2.賭け次第
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
──────
交渉がおわった直後、私は勢いよく店を飛び出した。
「待て!」
声を張り上げながら、私はクワイ=ガンの背中を追った。タトゥイーンの熱い日差しの下は、少し走っただけで汗を滲ませる。
しかし、男は涼しい顔で私に振り向いた。
立ち止まり、息を整える間も惜しんで問いかける。
「どうしてワトーにあんな無茶な条件を?それに、私の父に共和国クレジットまで渡すつもりだなんて。お前達の目的は何だ?」
砂埃の舞う通りで、クワイ=ガンは眉ひとつ動かさず、しばらく私を見つめた。
「君は警戒心が強いな。
──昨夜アナキンの家に泊めてもらった時に聞いたよ。君がアナキンの言っていた『大切な幼馴染』か」
「……アナキンに他に幼馴染がいなければ、多分そうだな」
私は静かに答えた。私は問いかけに答えてもらえなかったことに顔をしかめたが、クワイ=ガンは明らかにこちらの棘のある空気を気にも留めなかった。
「なら、信じてほしい。レースに勝った暁には、私はアナキンも助けるつもりだ」
「何?」
「それが一つの狙いでもあった。そして……もうひとつ。ワトーの店で君と会って、君についてもゆっくり話したかった。レースの後でもいいかとは思っていたんだが」
彼は少し歩を進め、私との距離を縮める。それから、静かに私を見下ろした。
「私がワトーと交渉しているとき、君はしきりに私の言葉に嘘がないか確認していた。私の心を読もうとしていたな」
どきりと心臓が高鳴った。今までバレたことがなかったのに、何故?この男は何者なのか、もしかしてこの力について知っているのか、たくさんの問いが自分の中で溢れた。
「フォースユーザーは他人の心を読むことができる。いつから使える?誰が君を訓練した?」
「フォース……?」
私は怪訝に聞き返す。昔から、なんとなく使える力があった。心を読むとか、ものを浮かせたり、押しつぶしたり、引き寄せたり。誰に教わったわけでもなかった。
──その力に、名前があったなんて。
クワイ=ガンは私をまっすぐ見ていた。しかし私の動揺を見て、やがて掌を掲げる。
それから、小石をふわりと浮かせて見せた。
「あ……!」
おもわず口をあんぐり開ける。まさに自分と同じ力だったから。
「アナキンは少し未来が見えるようだが、君も心が読める、フォースを使っていろんなことができる……そうなんだろう?ナマエ、これらは全部同じ力だ。しかも、特別な」
言葉に詰まって、しばらく黙る。やっと出たのはひとことだけだった。
「……そう、なのか……」
思わずきゅっと拳を握ってうつむく。彼が石をすっと地面に戻し、優しく尋ねた。
「いつから?」
「……数年前。父と……フェンロと喧嘩して、かっとなって言い返したときに、窓が割れたんだ。フェンロは盗賊のしわざだとかんちがいして……だから、なにも私に問い詰めなかったけど……。でも、それからときどき」
私は誰にも話したことがなかったことを、知り合ったばかりの大人に、自分でも不思議なくらいにすらすらと話していた。
「どうやって制御を覚えた?」
「かっとなると、勝手に攻撃的に作用する。落ち着いてると……結構うまく使える。それがわかってから徐々に。いつもうまく使えるわけじゃないけど……」
初めは大変だった。カンティーナで酔った客に理不尽にいちゃもんをつけられて、おもわず衝動的に反論したとき、無意識に棚の皿を破裂させたり。突飛すぎて、誰もそれが私によるものだとは気づかなかったわけだが。
──でも、もしフェンロやアナキンと言い合いになって、彼らの近くでものを破裂させたら?
