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ナマエはアナキンに借りたドロイド修理用のツールキットを返すために彼の宿舎に立ち寄っていた。彼の自室のソファで少しくつろいだ後、世間話を終えて早々に出ようと彼女が立ち上がった時、ふとアナキンが言った。
「少しだけ、聞いてほしい話がある」
アナキンは神妙な口調にナマエは片眉を上げた。
ナマエも背筋を正して神妙に言った。
「金は貸さない」
「……借りたことないだろ」
アナキンは、ナマエが早とちりする様子にくすっと笑った。
ナマエは時々そんなふうにすぐ結論に飛びつく時がある。そういうところが可愛いと思いつつ、平静を装った。
「お金を貸してくれなんて頼んだことないだろ?どうしてそれだと?」
「以前スピーダーの修理部品を調達しに店に行った時、超高いカスタムエンジンパーツをじろじろ見てたから。それを買う決心がついたんだと思った。」
「な、そ、そんな事覚えてたのか」
アナキンは少し胸が高鳴った。いつもつかみどころのないナマエが彼の小さな行動を覚えていたことに、口元に浮かびかけた笑みを抑えようとした。が、うまくいかなかった。嬉しいものは嬉しい。
「それは…。その、ただ…いいなって思っただけで。僕が話したい内容と関係ない」
「なら、何」
ナマエは肩をすくめてアナキンに向き直った。アナキンは言葉に詰まった。
「それは…それが僕たちの関係を壊すかもしれない。けど、それでもいい?」
「なんだなんだ」
ナマエはアナキンのただならぬ導入に身構えた。
「好きな人がいるんだ」
沈黙。
彼はじっと彼女を見つめ、ほのめかすような視線を送った。自分の気持ちに、彼女が気づいてくれることを願いながら。
ナマエはというと、少し黙って困惑したように眉をひそめたが、理解しようともしていた。彼女は「あの、ジェダイの掟は?」と尋ねたくてたまらなかったが、その一方でそんなことを聞くのは野暮だろうとも思った。まず言ってもアナキンは取り合わないだろう。彼の中で何かを決めたら、まず、彼は曲げない。
「……なるほど。」
ナマエはとりあえずもう一度ソファに、アナキンの隣に座った。
「マジで…上手くいくといいな。どんな人?友人?」
アナキンは呆れてふっと笑いそうになった。……アナキンの視線に彼女はどうやら全く気づいてないらしい。だとしても、好感触。少なくとも、ナマエが全く興味を持っていないわけではないことにアナキンは安心した。彼はゆっくりと言葉を選びながら言った。
「友人だ。ずっと前から知っている人なんだ。大切に思っている人。」
「へえ…。いつから好きに?」
「子供の頃からずっと。何年も。長い間。でも…」
言い淀んでから、アナキンはふう、と息を吐いた。
「…そうだな、難しくて。色々と」
「…というと?」
ナマエは内緒の話をするように、ぐっと彼に身を寄せた。彼の自室とはいえ、寺院内だから、プライバシーに気を遣ったのかもしれない。結局ジェダイは恋愛を許されていない。
しかし、彼女がすぐ隣にいることで、アナキンは突然胸が高鳴るのを感じた。彼女の近さに心が大きく揺れて、なんとか平静を装おうとしたが、頬に浮かんだかすかな紅潮が、彼女が自分に与える影響の大きさを如実に示していた。
「相手が同じ気持ちじゃなかったらって思うと怖くて。友情が壊れるのが嫌だった。」
ため息をついて話しながら、アナキンはナマエの肩にもたれかかるように寄り添い、そのぬくもりを楽しんだ。彼女の側はとても温かく、その香りは懐かしかった。
「その人との友情は、それくらい大事なんだ。」
「…わかるよ。もし上手くいかなかったら友情に影響することを考えると、伝えるのが難しい。拒絶されること以上に、友情を失うリスクの方が怖い。」
アナキンはぱっとナマエから離れて彼女の横顔を困惑したように見つめた。「わかるよ」?わかるのか??どぎまぎしてアナキンはナマエを見続けた。彼女も友人の誰かに恋心を抱いたことがあるのだろうか?いや、やめてほしい、切実に。そうだとしても、それがアナキンだったらいいのに。
「その人ってどんな人なんだ?もっと知りたい」
ナマエがふとアナキンに尋ねた。
アナキンはしばらく考えながら、彼女を言葉で表そうとした。
「その人は…優しくて、面白くて、時々ちょっと生意気だったりもする。そんなところもすごく好きなんだ。勇敢で、可愛くて…あと、背が低い。」
アナキンは意味ありげに、もう一度じっとナマエを見つめた。彼女に気づかせようとするかのように。すると、アナキンの言葉を黙って咀嚼していたナマエが、とつぜん何かに気が付いたかのように顔をこわばらせた。
「それ…それって……」
ナマエは驚いた様子で、言葉に詰まってしまった。
アナキンは微笑んだ。これは手応えがあったのかもしれない。ナマエがあまりに困惑している様子が、なんだか可笑しくもあった。
アナキンはそっと身を寄せ、ナマエの腰に腕を回しながら、耳元でささやいた。
「誰のことか、もうわかるだろ?」
しかし今、ナマエは完全に誤解していた。
子供の頃からアナキンを知っていて、背が低くて生意気だけど可愛くて、頭もいい……。
そして、はっとしたように目を見開いた。
……R2-D2だ……。
R2以外にいない……。
ナマエはだらだらと内心で冷や汗をかいていた。アナキンにはドロイドフェチがあるのだろうか?と。
ナマエはためらい、言葉を選んだ。
「打ち明けてくれてありがとう、アナキン。ただ、今、その、受け入れるのに、時間がかかってて…すまない、少し…混乱しているのかもしれない」
アナキンは、少し黙って落胆した。ナマエが、アナキンの言葉の真意を理解してのその言葉なら、いい反応ではなかったから。つまり、彼はナマエが自分の好きな人をR2と誤解していることには全く気づいていなかった。
「……ジェダイが掟で恋愛を禁じられてるから、受け入れ難い?」
「……いや、その…それもあるけど、なんていうか…」
アナキンは彼女の言葉に眉をひそめた。
その声にはどこかためらいが感じられ、不安と恐怖で胸の鼓動が速くなる。
「もし君が受け入れられなくても、僕たちは何も変わらない、そうだろ?」
「ああ、私達の間で何かが変わることはない、アナキン。ただ…少しだけ考える時間が欲しい」
ナマエはそう言って立ち上がり、アナキンをその場に残して去っていった。
彼女はまだ完全に誤解していた──アナキンが好きなのはR2だと思い込んでおり、そのままR2の元へと急いで向かっていった。
アナキンは、その場に取り残されたまま、ただ彼女の背中を見送った。手応えを感じたはずなのに──彼女はなぜ、逃げるように去ったのか?
