パパスネシリーズ
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「しゅっぱーつしんこー!」
プリンセス柄のヘルメットを被った娘が嬉しそうに声を上げる。スネイプはそれを確認すると、慣れない足付きで電動自転車のペダルを踏みしめた。
時刻は朝七時。
ママチャリだが今日はいつもの幼稚園への送迎ではない。
今日は1月1日、元旦。お正月。
年始早々、二人が向かうのは近所のショッピングモールだった。
***
年が明けても、世間のシールブームは勢いを増すばかりで、スネイプの愛娘サラのシール熱も冷める気配を見せなかった。
ポムポムドロップシールは未だ入手困難で、スネイプは空いた時間のすべてを捜索に費やしてきたが、成果はほとんどなかった。(もちろん転売ヤーから高値で買うなど論外である)
そんな折、近くのショッピングモールの雑貨屋が元旦のお年玉企画として、ポムポムドロップシールを大量入荷するらしいという情報を妻が持ち帰ってきた。
かなりの量が用意されるらしく、早めに並べば一つや二つは手に入りそうだという。
正月は家で静かに過ごすつもりだったが、スネイプの予定は即座に変更された。
さて、無事に早起きできたのは良いが、想定外だったのは娘まで着いてきたことだ。
ポムポムドロップシールを買いに行くと聞きつけた娘は、朝五時きっかりに寝室へ現れ、容赦なくスネイプを叩き起こした。
「パパ!!もうあさ!おきて!!」
そこそこの入荷があるとはいえ、どんな争奪戦になるか分からない以上、小さな娘がいては足手まといになるのは明らかだ。
「必ず買ってくるから、ママと留守番していなさい」と何度説得しても、サラは首を横に振った。
「そういってパパがぜんぶひとりじめするつもりでしょ!」
……そんなわけがあるか。
私が集めて楽しいのは、貴重な薬草の類だけだ。
しかし、シールの話になると娘は驚くほど頑固だった。
言い合いをしているうちに時間は刻々と過ぎ、これ以上時間を無駄にしては間に合わなくなると、スネイプはついに折れた。
足手まといになるのは間違いないが、以前のようにならないためにも、段々と娘本人に欲しいシールを選んでもらったほうが良いようにも思えてきたのだった。
それに久しぶりにホグワーツから自宅へと戻ると、随分と疲れた顔をした妻の顔があった。
単身赴任に近い生活ゆえ、妻には日頃からワンオペばかりで負担をかけてしまっている。
正月くらいはゆっくりと一人の時間を持たせてやりたい。
そう思い、娘も連れ出すことにした。
自宅から15分ほどの距離にあるショッピングモールに到着すると、スネイプは娘の手を取り、足早に店内入口へと向かった。
しかし、目に飛び込んできた光景に足が止まる。
——人が多すぎる。
元旦の朝七時だというのに、正面入口にはすでに長蛇の列ができていた。子連れの家族が大半で、その光景は今日の戦いの熾烈さを雄弁に物語っている
スネイプは膝を折り、目を輝かせる娘に問う。
「まだお店が開くまで1時間半くらいあるが、並べるか?」
「うん、ならべるよ!」
「トイレは?」
「だいじょーぶ!」
スネイプは娘の言葉を信じ、列の最後尾へと並んだ。
後ろも前も女の子連れの家族である。皆ついに渇望していたシールが手に入るかもしれないとだけあって朝からテンションが高い。
サラもそんな雰囲気に飲まれ、最初はスネイプと手を繋いだままピョンピョン跳ねたり、あのシールがあればいいだのなんだと話していたが、20分もすると足が疲れたのか次第に口数が減っていった。
「どうした?」
「あしつかれた……」
「パパが抱っこするか?」
「うん……」
「ちょっとだけだぞ」
娘を抱き上げると、小さな腕が首に回された。
抱っこされるとリラックスしたのか、サラは顔を肩にもたれかけさせる。そのままウトウトと眠そうな仕草を見せ始めたので、スネイプは慌てて話しかけた。今寝られては困る。