彼らを決して傷つけるわけにはいかない。
それから、なるべく自分の心を冷静に保つことを覚えた私は、知らぬ間に自然とその力を制御できるようになっていた。完全には至らなかったが。
クワイ=ガンは私の説明に頷いた。
「さっきも言った通り、力の正体はフォースと呼ばれる。ジェダイがあやつる力だ。君にも素質がある。アナキンのように……強い素質が」
私は俯いたまま、戸惑いを隠せなかった。
「……どうすればなくせる?」
「なくすのではない。向き合い、制御するものだ。君がそうしてきたように」
彼は一歩、私の目線に合わせるように腰を落とした。
「アナキンが勝ち、私たちが無事に発てたら
──コルサントへ来ないか。ジェダイ寺院で、君は力の意味を学べる。アナキンも一緒だ。彼が望めば」
しばらく、答えることができなかった。
タトゥイーンを出る?ここで育ったのに?ここにはシミも、フェンロもいる。つまらないし、貧しいけど、なんとか生きていける土壌にはある。
自由へのわずかな憧れが、なかったわけではない。
それでも、いざそれを選択肢として突きつけられると、憧れだけではなく、強い恐れと戸惑いも感じた。
「行けない。……父がいるし」
私の返答に、彼は思慮深く頷いた。
「わかった、ナマエ。君の年齢にしては、これは難しい決断になるだろう。だから今すぐ決める必要はない。自分の心に正直になってよく考えるといい」
彼はわたしのために屈んでいた背をすっと戻す。
「アナキンがポッドレースで勝ったあとに、答えをもう一度聞こう」
その声は、熱いタトゥイーンの風の中で、不思議と涼しい泉のように澄んでいた。わたしが静かにうなずくと、頭に男の手が乗せられる。警戒に体を緊張させると、クワイガンは優しく手を引いた。私は握りしめた拳をそっと開き、どきどきと決壊しそうな胸の鼓動を深呼吸でなだめた。
──こうして賭けは成立した。 賭けられたジェダイの船、アナキンのポッド。そして、レース。それらすべてを包む運命の歯車は、タトゥイーンのふたつの太陽の下で静かに噛み合い始めていた。
交渉がおわった直後、私は勢いよく店を飛び出した。
「待て!」
声を張り上げながら、私はクワイ=ガンの背中を追った。タトゥイーンの熱い日差しの下は、少し走っただけで汗を滲ませる。
しかし、男は涼しい顔で私に振り向いた。
立ち止まり、息を整える間も惜しんで問いかける。
「どうしてワトーにあんな無茶な条件を?それに、私の父に共和国クレジットまで渡すつもりだなんて。お前達の目的は何だ?」
砂埃の舞う通りで、クワイ=ガンは眉ひとつ動かさず、しばらく私を見つめた。
「君は警戒心が強いな。
──昨夜アナキンの家に泊めてもらった時に聞いたよ。君がアナキンの言っていた『大切な幼馴染』か」
「……アナキンに他に幼馴染がいなければ、多分そうだな」
私は静かに答えた。私は問いかけに答えてもらえなかったことに顔をしかめたが、クワイ=ガンは明らかにこちらの棘のある空気を気にも留めなかった。
「なら、信じてほしい。レースに勝った暁には、私はアナキンも助けるつもりだ」
「何?」
「それが一つの狙いでもあった。そして……もうひとつ。ワトーの店で君と会って、君についてもゆっくり話したかった。レースの後でもいいかとは思っていたんだが」
彼は少し歩を進め、私との距離を縮める。それから、静かに私を見下ろした。
「私がワトーと交渉しているとき、君はしきりに私の言葉に嘘がないか確認していた。私の心を読もうとしていたな」
どきりと心臓が高鳴った。今までバレたことがなかったのに、何故?この男は何者なのか、もしかしてこの力について知っているのか、たくさんの問いが自分の中で溢れた。
「フォースユーザーは他人の心を読むことができる。いつから使える?誰が君を訓練した?」
「フォース……?」