胸の奥に残ったのは、不安と、釈然としない焦燥感だった。
────────
一方その頃、R2-D2は寺院にあるハンガーのメンテナンスベイを、歩き回っていた。
そこへナマエが向かってくるのを見つけたR2-D2は、彼女を認識し、機械音で挨拶を送った。
「R2。少し話したいことがあるんだ。お前の相棒…アナキンのことで。今、いい?」
ナマエはR2に優しく微笑みかけた。
ナマエとアナキンはタトゥイーンで一緒に育ったが、R2-D2はふたりがジェダイ寺院に来てからも、ずっと彼らをそばで見守っていた。
ナマエの声の調子に真剣さを感じ取ったR2は、彼女の言葉に興味をそそられた。
彼は小さくうなずくように頭部をくるくる動かし、興味津々といった様子でいくつか電子音を発した。
「簡単に言うと、…アナキンは恋をしてるらしい。で、あいつが好きな相手って…生意気で、優しくて、頭が良くて、面白くて、背が低いって。多分…R2、お前のことなんじゃないかなって思って。」
ナマエは少し緊張した声で、R2-D2の頭部を触りながら言った。
……沈黙。
R2はまるでショートでもしたかのように、その場で固まった。彼女がとんでもない勘違いをしていることに気づいたからだ。さらにいうと、R2はアナキンが恋している相手がナマエ自身だと知っていた。
フリーズしたR2のライトが点滅し、間違いを訂正するための必死な電子音が続いた。
彼女がありえない誤解をしている。そう理解した彼は、困惑しながら必死に否定の信号を送った。
ナマエはR2たち──ドロイドの使う言語「バイナリー」をある程度理解できた。彼女はR2の発した音を一語ずつ聞き取ろうとした。
「ん?彼?…好き?私を?お前も…好きって…?」
……再び。沈黙。
数秒後、ナマエは顔を真っ赤にして叫んだ。
「R2、お前もずっとアナキンのこと好きだったのか!!??」
そう、ナマエはバイナリーの微妙な聞き間違いにより、さらに壮大な誤解をしてしまったのだった。すると、R2の電子音はさらに切迫したものになり、彼女の誤解をどうにか訂正しようと必死になっていた。
R2は、アナキンのことを好きだなんてとんでもない、彼が好きなのはナマエだと必死に伝え続けたが、ナマエの限られたバイナリー理解のせいで、意思疎通はうまくいかなかった。
R2はついに、誤解を解くために記録されたホロ映像の投影を始めた。それは「アナキンが好きなのは自分ではなくナマエだ」と伝えるための映像だった。ホロ映像には、まだ子供だったナマエとアナキンがくすぐり合って二人でふざけている姿が映し出される。その後、10代になった二人が並んで座り、アナキンはナマエのライトセーバーの周波数を調整してあげていた。そして、そのあと優しく彼女の髪をくしゃっと撫でた。
別の記録ではアナキンとナマエは屋根に一緒に座り、景色を楽しんでいた。彼女が目をそらすと、アナキンはこっそり彼女の頬を指で突いたので、ナマエは不機嫌そうに口を尖らせた。
「R2…お前…本当にアナキンに一途なんだな。こんなにたくさんアナキンとの映像記録を保管してるなんて…本当に、心からアナキンのことが……」
ナマエの誤解は、さらに深まるばかりだった。
R2は少し苛立ったように、いつもより勢いのある電子音を発し始めた。そして新たな記憶を投影する。
それはジェダイ寺院での出来事だった。
ナマエはジェダイ寺院のアーカイブ棚から資料を探していた。やっと見つけたデータディスクが高い位置にあって、背伸びしてギリギリ届きそうなところに手を伸ばしていたその時、不意にアナキンが現れた。彼はそれをひょいと取ってさらにもう一段上の場所に置いたのだ。ナマエは不機嫌そうに眉をひそめ、アナキンにつかみかかり、彼はというと、楽しそうに彼女を押しのけていた。それから二人はふざけてアーカイブで取っ組み合い、オビワンから注意を受けていた。
「ああ、うん。確かにアナキンは時々ウザい。でも、お前もけっこう…毒舌だし、アナキンとはお似合いだと思うよ、R2。」
ナマエは肩をすくめて微笑んだ。しかし、R2はますます混乱した。どうしてまだ伝わらないんだ?彼はすぐさま別の記憶を投影した。
その映像では、ナマエは柱にもたれかかりながら本を読んでいた。そこへ突然アナキンが現れ、彼女を驚かせて本をひったくり、高く掲げた。ナマエの手の届かない高さを維持し、彼女がそれを取り返そうとぴょんぴょん跳ねるのを彼はくすくす笑って見ていた。
「はいはい、本当にウザいよな、あいつ……。5000年前から知ってたよ」
R2は必死になってビープ音を連打し、なんとか彼女の誤解を正そうとした。
だが、どうしても自分の伝えたいことが伝わっていないと感じていた。ナマエはR2が見せ続ける二人の楽しい記憶を完全に「アナキンの腹立つ瞬間ベスト100選」だと勘違いしている。これ以上どうすればいいのかわからなかった。
R2は覚悟を決めたように、ナマエのもとを離れ、アナキンのいる宿舎へと脚部を転がし向かった。
「ちょ…R2!」
ナマエはR2の後を追って走り出した。R2は立ち止まることなく、素早く寺院内のアナキンの宿舎へと転がっていった。
R2はすぐに開いたドアを通過する。デスクでサイバネティックの義手を調整している彼を見つけると、そのまま彼のそばにぴたりと寄り添った。