「サラ、あともう少しだからな」
「うん……」
「ママにもお土産買っていくんだろう?何がいい?」
「うん……」
「ドーナッツにするか?それとも別の物がいいか?新しいケーキ屋さんが出来たと言っていたな……サラ?おい、サラ!」
「……」
スネイプは必死に話しかけたが、それも虚しく娘はぐっすりと眠り込んでしまった。それもそうだ。今朝は五時に起きてきたのだから。眠いはずである。
以前は軽々と抱っこできた娘も今は15キロを超えている。
日頃から重い大鍋を扱うスネイプだ。筋力にはそこそこの自信あったが、15キロを抱っこし続けるのはなかなかの苦行だった。
しかし下ろすわけにもいかず、スネイプは腕にじわじわと溜まっていく疲労をやり過ごしながら、ただひたすら時計を睨みつけていた。
***
そのままサラはぐっすりと眠り続けたまま、開店時間を迎えた。
「明けましておめでとうございます!」
元気な店員の掛け声とともに、正面の自動ドアが開く。
走らないでくれという店員の声も虚しく、周りの客たちは一斉に急ぎ足でポムポムドロップシールが入荷される雑貨屋へと急いだ。
すでに腕の限界を迎えているスネイプも、最後の力を振り絞り、売り場へと急いだ。
雑貨屋の前に到着すると、整列用のレーンはすでに何重にも折り重なっていた。
……果たしてこれは買えるのだろうか。
遠目に見える棚には確かに大量のシールが並んでいたが、購入制限があるとはいえこの人数だ。自分たちの番が来る頃には売り切れてしまうのではないか。嫌な予感しかしない。
不安を抱えながらもスネイプは列に並んだ。
「サラ起きるんだ。そろそろだぞ」
スネイプが娘の背中を優しく叩いて起こすと、娘は眠そうに目をこすった。
「パパぁ……シールあった?」
「ああ。近くまで行かないと何があるかは分からないが沢山あるようだ」
「やったあ!!!はやくかいたい!」
「そうだな。順番が来るまでもう少しお利口に待っててくれ」
「うん!」
親子二人、ドキドキしながら自分たちの番がやってくるのを待つ。じわじわと進む列の先からは、お会計を済ませた人達の嬉しそうな声が聞こえてきた。
15分くらいして、スネイプ親子はようやく売り場まであと少しというところまで来た。
しかし横から覗くと危惧していた通り、シールは残りわずかだった。
みんな早朝から気合を入れて並んでいるだけあり、ありったけ買っていく人が多かったようだ。
スネイプは奥歯を強く噛み締めた。
せっかく今日は娘に選ばせてやれると思っていたのに、残っているのはどう見ても人気のない余り物である。
娘はあまり気にしていないようだが、開店当初の品揃えを目にしてしまっているスネイプからすれば悔しくて仕方がなかった。
やはり娘は置いてきて、もっと早く並ぶべきだっただろうか。
「パパ、もうすぐだね。あまつぶちゃんあるかな?」
「ああ……一緒に探そう」
あまつぶちゃんは人気商品だ。
おそらくもう売り切れてしまっただろう。
ああ、また娘を泣かせる羽目になってしまうのか――。
しかし、スネイプが苦々しげに空所の目立つシール棚の前に立ったとき、奇跡が起きた。
「すみませ〜ん。ちょっと在庫補助しますね〜。少々お待ちくださいーい!」
どこからともなく現れた店員が、段ボール箱を片手に大量のポムポムドロップシールを次々に棚に並べ始めたのだ。
後ろの列からは歓声が上がった。
「うわあ〜!!!パパすごいよ!!いっぱいでてきた!!」
「ああ……!凄いな……」
飛び跳ねて喜ぶ娘の横で、スネイプも感動のあまり口元を手で覆った。
良かった――。
神は自分たち親子を見放さなかったのだ。
見渡す限りのポムポムドロップシール。
ネットでしか見たことのなかったあのシール達が確かに目の前に存在していた。
「パパ!あまつぶちゃんのもあるよ!プリンセスのもある!」
「全部買っていいぞ。全部一個ずつカゴに入れなさい」