私は怪訝に聞き返す。昔から、なんとなく使える力があった。心を読むとか、ものを浮かせたり、押しつぶしたり、引き寄せたり。誰に教わったわけでもなかった。
──その力に、名前があったなんて。
クワイ=ガンは私をまっすぐ見ていた。しかし私の動揺を見て、やがて掌を掲げる。
それから、小石をふわりと浮かせて見せた。
「あ……!」
おもわず口をあんぐり開ける。まさに自分と同じ力だったから。
「アナキンは少し未来が見えるようだが、君も心が読める、フォースを使っていろんなことができる……そうなんだろう?ナマエ、これらは全部同じ力だ。しかも、特別な」
言葉に詰まって、しばらく黙る。やっと出たのはひとことだけだった。
「……そう、なのか……」
思わずきゅっと拳を握ってうつむく。彼が石をすっと地面に戻し、優しく尋ねた。
「いつから?」
「……数年前。父と……フェンロと喧嘩して、かっとなって言い返したときに、窓が割れたんだ。フェンロは盗賊のしわざだとかんちがいして……だから、なにも私に問い詰めなかったけど……。でも、それからときどき」
私は誰にも話したことがなかったことを、知り合ったばかりの大人に、自分でも不思議なくらいにすらすらと話していた。
「どうやって制御を覚えた?」
「かっとなると、勝手に攻撃的に作用する。落ち着いてると……結構うまく使える。それがわかってから徐々に。いつもうまく使えるわけじゃないけど……」
初めは大変だった。カンティーナで酔った客に理不尽にいちゃもんをつけられて、おもわず衝動的に反論したとき、無意識に棚の皿を破裂させたり。突飛すぎて、誰もそれが私によるものだとは気づかなかったわけだが。
──でも、もしフェンロやアナキンと言い合いになって、彼らの近くでものを破裂させたら?
彼らを決して傷つけるわけにはいかない。
それから、なるべく自分の心を冷静に保つことを覚えた私は、知らぬ間に自然とその力を制御できるようになっていた。完全には至らなかったが。
クワイ=ガンは私の説明に頷いた。
「さっきも言った通り、力の正体はフォースと呼ばれる。ジェダイがあやつる力だ。君にも素質がある。アナキンのように……強い素質が」
私は俯いたまま、戸惑いを隠せなかった。
「……どうすればなくせる?」
「なくすのではない。向き合い、制御するものだ。君がそうしてきたように」
彼は一歩、私の目線に合わせるように腰を落とした。
「アナキンが勝ち、私たちが無事に発てたら
──コルサントへ来ないか。ジェダイ寺院で、君は力の意味を学べる。アナキンも一緒だ。彼が望めば」
しばらく、答えることができなかった。
タトゥイーンを出る?ここで育ったのに?ここにはシミも、フェンロもいる。つまらないし、貧しいけど、なんとか生きていける土壌にはある。
自由へのわずかな憧れが、なかったわけではない。
それでも、いざそれを選択肢として突きつけられると、憧れだけではなく、強い恐れと戸惑いも感じた。
「行けない。……父がいるし」
私の返答に、彼は思慮深く頷いた。
「わかった、ナマエ。君の年齢にしては、これは難しい決断になるだろう。だから今すぐ決める必要はない。自分の心に正直になってよく考えるといい」
彼はわたしのために屈んでいた背をすっと戻す。
「アナキンがポッドレースで勝ったあとに、答えをもう一度聞こう」
その声は、熱いタトゥイーンの風の中で、不思議と涼しい泉のように澄んでいた。わたしが静かにうなずくと、頭に男の手が乗せられる。警戒に体を緊張させると、クワイガンは優しく手を引いた。私は握りしめた拳をそっと開き、どきどきと決壊しそうな胸の鼓動を深呼吸でなだめた。
──こうして賭けは成立した。 賭けられたジェダイの船、アナキンのポッド。そして、レース。それらすべてを包む運命の歯車は、タトゥイーンのふたつの太陽の下で静かに噛み合い始めていた。
2/2ページ