アナキンは小さなドロイドを見下ろし、訝しげに眉をひそめてから、R2の後ろから聞こえるナマエの声にどきりと少しだけ反応した。
「R2!待てって!」
ナマエは慌てて駆け込むと、状況を見て言葉を失った。
R2がアナキンの隣に寄り添っている。まさか。まさか……今この場で告白を。
「お前……そんな、今ここで、気持ちを……!?」
ナマエはまだ完全に誤解していた。
R2がアナキンを愛していて、アナキンもR2を愛しているのだと――。そう、彼らが両片想いであると。
R2はアナキンの方を見上げ、バイナリで事情を説明したあとに「お願いだから助けてくれ」と懇願するような電子音を発した。
アナキンはR2の言葉を彼の中で咀嚼しながら、ゆっくりと義手のメンテナンスに使っていたハイドロスパナをデスクに置いた。それから面白がるようにナマエとR2を交互に見比べ、やがてくすっと笑った。
R2がかなり苛立っているのが一目で分かる。
アナキンはナマエに向き直り、呆れたような笑みを浮かべて言った。
「…で、R2と僕が好きあってるって誤解してたわけだ?」
ナマエはたじたじと狼狽えた。
「え…いや、ご、誤解?」
アナキンはまた口角がゆっくり上がるのを感じた。あまりにもばかばかしい状況に、思わず吹き出し笑いを堪えきれなくなりそうだった。
その横でR2は、苛立ちから小さく周囲を円を描いて回りながら、必死にビープ音を鳴らし続けていた。
「ああ。R2と僕が、付き合う?そんなわけない!ハ…なんでそう考えたんだよ?」
アナキンはもう、すっかり面白がっていた。
「……秘密を打ち明けてくれた時、ほら、アナキンに好きな人がいるってやつ。その人のこと、背が低くて、生意気で、でも勇敢で可愛いって言ってただろう?てっきり、R2のことだって思って…それをR2に確認したんだ。そしたらR2が、お前のホロ映像を山ほど見せてくれて…だから、もしかしてR2も、アナキンのことが…って思って」
ナマエは混乱しながらそう言った。
アナキンはついに堪えきれず、声をあげて笑い出した。
まさか、数ある可能性の中からR2にたどり着くとは――可愛らしいけれど、さすがに突飛すぎて、笑いが止まらなかった。
「はは!信じられないな!他に好きな人がいるけど、R2だけは絶対にない!」
「でも!でも!言ってたし!ほら…背が低くて、生意気で、勇敢で、可愛くて、…頭も良くて…、子供の頃からずっと知ってるって…」
捲し立ててから、息をのんで彼女はアナキンを見た。
「……それって……」
彼女の途方に暮れた声に、アナキンはまたくすくすと笑った。明白なことなのに、まだ理解しきれていないその様子が、たまらなく可愛かった。
そして彼は彼女に近づき、優しく彼女の髪をくしゃっと撫でた。
「そう。全部その通りさ。それに、すごく頑固なんだ。話してると、まったく話が通じない時があるんだよ。本当に」
言ってから、アナキンはすこし黙った。
それからそっと優しくため息をついて言った。
「でも、君もその人のことを知ってるんだ。僕と同じくらい、ずっと前から。」
「な、なに…」
「ホロに映ってたのは、僕だけじゃなかったはずだ」
そして、R2に向き直り、少し操作すると、ある記録を投影した。それは最近のものに思えた。ナマエが気づいていない隙に、アナキンが彼女を優しく見つめている映像だった。
R2が小さくビープ音を鳴らした。
「それって……」
アナキンはホロの記録を見ながら、穏やかに微笑んだ。映像の中の彼は、ナマエの横顔をそっと見つめ、愛おしそうに目を細めていた。
──気づかれないうちに彼女を見つめる、そんな時間が彼は心から好きだった。
R2が小さくビープ音を鳴らす。
今度こそ真実が伝わるようにと、背中を押すような、ひときわ強い音を響かせた。
ナマエはぼんやりとホロ映像を見つめていたが、ふと、映像越しに向かいのアナキンの視線に気づいた。
ホロ映像をはさんで──半透明の光の向こうで、彼が静かに、まっすぐこちらを見つめ返している。
優しく、穏やかなまなざし。ホロの中と同じだった。そして何も言わずに、ただR2とアナキンが伝えたかったことに彼女が気づくのを、静かに待っていた。
ナマエは、少し頬を赤らめながら言った。
「……その、R2が何を伝えようとしてるのか、やっとわかってきた気がする。でも…そんな急すぎる、というか……」
アナキンは小さな笑いと共に息を吐いた。
彼女の頬が赤く染まっているのが、たまらなく愛おしいと思ったから。ホロ映像を消してから、衝動のまま、アナキンはそっと手を伸ばした。彼女の右手を包み込むように握り、その甲を親指でゆっくりと撫でる。
「わかってる。すぐに受け入れられなくてもいい。
待つよ。ジェダイには恋愛の掟があるし、君にとっても突然な話だし。けど、とにかくやっと気持ちを伝えられてすっきりしたよ」
「気持ちを伝えられただけですっきりって……そんな、勝手だ。戸惑うって、わかってたくせに……」
アナキンはナマエにかすかに苦笑して言い返した。
「そう、いつも勝手なんだ」
もうすぐそこにナマエの存在があって、彼の吐息が彼女の髪をわずかに揺らすほどの距離だった。アナキンは目にいたずらっぽい光を宿しながら微笑んだ。