長らく探し求めていたものがついに目の前に現れ、スネイプの脳内では異常なほどのアドレナリンが放出されていた。彼は娘よりも早く、ポムポムドロップシールを次々とカゴへ放り込んでいく。
結局売り場にあったほとんどの種類のポムドロを二人は購入した。
レジで会計を済ませた瞬間、その合計金額に一瞬目を疑った。(何しろポムポムドロップシールは一つ500円もする)
だが、この思わぬ大収穫を前にしては、財布への打撃など取るに足らない問題だった。なに、お年玉だと思えばいい。
それにろくにまともな休日も取れない魔法薬学教授の給料をナメないで欲しい。人並み以上の年収はある。
愛娘がこれで劣等感を覚えることなく、友達とシール交換を楽しめるのならば大した出費ではない。
ファンシーな袋にどっさりと入ったポムポムドロップシールを片手に店を出ると、スネイプとサラはハイタッチをした。
「パパきょうはほんとにかえてよかったね!パパのおかげだよ。パパありがとう」
「サラも頑張って早起きしたからだ。良かったな」
「うん。ねえ、パパがんばったから、おなかすかない?」
「そういえばそうだな」
二人で早起きして朝食を食べてから、もう結構な時間が経っていた。昼食は家で食べるつもりだったが、時刻はまだ10時にもなっていない。家に帰るには早すぎるだろう。
これでは妻の休息にならない。
「今日はパパと何か食べて帰るか」
「やったー!!わたしいきたいとこあるの!」
「どこだ?」
「こっちだよ!いつもママともいくところ!」
そういってサラが案内したのは、某チェーン店のうどん屋だった。スネイプも妻と何度か来たことがある。サラが幼児食を食べられるようになってから、よく来る店だった。
「わたし、ここのおこさまセットがいい!」
「食べ切れるか?結構量があるように見えるが」
「たべられるよ!ね?パパもうどんがいいでしょ?」
「ああ、じゃあパパもうどんにしよう」
本当はうどん以外のものが食べたかったが、ワンオペの時にフードコートで別々の物を食べるのはなかなか厳しい。
スネイプは娘と一緒に、焼きたて肉うどん(並)を注文した。
「エプロンは付けるか?」
「もうそんなのつけてないよ!あかちゃんじゃないんだから!」
サラは恥ずかしそうにそう言うと、上手にフォークを使ってうどんを美味しそうに食べ始めた。もちもちほっぺのお口にちゅるちゅると麺が吸い込まれていく様子は、いつ見ても信じられない程の可愛さだ。ずっと見ていられる。
思わずスマホを取り出し、食べる様子の動画を撮っていると、サラは「パパ!」と怒った。
「おしょくじちゅうはスマホだめ!」
「ああ、そうだったな。あまりにサラが可愛いからつい撮りたくなってしまった」
「もう!はやくパパも食べて!」
「わかったわかった。サラ、パパのお肉もあげよう」
スネイプは子ども用のうどんには入っていない牛肉の甘辛煮を娘のお皿へそっと分けてやった。
「ありがとパパ!わたしこのおにくだいすきなの!」
嬉しそうに頬張る娘を見て、スネイプも思わず口元を緩めた。
先ほどまでは慌ただしく、大変な時間だった。
だが、こうして向かい合って昼食を取れるのなら、やはり連れてきて正解だったのだろう。
かつては一口ごとに世話を焼かなければ食事もままならなかった娘が、今では当たり前のように一人でうどんを食べている。
「子どもの成長は早い」と子育て経験者は皆そう言うが本当に、その通りだ。
自分がホグワーツで時間を過ごし、妻子と離れている間も、娘は一日一日確実に成長している。
だからこそ、こうした何気ない瞬間をできる限り見逃したくない。
休みの日には、これからもできるだけ一緒に過ごそう。
「パパないてる?どうしたの?」
「……いや、泣いてない。うどんが熱かっただけだ」
***
うどんのトレーを返却したとき、サラがスネイプの服の裾をくいっと引いた。
「……どうした」
