日記帳
『人間標本』超オススメ激熱作品だった
2024/10/01 20:39湊かなえさんの『人間標本』を読みました。超よかった。よかったのでドデカネタバレはなるべく避けつつ感想書きます。
何の気なしに立ち寄った本屋で、面白そうなのがあれば1冊買ってこうかな〜と小説コーナーをうろついていたらこの本が目に留まりました。ハードカバーの大きなサイズに大々的に描かれた1匹の青い蝶。その中心に記されたタイトルのインパクトは一瞬で私の興味を惹きました。帯の「人間も一番美しい時に標本にできればいいのにな」という文言も非常にそそる。
私は手が小さく力も弱いので、読書媒体として見るとハードカバーは苦手です。デザインとしてはめちゃくちゃかっこいいしすごいキマるので好きなんですけどね。だから目の前にある本作がそれであることに少々悩み、文庫版はないのか調べようかとスマホを手に取ってもみました。でも何となく「いやなんかこれはハードカバーのがいい感じする。というかそんな探してる時間あったらとっとと買って帰ってこれを読みたい」という気持ちが湧いたので連れて帰りました。結論としてこの選択は正解だったと思います。手はめっちゃ疲れたけど。やっぱハードで読むのは苦手っぱなしだな……
内容は、蝶をこよなく愛する榊という人物が6人もの少年(うち1人は自分の息子)を標本にした事件が起き、どういう顛末を辿っていくかというものでした。複数の人物の視点から一つの事件を見ていく構成は、同作者の『告白』を想起させました。これまで湊かなえさんの作品は『告白』しか読んだことがなかったのですが、そういえばあの時もこんな風にいろんな視点から物語を見せて振り回しまくられてたな〜と懐かしい気持ちになりました。読んだのもこれが話題になりまくってた時期なので大分前ですね。映画の告知動画が12年前とか書いててひっくり返りました。私は今よんちゃいだから……その頃はいっちゃいくらいかな……
本作には口絵が6点収録されています。作中で作られた標本の絵なのは初見で分かりました。その時は「冒涜的な美を備えた作品だな」と遠い位置からの感想を抱きましたが、いざ本編が標本制作(作中では<ようこそ、美術館へ>という表題がついてる)ターンに入ると標本への感情は「キッショ!!!!能書き垂れてねーでとっととくたばれや!!!!」の気持ちにシフトしました。シェフの口上があると料理がより上等に美味しく味わえるあれと似ていますね。作者の解説がつくと作品への造詣が嫌でも深まるため、きっと一種の美なのだろうと認識していたそれはおぞましいものでしかないと思いました。そういう感性は存在する分には構わないし否定されていいものではないけど、少なくとも私にはキッショ……どうかしてるぜ……としかならない、そういう話。
物語は榊の幼少期から標本制作に踏み切るまで、そして完成したそれのお披露目とシンプルに進みます。だけどここでまだ半分、紙はまだたくさん残っている。ここから何の話をするんだろう? と思いました。ざっくり言えば他の人物の視点で事件発覚後の話になるんですが。その表現方法が私には新鮮に映りました。SNSユーザーという不特定多数のリアクションなんですよね、これが。小説でこれを見るのはとても新鮮でした。いかにそれが猟奇的で犯人には同情の余地がないとはいえ、一部の情報だけで語るのは不躾というか、気味が悪いと感じました。事件に対して怖いというのはともかく、勝手に分かった気になったりなろうとしたり、考察と題してほじくる様はある意味標本よりおぞましく……気持ちの悪い世界だなぁ、と思いました。正直美術館で綴られた榊の思考より気持ち悪かったです。
これ以降に言及すると核心バレになっちゃうので控えます。代わりに装丁の話をば。
同人誌を作る際も装丁を楽しみの一つにしてる身なので本、特に小説のそれは割と見るんですが、本作のそれはめちゃくちゃいいなと思いました。デザインやチョイスするアイテム、口絵達がこの作品の世界観を的確に表現してて素敵です。ハードカバーで正解と思ったのも、本作が標本をモチーフにしているからでした。カバー絵が蝶の標本を模しているので、表紙が板になっていると様になります。装丁でその本を表すのが大好きなので超しびれる。めっちゃ手痛いけどハードカバーで買ってよかった! めっちゃ手痛いけど!