「でも…僕の勝手なところ、多分君はずっと好きだったと思うけど」
ナマエは顔を赤らめたが、肯定も否定もしなかった。それでも、そのまま彼の手を離さなかった。彼女の曖昧な態度を見たR2は、ついにサポートを決意する。
R2はアナキンの部屋の照明システムをスライスし、部屋の明かりをすべて落とした。
突然の暗闇にナマエは驚き、アナキンから身を引くが、足元の工具につまづき思わずよろける。
「うわっ……!」
アナキンはR2が部屋の明かりを落としたのを見て、小さく首を振って笑った。
暗闇の中、わたわたと倒れかけた彼女をアナキンは素早く引き寄せ、しっかりと支えた。それから、彼はそのまま胸に押し付けてぎゅっと彼女を抱きしめる。彼女の鼓動が自分の胸に伝わってくるのを感じ、そっと顔を彼女の首筋にうずめた。
肌をかすめた吐息がくすぐったくて、なのに息をするのも忘れそうなほど緊張した。そして静かな声で、少しからかうような調子で囁いた。
「背が低くて、生意気で、勇敢で、賢くて……でも、もしかするとちょっとドジかもしれないな。」
「うっせ!」
アナキンはこのロマンチックな状況と、胸の高鳴りと、彼女の正直な反応から、込み上げる不思議な愉快さに笑いを堪えきれなかった。この近さがたまらなく嬉しい。彼女の髪が頬にふれて、柔らかい香りが鼻先をくすぐる。
その瞬間を、まるで夢のように感じながら言った。
「待つって言ったけど、既に訂正したい。どうせ僕は勝手な男なんだし、いいだろ?」
「はあ?」
アナキンはR2の方を振り返って言った。
「R2。ついでにドアのロックも頼む。」
R2はピピッと電子音で返事をした。ナマエ
は目を見開いて叫んだ。
「ちょっ、な…おい!勝手に!」
ナマエは目を剥いてR2に叫んだ。
アナキンはナマエの反応にくすくすと笑いながら言った。
「僕が勝手だって、君が言ったんだ。だから…もう受け入れた方がいい」
アナキンは額を彼女の額にそっと重ね、熱のある息を吐いた。部屋の暗さがすべてをより濃密に感じさせた。ナマエの頬がかすかに赤く染まっているのが、この距離だからこそ見えた。
「どれだけ、ずっと…この瞬間を待ってたか、君にはきっとわからないんだろうな」
「……う。だ、だとしても、R2の演出はやりすぎだ。停電までさせる必要、ないのに……」
赤くなった顔で文句を言うナマエに、アナキンはふっと笑いながら、抱きしめたままそっと髪を撫でた。
指先に、やわらかい髪が絡まる。
「確かに。でも、僕は文句なんて言えないさ。欲しかったものが…手に入ったから」
そして、アナキンはゆっくりナマエに顔を近づけ、口付けをしようとした。
しかし、そのとき、ロックのパネルが小さくショートした音がした。
R2がビープ音を連打し始める。
「……あ?」
ナマエの間の抜けた声が響く。アナキンとナマエは、怪訝そうに目を合わせた。それから、アナキンはため息をつき、名残惜しそうに彼女から離れた。
うんざりしたように髪をかき上げ、ドアに近づく。それから操作パネルとR2を交互に見やった。
「R2、お前、ロック機構まで壊してないだろうな?」
R2は言い訳しているかのように、電子音を発した。ナマエはじっとドアを見つめ、淡々とつぶやいた。
「……朝まで出られるか、これ?」
アナキンはふう、と息をついた。
「まあ、すぐ直せるさ」
「ドジだなあ、R2」
アナキンは完璧な瞬間を中断されたことに、内心でR2に悪態をついていたが、とつぜんナマエの言葉にピンときて、つい彼女をからかいたくなった。
「背が低くて、生意気で、勇敢で、賢くて……でも、ちょっとドジ…か。確かに。君がR2と自分を間違えたのは無理もない。だよな?」
「もう、それやめろって!」
ナマエは照れ隠しのように彼の肩を軽く叩いた。アナキンはそれをわざと受けて、大袈裟に痛がってみせた。ナマエは面倒くさそうに、呆れて顔を背ける。だが、数秒してからそっと視線を戻すと、アナキンもちょうど彼女を見ていた。
それから、二人の目が合った。
お互いの顔に浮かんでいた表情が決壊して、思わず吹き出す。
──ほの暗い部屋の中で、ふたりは顔を見合わせて、笑い出した。ばかばかしい誤解のおかげで縮まったこの距離を、二人は今、心から気に入っていた。
「少しだけ、聞いてほしい話がある」
アナキンは神妙な口調にナマエは片眉を上げた。
ナマエも背筋を正して神妙に言った。
「金は貸さない」
「……借りたことないだろ」
アナキンは、ナマエが早とちりする様子にくすっと笑った。
ナマエは時々そんなふうにすぐ結論に飛びつく時がある。そういうところが可愛いと思いつつ、平静を装った。
「お金を貸してくれなんて頼んだことないだろ?どうしてそれだと?」
「以前スピーダーの修理部品を調達しに店に行った時、超高いカスタムエンジンパーツをじろじろ見てたから。それを買う決心がついたんだと思った。」
「な、そ、そんな事覚えてたのか」
アナキンは少し胸が高鳴った。いつもつかみどころのないナマエが彼の小さな行動を覚えていたことに、口元に浮かびかけた笑みを抑えようとした。が、うまくいかなかった。嬉しいものは嬉しい。
「それは…。その、ただ…いいなって思っただけで。僕が話したい内容と関係ない」
「なら、何」
ナマエは肩をすくめてアナキンに向き直った。アナキンは言葉に詰まった。
