋だが、どこか未熟さが奥に残る目。


「……」


少しの沈黙の後、安西が口を開く。


「そうですね…。私の口から説明するより、自分でどういう道を進めばよりよく歩めるか、実際に自分自身で感じ取った方があなたのためになる」

「……」

「実際に流川くんと一緒にプレイするといい」

「えっ…と…それはどういう…」



意味ありげな言葉に戸惑う馨に安西は更に続ける。


「流川くんの近くで彼のプレイを見て、一緒にプレイしたらいい」

「………?」


安西はあくまで馨に答えを出させようとする。

そして馨は一つの答えを出す。


「……湘北でバスケをしろ、とおっしゃるんですね?」


安西はニコリと微笑む


「強制はしません。あなたがそうしたいなら協力しましょう」


安西監督は最初からこの答えを出させる為に自分に問いかけたのか…

そう感じた馨は安西監督のいる湘北に行きたい気持ちが高まる。

それは、流川楓がいる高校だ。

馨は丁寧に頭を下げる。


「…よろしくお願いします」


馨が湘北行きを決めた瞬間であった。


(…湘北に行けば、ずっと一緒にバスケができる…!その道が開けるはず!)



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