#15 挑戦する者たち


「今日は湘北とやれてよかったよ。自分に沢山のものを残してくれた。試合は負けたけど…今、不思議なくらいスッキリしてるよ」

「私も試合見に来てよかったです」

「君にそう言ってもらえると光栄だな」


穏やかな気持ちで二人、ベンチに腰掛ける。


「沢北さん!ここにいたんですね。監督がそろそろ戻ってこいって……あ」


ドスドスと音を立てながら近づいてきた美紀男が沢北の隣に座る馨に気が付く。


(うわ、流川くんそっくりだ…)


上目遣いになっているその顔は試合中に見た流川の顔だった。


(山王の15番だ…やっぱりでかい…)


馨もまた、間近で見る213cmの巨体に目が行ってしまう。


「あ、美紀男か。悪いな、今戻るよ」


沢北はゆっくりと立ち上がって美紀男の隣に並ぶ。


「君に会って直接お礼が言えて本当によかった。これで心おきなくアメリカに行けるよ」

「アメリカ…?」

「俺、インターハイが終わったらアメリカ留学に行くんだ」

「そうだったんですか…」


沢北は挑戦をやめなかった。

この人のバスケは「挑戦」が全てなのだろう。

常に「挑戦」し、飛躍していく…

この人の強さはここにあるのだろう…


「あなたはまたアメリカに行かないの?」

「え?」

「またアメリカでバスケすればいいのに」

「………」


黙って沢北を見つめる馨に沢北は一呼吸置いて言った。


「…アメリカで待ってるよ。『君たち』を」

「………?キミタチ?」



馨は意味がわからず首を傾げる。

どういう意味だろう?。


「……あっ!」


少し歩いたところで沢北が振り返る。


「名前、聞いてなかった。」 

「流川、馨…」

「そっか…。やっぱり君たちはそっくりだね」

「よく、言われます」

「いや、外見だけじゃなくて…中身がさ」

「…そうですか?」

「うん、そっくりだよ」


沢北はそう言って美紀男と並んで歩き出し、馨と別れた。

しばらく歩いたところで美紀男が遠慮がちに沢北に訪ねる。


「『流川』…って、あの人は流川くんの…」

「うん、双子だそうだよ」

「へぇ…凄いや。でもなんで沢北さんと?」

「…ちょっとした知り合いでね」

「えっ???」


ニッコリと沢北は笑うが美紀男は状況が掴めず頭に「?」が浮かぶ。


「沢北さん…あの、もう大丈夫ですか?」


明るく笑う沢北は先ほどの沢北とは大きく違っていた。 


「ああ、大丈夫だ。あの人のおかげだ。また、助けられたな。あの人に」


沢北がクスリと笑う。


(待ってるよ…一足先に。アメリカで)


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