「それは…それが僕たちの関係を壊すかもしれない。けど、それでもいい?」
「なんだなんだ」
ナマエはアナキンのただならぬ導入に身構えた。
「好きな人がいるんだ」
沈黙。
彼はじっと彼女を見つめ、ほのめかすような視線を送った。自分の気持ちに、彼女が気づいてくれることを願いながら。
ナマエはというと、少し黙って困惑したように眉をひそめたが、理解しようともしていた。彼女は「あの、ジェダイの掟は?」と尋ねたくてたまらなかったが、その一方でそんなことを聞くのは野暮だろうとも思った。まず言ってもアナキンは取り合わないだろう。彼の中で何かを決めたら、まず、彼は曲げない。
「……なるほど。」
ナマエはとりあえずもう一度ソファに、アナキンの隣に座った。
「マジで…上手くいくといいな。どんな人?友人?」
アナキンは呆れてふっと笑いそうになった。……アナキンの視線に彼女はどうやら全く気づいてないらしい。だとしても、好感触。少なくとも、ナマエが全く興味を持っていないわけではないことにアナキンは安心した。彼はゆっくりと言葉を選びながら言った。
「友人だ。ずっと前から知っている人なんだ。大切に思っている人。」
「へえ…。いつから好きに?」
「子供の頃からずっと。何年も。長い間。でも…」
言い淀んでから、アナキンはふう、と息を吐いた。
「…そうだな、難しくて。色々と」
「…というと?」
ナマエは内緒の話をするように、ぐっと彼に身を寄せた。彼の自室とはいえ、寺院内だから、プライバシーに気を遣ったのかもしれない。結局ジェダイは恋愛を許されていない。
しかし、彼女がすぐ隣にいることで、アナキンは突然胸が高鳴るのを感じた。彼女の近さに心が大きく揺れて、なんとか平静を装おうとしたが、頬に浮かんだかすかな紅潮が、彼女が自分に与える影響の大きさを如実に示していた。
「相手が同じ気持ちじゃなかったらって思うと怖くて。友情が壊れるのが嫌だった。」
ため息をついて話しながら、アナキンはナマエの肩にもたれかかるように寄り添い、そのぬくもりを楽しんだ。彼女の側はとても温かく、その香りは懐かしかった。
「その人との友情は、それくらい大事なんだ。」
「…わかるよ。もし上手くいかなかったら友情に影響することを考えると、伝えるのが難しい。拒絶されること以上に、友情を失うリスクの方が怖い。」
アナキンはぱっとナマエから離れて彼女の横顔を困惑したように見つめた。「わかるよ」?わかるのか??どぎまぎしてアナキンはナマエを見続けた。彼女も友人の誰かに恋心を抱いたことがあるのだろうか?いや、やめてほしい、切実に。そうだとしても、それがアナキンだったらいいのに。
「その人ってどんな人なんだ?もっと知りたい」
ナマエがふとアナキンに尋ねた。
アナキンはしばらく考えながら、彼女を言葉で表そうとした。
「その人は…優しくて、面白くて、時々ちょっと生意気だったりもする。そんなところもすごく好きなんだ。勇敢で、可愛くて…あと、背が低い。」
アナキンは意味ありげに、もう一度じっとナマエを見つめた。彼女に気づかせようとするかのように。すると、アナキンの言葉を黙って咀嚼していたナマエが、とつぜん何かに気が付いたかのように顔をこわばらせた。
「それ…それって……」
ナマエは驚いた様子で、言葉に詰まってしまった。
アナキンは微笑んだ。これは手応えがあったのかもしれない。ナマエがあまりに困惑している様子が、なんだか可笑しくもあった。
アナキンはそっと身を寄せ、ナマエの腰に腕を回しながら、耳元でささやいた。
「誰のことか、もうわかるだろ?」
しかし今、ナマエは完全に誤解していた。
子供の頃からアナキンを知っていて、背が低くて生意気だけど可愛くて、頭もいい……。
そして、はっとしたように目を見開いた。
……R2-D2だ……。
R2以外にいない……。
ナマエはだらだらと内心で冷や汗をかいていた。アナキンにはドロイドフェチがあるのだろうか?と。
ナマエはためらい、言葉を選んだ。
「打ち明けてくれてありがとう、アナキン。ただ、今、その、受け入れるのに、時間がかかってて…すまない、少し…混乱しているのかもしれない」
アナキンは、少し黙って落胆した。ナマエが、アナキンの言葉の真意を理解してのその言葉なら、いい反応ではなかったから。つまり、彼はナマエが自分の好きな人をR2と誤解していることには全く気づいていなかった。
「……ジェダイが掟で恋愛を禁じられてるから、受け入れ難い?」
「……いや、その…それもあるけど、なんていうか…」
アナキンは彼女の言葉に眉をひそめた。
その声にはどこかためらいが感じられ、不安と恐怖で胸の鼓動が速くなる。
「もし君が受け入れられなくても、僕たちは何も変わらない、そうだろ?」
「ああ、私達の間で何かが変わることはない、アナキン。ただ…少しだけ考える時間が欲しい」
ナマエはそう言って立ち上がり、アナキンをその場に残して去っていった。
彼女はまだ完全に誤解していた──アナキンが好きなのはR2だと思い込んでおり、そのままR2の元へと急いで向かっていった。
アナキンは、その場に取り残されたまま、ただ彼女の背中を見送った。手応えを感じたはずなのに──彼女はなぜ、逃げるように去ったのか?
