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#15 挑戦する者たち


「私も、アメリカでの事が財産になるのかな…」


ポツリとつぶやく馨を見て沢北はフッと笑って答える。


「それは君次第じゃないかな。財産にできるかどうかは。このまま原石を原石のまま放置してしまうか、原石を磨き上げて財産に変えるか…それは自分次第だと思うな。」

「自分、次第…」

「無駄なものは何一つないと思うよ。」


無駄なものは何一つない。

辛い経験も、がむしゃらに過ごしてきた日々も。

そして、今日この試合を見て流した涙も無駄なものではない…

今日の試合を見て何かを感じたのだが、いまいち掴みきれないでいて心の中がモヤモヤする。

自分達より格段にレベルが上のチームに全力でぶつかった、選手の姿。

心が折れてもなお、挑み続けた姿…

困難に打ち勝ち、勝利した瞬間…

それを見て自分は涙を流した。

それは、無駄なものではないのだ。


(何か、何かわかりそうなんだけど…)


目を閉じると帰国直前にアメリカで父に言われた言葉が頭をよぎった。


『見たいんだろ?楓のプレイを』

『日本で楓のプレイをよく見るといい。全国で楓がどんなプレイをするか…馨にとって、きっとプラスになると思うよ』


(……)


あぁ、何か掴めそうなのに…何か…


「……」


眉間にしわを寄せ苦悩する馨をじっと見つめる沢北。

その姿はアメリカで苦悩し、想い悩んでいた自分そのものだった。

馨のシュートを見る前の、自分自身が見えない状態の時の自分と…

沢北は軽く微笑んで言った。


「流川を見て、何か思わなかった?流川のプレイを見て、何か感じなかった?」

「!!!」


ガツンを頭を殴られたような感覚に襲われた。

彼を見て、彼のプレイを見て、自分が最初に感じた事…

アメリカで荷物を整理している時…

昨日、会場前に着いた時…

そして試合の様子を聞いたとき…

試合開始前、会場内に足を踏み入れた時…


『 会いたい 』と。


そして、フロアで黒い髪を見つけた瞬間。


『 会いたかった 』と。


この目でプレイを見て思った事………

走る姿、シュートを打った時のしなやかな手首、リングを見つめるまっすぐな瞳…

ダンクに跳ぶ、力強い姿…


『 この人とずっと一緒にバスケがしたい 』


そうだ……

この人とずっと一緒にバスケがしたいと思ったんだ…

2年間離れていて、想像の中でしか一緒にプレイできなかった。

想像の中ではなく、「一緒」にバスケを……


「なにか、掴んだ?」


馨の目に少し輝きが戻ったのを見て、沢北は「やっぱり流川に似ているな」と感じた。


「……少しだけ」

「そっか…」





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