「パパ、あっちもみたい」
サラが指差した先には、フードコートのすぐ脇にあるゲームセンターがあった。
色とりどりの光と電子音が、否応なく視界に飛び込んでくる。
「今日は随分とシールを買っただろう。パパの財布にも限界というものが――」
「みるだけだから!ほんとに!おねがい!」
サラがクレーンゲームや子ども向けの乗り物を前にして、「見るだけ」で済むはずがないことは明らかだった。
それでもスネイプはサラの「おねがい!」には、抗えなかった。
気がつけば、ぐいぐいと引っ張られるままにゲームセンターの中へと誘導される。
クレーンゲーム、硬貨を入れると動き出す車、くるくる回る小さなメリーゴーランド。
スネイプの小銭はみるみるうちに吸い込まれていった。
だが、はしゃぎながら遊ぶ娘の笑顔を前にすると、この時間はやはりプライスレスだと思ってしまう。
何度でも言うが、今日は正月なのだ。少しくらいのわがままは、大目に見てやってもいいだろう。
「サラ。パパのコインはもう残り少ない。これ以上は破産してしまう。次で最後にしなさい」
「はぁーい!じゃあパパ、さいごにあれやろ!」
元気よく返事をすると、娘は一目散に走り出した。
その先にあったのは、大きな箱のようなゲーム機だった。
外装には派手な化粧を施した女性たちが、モデルのようにポーズを決めた写真がいくつも貼られている。
スネイプは立ち止まり、眉をひそめた。
「……プリクラ?」
「うん。わたし、パパとプリクラとりたいの」
「……なんだこれは」
「パパしらないの?かわいいしゃしんとるんだよ」
説明になっているようで、まったくなっていない説明を受け、スネイプは機械をまじまじと見つめた。
「……こういうものはママがいる時に撮るものだろう」
「やーだ!パパとがいいの!」
「しかし……」
「だって、パパいつもいないでしょ!」
胸の奥を、ぐさりと刺す一言だった。
ちらりと料金表示に目をやると、一回500円とある。
ポムポムドロップシールと同額である。
――高い。実に高い。
たかがゲームに支払う金額としては、明らかに法外だ。
だが、娘はすでに撮る気満々だった。
「はやく」と言わんばかりに、短い手をスネイプへ伸ばしてくる。
普通のゲームなら、大奮発ということで折れてもよかった。
しかし、このきらきらした箱の中で、ギャルのような写真を撮るなど流石のスネイプにも抵抗がある。
もともと写真を撮られるのが得意ではない。
ましてや「かわいい」を前提とした写真など、考えただけで居心地が悪い。どう見ても女性向けのゲームだ。
「……悪いが、サラ。これはまた今度にしよう」
「……」
「ほら、きっとママも一緒に撮りたいだろう。それにパパは、その……少し、恥ずかしい」
スネイプが必死に説得しようとすると娘は黙り込んだ。
「……きょうはさ」
「……?」
「きょうは、サラとパパのはじめてのおでかけでしょ?」 「……」
「だから、きねんにおしゃしんとりたいの。だめ?」
完敗だった。
ついこの間までは、親にしか理解できないような覚束ない言葉で話していたはずなのに。
いつの間にこんなにも的確で、逃げ道のない言葉を使うようになったのか。
スネイプは小さく息を吐くと、財布から100円玉を5枚取り出した。
プリクラ機の中に入った途端、頭がくらくらするほどの音量でBGMが鳴り響き、けたたましいインストラクションが始まる。
当然ながら、文字をまだあまり読めない娘は内容など理解できないため、スネイプは顔を引きつらせながら黙々と画面を操作していった。
「サラ、どっちのコースが良い?プリティーかセクシーか選べ」
「ぷりてぃー!」
「だろうな。リボンの背景とハートの背景は?」
「ハート!」
「ハートだな……よし、こっちがカメラだ。ここを見てるんだぞ……いやサラはパパが抱っこしないと映らないな」
カウントダウンが始まる直前、慌てて娘を抱き上げ、どうにか画面に収める。