胸の奥に残ったのは、不安と、釈然としない焦燥感だった。
────────
一方その頃、R2-D2は寺院にあるハンガーのメンテナンスベイを、歩き回っていた。
そこへナマエが向かってくるのを見つけたR2-D2は、彼女を認識し、機械音で挨拶を送った。
「R2。少し話したいことがあるんだ。お前の相棒…アナキンのことで。今、いい?」
ナマエはR2に優しく微笑みかけた。
ナマエとアナキンはタトゥイーンで一緒に育ったが、R2-D2はふたりがジェダイ寺院に来てからも、ずっと彼らをそばで見守っていた。
ナマエの声の調子に真剣さを感じ取ったR2は、彼女の言葉に興味をそそられた。
彼は小さくうなずくように頭部をくるくる動かし、興味津々といった様子でいくつか電子音を発した。
「簡単に言うと、…アナキンは恋をしてるらしい。で、あいつが好きな相手って…生意気で、優しくて、頭が良くて、面白くて、背が低いって。多分…R2、お前のことなんじゃないかなって思って。」
ナマエは少し緊張した声で、R2-D2の頭部を触りながら言った。
……沈黙。
R2はまるでショートでもしたかのように、その場で固まった。彼女がとんでもない勘違いをしていることに気づいたからだ。さらにいうと、R2はアナキンが恋している相手がナマエ自身だと知っていた。
フリーズしたR2のライトが点滅し、間違いを訂正するための必死な電子音が続いた。
彼女がありえない誤解をしている。そう理解した彼は、困惑しながら必死に否定の信号を送った。
ナマエはR2たち──ドロイドの使う言語「バイナリー」をある程度理解できた。彼女はR2の発した音を一語ずつ聞き取ろうとした。
「ん?彼?…好き?私を?お前も…好きって…?」
……再び。沈黙。
数秒後、ナマエは顔を真っ赤にして叫んだ。
「R2、お前もずっとアナキンのこと好きだったのか!!??」
そう、ナマエはバイナリーの微妙な聞き間違いにより、さらに壮大な誤解をしてしまったのだった。すると、R2の電子音はさらに切迫したものになり、彼女の誤解をどうにか訂正しようと必死になっていた。
R2は、アナキンのことを好きだなんてとんでもない、彼が好きなのはナマエだと必死に伝え続けたが、ナマエの限られたバイナリー理解のせいで、意思疎通はうまくいかなかった。
R2はついに、誤解を解くために記録されたホロ映像の投影を始めた。それは「アナキンが好きなのは自分ではなくナマエだ」と伝えるための映像だった。ホロ映像には、まだ子供だったナマエとアナキンがくすぐり合って二人でふざけている姿が映し出される。その後、10代になった二人が並んで座り、アナキンはナマエのライトセーバーの周波数を調整してあげていた。そして、そのあと優しく彼女の髪をくしゃっと撫でた。
別の記録ではアナキンとナマエは屋根に一緒に座り、景色を楽しんでいた。彼女が目をそらすと、アナキンはこっそり彼女の頬を指で突いたので、ナマエは不機嫌そうに口を尖らせた。
「R2…お前…本当にアナキンに一途なんだな。こんなにたくさんアナキンとの映像記録を保管してるなんて…本当に、心からアナキンのことが……」
ナマエの誤解は、さらに深まるばかりだった。
R2は少し苛立ったように、いつもより勢いのある電子音を発し始めた。そして新たな記憶を投影する。
それはジェダイ寺院での出来事だった。
ナマエはジェダイ寺院のアーカイブ棚から資料を探していた。やっと見つけたデータディスクが高い位置にあって、背伸びしてギリギリ届きそうなところに手を伸ばしていたその時、不意にアナキンが現れた。彼はそれをひょいと取ってさらにもう一段上の場所に置いたのだ。ナマエは不機嫌そうに眉をひそめ、アナキンにつかみかかり、彼はというと、楽しそうに彼女を押しのけていた。それから二人はふざけてアーカイブで取っ組み合い、オビワンから注意を受けていた。
「ああ、うん。確かにアナキンは時々ウザい。でも、お前もけっこう…毒舌だし、アナキンとはお似合いだと思うよ、R2。」
ナマエは肩をすくめて微笑んだ。しかし、R2はますます混乱した。どうしてまだ伝わらないんだ?彼はすぐさま別の記憶を投影した。
その映像では、ナマエは柱にもたれかかりながら本を読んでいた。そこへ突然アナキンが現れ、彼女を驚かせて本をひったくり、高く掲げた。ナマエの手の届かない高さを維持し、彼女がそれを取り返そうとぴょんぴょん跳ねるのを彼はくすくす笑って見ていた。
「はいはい、本当にウザいよな、あいつ……。5000年前から知ってたよ」
R2は必死になってビープ音を連打し、なんとか彼女の誤解を正そうとした。
だが、どうしても自分の伝えたいことが伝わっていないと感じていた。ナマエはR2が見せ続ける二人の楽しい記憶を完全に「アナキンの腹立つ瞬間ベスト100選」だと勘違いしている。これ以上どうすればいいのかわからなかった。
R2は覚悟を決めたように、ナマエのもとを離れ、アナキンのいる宿舎へと脚部を転がし向かった。