めちゃくちゃおもしろかったので他の作品も読んでみたいと思いました。唯一読んだ『告白』も大掃除で手放しちゃったけどもう一度買って読み直そうかな〜。これを読む間いい時間を送れました。ありがとう女王。そのうちまた世話になります。
何の気なしに立ち寄った本屋で、面白そうなのがあれば1冊買ってこうかな〜と小説コーナーをうろついていたらこの本が目に留まりました。ハードカバーの大きなサイズに大々的に描かれた1匹の青い蝶。その中心に記されたタイトルのインパクトは一瞬で私の興味を惹きました。帯の「人間も一番美しい時に標本にできればいいのにな」という文言も非常にそそる。
私は手が小さく力も弱いので、読書媒体として見るとハードカバーは苦手です。デザインとしてはめちゃくちゃかっこいいしすごいキマるので好きなんですけどね。だから目の前にある本作がそれであることに少々悩み、文庫版はないのか調べようかとスマホを手に取ってもみました。でも何となく「いやなんかこれはハードカバーのがいい感じする。というかそんな探してる時間あったらとっとと買って帰ってこれを読みたい」という気持ちが湧いたので連れて帰りました。結論としてこの選択は正解だったと思います。手はめっちゃ疲れたけど。やっぱハードで読むのは苦手っぱなしだな……
内容は、蝶をこよなく愛する榊という人物が6人もの少年(うち1人は自分の息子)を標本にした事件が起き、どういう顛末を辿っていくかというものでした。複数の人物の視点から一つの事件を見ていく構成は、同作者の『告白』を想起させました。これまで湊かなえさんの作品は『告白』しか読んだことがなかったのですが、そういえばあの時もこんな風にいろんな視点から物語を見せて振り回しまくられてたな〜と懐かしい気持ちになりました。読んだのもこれが話題になりまくってた時期なので大分前ですね。映画の告知動画が12年前とか書いててひっくり返りました。私は今よんちゃいだから……その頃はいっちゃいくらいかな……
本作には口絵が6点収録されています。作中で作られた標本の絵なのは初見で分かりました。その時は「冒涜的な美を備えた作品だな」と遠い位置からの感想を抱きましたが、いざ本編が標本制作(作中では<ようこそ、美術館へ>という表題がついてる)ターンに入ると標本への感情は「キッショ!!!!能書き垂れてねーでとっととくたばれや!!!!」の気持ちにシフトしました。シェフの口上があると料理がより上等に美味しく味わえるあれと似ていますね。作者の解説がつくと作品への造詣が嫌でも深まるため、きっと一種の美なのだろうと認識していたそれはおぞましいものでしかないと思いました。そういう感性は存在する分には構わないし否定されていいものではないけど、少なくとも私にはキッショ……どうかしてるぜ……としかならない、そういう話。
物語は榊の幼少期から標本制作に踏み切るまで、そして完成したそれのお披露目とシンプルに進みます。だけどここでまだ半分、紙はまだたくさん残っている。ここから何の話をするんだろう? と思いました。ざっくり言えば他の人物の視点で事件発覚後の話になるんですが。その表現方法が私には新鮮に映りました。SNSユーザーという不特定多数のリアクションなんですよね、これが。小説でこれを見るのはとても新鮮でした。いかにそれが猟奇的で犯人には同情の余地がないとはいえ、一部の情報だけで語るのは不躾というか、気味が悪いと感じました。事件に対して怖いというのはともかく、勝手に分かった気になったりなろうとしたり、考察と題してほじくる様はある意味標本よりおぞましく……気持ちの悪い世界だなぁ、と思いました。正直美術館で綴られた榊の思考より気持ち悪かったです。
これ以降に言及すると核心バレになっちゃうので控えます。代わりに装丁の話をば。
同人誌を作る際も装丁を楽しみの一つにしてる身なので本、特に小説のそれは割と見るんですが、本作のそれはめちゃくちゃいいなと思いました。デザインやチョイスするアイテム、口絵達がこの作品の世界観を的確に表現してて素敵です。ハードカバーで正解と思ったのも、本作が標本をモチーフにしているからでした。カバー絵が蝶の標本を模しているので、表紙が板になっていると様になります。装丁でその本を表すのが大好きなので超しびれる。めっちゃ手痛いけどハードカバーで買ってよかった! めっちゃ手痛いけど!
めちゃくちゃおもしろかったので他の作品も読んでみたいと思いました。唯一読んだ『告白』も大掃除で手放しちゃったけどもう一度買って読み直そうかな〜。これを読む間いい時間を送れました。ありがとう女王。そのうちまた世話になります。