確認画面に映し出されたのは、妙に引きつった笑顔の二人だった。
「パパ、もっとわらって!」
「……ああ。待て、もう次を撮るのか!?」
考える間もなく、撮影は次々と進んでいく。
「こんなポーズを」「上からのアングル」「今度は引きで」
矢継ぎ早に指示が飛び、娘にも真似をさせようとすると、時間がまったく足りない。
気がつけば、終始バタバタしたまま撮影は終了していた。
「撮影が終わったよ☆右のらくがきブースに移動してね♫」
「まだあるのか……」
半ば呆然としながら移動すると、先ほど撮影した写真が画面いっぱいに表示された。
その瞬間、スネイプはスリザリン寮の生徒全員がO.W.LでTを取ってきたときのような顔になった。
「ふふふ!パパ、おめめおっきーい!」
てっきり普通に写真を撮ってくれていると思っていたが、表示されたのは、加工が容赦なく施された、あまりにも現実離れした画像だった。目は宇宙人のように大きくなり、唇は何も塗っていないのに赤い。まるで女装でもしているかのようだ。
娘も幼児としての素朴な可愛らしさを奪われ、なぜかまつ毛はバサバサになり髪は茶色かった。
さらにこの上に自分で好き勝手に加工を加えられるらしい。
訳が分からず、スネイプのこめかみがじくじくと痛み始めた。
だが、サラはまったく気にしていない。
キラキラして「可愛い」写真が撮れたことが、ただただ嬉しいようだった。
「パパ、はやくおえかきして!」
「ああ……何て書けばいい」
「うーんとね。パパだいすきってここに書いて」
「あとは?」
「ここにこのくまちゃんのスタンプして……ユニコーンも!」
慣れないタッチペンで娘の指示通り落書きを終えると、機体の横から印刷されたシールが出てきた。
小さな手で娘はそれを取り出すと、宝物のように握りしめた。
たった10分程度のゲームなのになんだかすごく疲れた……。
「かわいくとれたね!パパ!ありがとう!」
「ああ、そうだな。帰ったらママに見せてやれ。さあ、そろそろ帰るとするぞ」
「あ!パパ!ママのおみやげわすれてるよ!」
「ああ、ドーナッツを買って行くんだったな……」
その後スネイプとサラは遊び場におもちゃ屋さんにとたっぷりと寄り道をしたあと、ようやくショッピングモールを後にしたのだった。
***
帰宅すると、娘は興奮冷めやらぬ様子で、妻に戦利品を披露しはじめた。大量のポムポムドロップシールの山。
「みて!すごいいっぱいあったんだよ!」
「あら、本当に凄いわね〜行ってよかったわね。サラちゃん」
「うん!それにね、パパとプリクラもしたの!」
「パパと!?」
セブルスがそんなものに付き合うわけがない、と妻は疑ったがサラが差し出した、宇宙人のように加工されたスネイプの顔を目にした瞬間、妻は腹を抱えて大笑いした。
「ちょっとセブルス何これ……!!」
息もできないほど笑われ、スネイプは耐えきれず、恥ずかしさのあまりプリクラを奪い取るように回収した。
だがその夜。
娘も妻も寝静まったあと、スネイプはふとそのプリクラを取り出した。
そこに写っているのは、あどけない笑顔の娘と、きらきらしたピンク色のペンで書かれた自分の筆跡。
「パパだいすき」
それを見た瞬間、胸の奥がきゅっと締め付けられた。
こんなふうに屈託なく「パパ好き」などと言ってくれるのは、何歳までだろうか。
ホグワーツの生意気な子供達を見ていれば、子供の素直な時期など一瞬で過ぎ去るのだと実感させられる。
スネイプは一枚だけプリクラを切り取ると、誰にも見られないよう仕事用のペンケースの裏に忍ばせた。
これで、いつでもサラの笑顔に会える。
後日、ホグワーツに戻ったスネイプが、そのプリクラをうっかり落としてしまい、大騒ぎになるのだがそれはまた別の話。
おしまい
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