「ちょ…R2!」
ナマエはR2の後を追って走り出した。R2は立ち止まることなく、素早く寺院内のアナキンの宿舎へと転がっていった。
R2はすぐに開いたドアを通過する。デスクでサイバネティックの義手を調整している彼を見つけると、そのまま彼のそばにぴたりと寄り添った。
アナキンは小さなドロイドを見下ろし、訝しげに眉をひそめてから、R2の後ろから聞こえるナマエの声にどきりと少しだけ反応した。
「R2!待てって!」
ナマエは慌てて駆け込むと、状況を見て言葉を失った。
R2がアナキンの隣に寄り添っている。まさか。まさか……今この場で告白を。
「お前……そんな、今ここで、気持ちを……!?」
ナマエはまだ完全に誤解していた。
R2がアナキンを愛していて、アナキンもR2を愛しているのだと――。そう、彼らが両片想いであると。
R2はアナキンの方を見上げ、バイナリで事情を説明したあとに「お願いだから助けてくれ」と懇願するような電子音を発した。
アナキンはR2の言葉を彼の中で咀嚼しながら、ゆっくりと義手のメンテナンスに使っていたハイドロスパナをデスクに置いた。それから面白がるようにナマエとR2を交互に見比べ、やがてくすっと笑った。
R2がかなり苛立っているのが一目で分かる。
アナキンはナマエに向き直り、呆れたような笑みを浮かべて言った。
「…で、R2と僕が好きあってるって誤解してたわけだ?」
ナマエはたじたじと狼狽えた。
「え…いや、ご、誤解?」
アナキンはまた口角がゆっくり上がるのを感じた。あまりにもばかばかしい状況に、思わず吹き出し笑いを堪えきれなくなりそうだった。
その横でR2は、苛立ちから小さく周囲を円を描いて回りながら、必死にビープ音を鳴らし続けていた。
「ああ。R2と僕が、付き合う?そんなわけない!ハ…なんでそう考えたんだよ?」
アナキンはもう、すっかり面白がっていた。
「……秘密を打ち明けてくれた時、ほら、アナキンに好きな人がいるってやつ。その人のこと、背が低くて、生意気で、でも勇敢で可愛いって言ってただろう?てっきり、R2のことだって思って…それをR2に確認したんだ。そしたらR2が、お前のホロ映像を山ほど見せてくれて…だから、もしかしてR2も、アナキンのことが…って思って」
ナマエは混乱しながらそう言った。
アナキンはついに堪えきれず、声をあげて笑い出した。
まさか、数ある可能性の中からR2にたどり着くとは――可愛らしいけれど、さすがに突飛すぎて、笑いが止まらなかった。
「はは!信じられないな!他に好きな人がいるけど、R2だけは絶対にない!」
「でも!でも!言ってたし!ほら…背が低くて、生意気で、勇敢で、可愛くて、…頭も良くて…、子供の頃からずっと知ってるって…」
捲し立ててから、息をのんで彼女はアナキンを見た。
「……それって……」
彼女の途方に暮れた声に、アナキンはまたくすくすと笑った。明白なことなのに、まだ理解しきれていないその様子が、たまらなく可愛かった。
そして彼は彼女に近づき、優しく彼女の髪をくしゃっと撫でた。
「そう。全部その通りさ。それに、すごく頑固なんだ。話してると、まったく話が通じない時があるんだよ。本当に」
言ってから、アナキンはすこし黙った。
それからそっと優しくため息をついて言った。
「でも、君もその人のことを知ってるんだ。僕と同じくらい、ずっと前から。」
「な、なに…」
「ホロに映ってたのは、僕だけじゃなかったはずだ」
そして、R2に向き直り、少し操作すると、ある記録を投影した。それは最近のものに思えた。ナマエが気づいていない隙に、アナキンが彼女を優しく見つめている映像だった。
R2が小さくビープ音を鳴らした。
「それって……」
アナキンはホロの記録を見ながら、穏やかに微笑んだ。映像の中の彼は、ナマエの横顔をそっと見つめ、愛おしそうに目を細めていた。
──気づかれないうちに彼女を見つめる、そんな時間が彼は心から好きだった。
R2が小さくビープ音を鳴らす。
今度こそ真実が伝わるようにと、背中を押すような、ひときわ強い音を響かせた。
ナマエはぼんやりとホロ映像を見つめていたが、ふと、映像越しに向かいのアナキンの視線に気づいた。
ホロ映像をはさんで──半透明の光の向こうで、彼が静かに、まっすぐこちらを見つめ返している。
優しく、穏やかなまなざし。ホロの中と同じだった。そして何も言わずに、ただR2とアナキンが伝えたかったことに彼女が気づくのを、静かに待っていた。
ナマエは、少し頬を赤らめながら言った。
「……その、R2が何を伝えようとしてるのか、やっとわかってきた気がする。でも…そんな急すぎる、というか……」
アナキンは小さな笑いと共に息を吐いた。
彼女の頬が赤く染まっているのが、たまらなく愛おしいと思ったから。ホロ映像を消してから、衝動のまま、アナキンはそっと手を伸ばした。彼女の右手を包み込むように握り、その甲を親指でゆっくりと撫でる。
「わかってる。すぐに受け入れられなくてもいい。
待つよ。ジェダイには恋愛の掟があるし、君にとっても突然な話だし。けど、とにかくやっと気持ちを伝えられてすっきりしたよ」
「気持ちを伝えられただけですっきりって……そんな、勝手だ。戸惑うって、わかってたくせに……」
アナキンはナマエにかすかに苦笑して言い返した。
「そう、いつも勝手なんだ」
もうすぐそこにナマエの存在があって、彼の吐息が彼女の髪をわずかに揺らすほどの距離だった。アナキンは目にいたずらっぽい光を宿しながら微笑んだ。
「でも…僕の勝手なところ、多分君はずっと好きだったと思うけど」
ナマエは顔を赤らめたが、肯定も否定もしなかった。それでも、そのまま彼の手を離さなかった。彼女の曖昧な態度を見たR2は、ついにサポートを決意する。
R2はアナキンの部屋の照明システムをスライスし、部屋の明かりをすべて落とした。
突然の暗闇にナマエは驚き、アナキンから身を引くが、足元の工具につまづき思わずよろける。
「うわっ……!」
アナキンはR2が部屋の明かりを落としたのを見て、小さく首を振って笑った。
暗闇の中、わたわたと倒れかけた彼女をアナキンは素早く引き寄せ、しっかりと支えた。それから、彼はそのまま胸に押し付けてぎゅっと彼女を抱きしめる。彼女の鼓動が自分の胸に伝わってくるのを感じ、そっと顔を彼女の首筋にうずめた。
肌をかすめた吐息がくすぐったくて、なのに息をするのも忘れそうなほど緊張した。そして静かな声で、少しからかうような調子で囁いた。
「背が低くて、生意気で、勇敢で、賢くて……でも、もしかするとちょっとドジかもしれないな。」
「うっせ!」
アナキンはこのロマンチックな状況と、胸の高鳴りと、彼女の正直な反応から、込み上げる不思議な愉快さに笑いを堪えきれなかった。この近さがたまらなく嬉しい。彼女の髪が頬にふれて、柔らかい香りが鼻先をくすぐる。
その瞬間を、まるで夢のように感じながら言った。
「待つって言ったけど、既に訂正したい。どうせ僕は勝手な男なんだし、いいだろ?」
「はあ?」
アナキンはR2の方を振り返って言った。
「R2。ついでにドアのロックも頼む。」
R2はピピッと電子音で返事をした。ナマエ
は目を見開いて叫んだ。
「ちょっ、な…おい!勝手に!」
ナマエは目を剥いてR2に叫んだ。
アナキンはナマエの反応にくすくすと笑いながら言った。
「僕が勝手だって、君が言ったんだ。だから…もう受け入れた方がいい」
アナキンは額を彼女の額にそっと重ね、熱のある息を吐いた。部屋の暗さがすべてをより濃密に感じさせた。ナマエの頬がかすかに赤く染まっているのが、この距離だからこそ見えた。
「どれだけ、ずっと…この瞬間を待ってたか、君にはきっとわからないんだろうな」
「……う。だ、だとしても、R2の演出はやりすぎだ。停電までさせる必要、ないのに……」
赤くなった顔で文句を言うナマエに、アナキンはふっと笑いながら、抱きしめたままそっと髪を撫でた。
指先に、やわらかい髪が絡まる。
「確かに。でも、僕は文句なんて言えないさ。欲しかったものが…手に入ったから」
そして、アナキンはゆっくりナマエに顔を近づけ、口付けをしようとした。
しかし、そのとき、ロックのパネルが小さくショートした音がした。
R2がビープ音を連打し始める。
「……あ?」
ナマエの間の抜けた声が響く。アナキンとナマエは、怪訝そうに目を合わせた。それから、アナキンはため息をつき、名残惜しそうに彼女から離れた。
うんざりしたように髪をかき上げ、ドアに近づく。それから操作パネルとR2を交互に見やった。
「R2、お前、ロック機構まで壊してないだろうな?」
R2は言い訳しているかのように、電子音を発した。ナマエはじっとドアを見つめ、淡々とつぶやいた。
「……朝まで出られるか、これ?」
アナキンはふう、と息をついた。
「まあ、すぐ直せるさ」
「ドジだなあ、R2」
アナキンは完璧な瞬間を中断されたことに、内心でR2に悪態をついていたが、とつぜんナマエの言葉にピンときて、つい彼女をからかいたくなった。
「背が低くて、生意気で、勇敢で、賢くて……でも、ちょっとドジ…か。確かに。君がR2と自分を間違えたのは無理もない。だよな?」
「もう、それやめろって!」
ナマエは照れ隠しのように彼の肩を軽く叩いた。アナキンはそれをわざと受けて、大袈裟に痛がってみせた。ナマエは面倒くさそうに、呆れて顔を背ける。だが、数秒してからそっと視線を戻すと、アナキンもちょうど彼女を見ていた。
それから、二人の目が合った。
お互いの顔に浮かんでいた表情が決壊して、思わず吹き出す。
──ほの暗い部屋の中で、ふたりは顔を見合わせて、笑い出した。ばかばかしい誤解のおかげで縮まったこの距離を、二人は今、心から気に入っていた。
(その輪郭は錯覚の向こうに)
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