旬四季SSログ01
好きなものはHigh×Joker、カラオケ、飴ちゃんに激辛料理、あとはファッション。嫌いなものは……何といっても、勉強だ。勉強なんてしててもテンション上がんないし、つまんないし。イギっていうのを感じなかったから何度も逃げまくっていたけど、絶対に勉強させる番人を抱えたHigh×Jokerでそんなことは許されない。勉強に関してはとにかくムチ、ムチ、ムチな番人は、今日も教科書を片手にオレの背後からプレッシャーをかけていた。
「四季くん、手が止まってますよ」
「ひぃ……ごめんなさい、わかんないっす……」
「そんなに怯えなくても……それを解決するために、僕がついてるんですよ」
勉強の番人ことジュンっちは、困ったような……それとも呆れたような? 顔で言う。どうやらオレが感じていたプレッシャーは気のせいだったみたいで、ジュンっちの目に威圧感はこもっていない。そのことに一瞬ホッとしたけど、だからといって目の前の問題がとんでもなくゴツい事実は変わらない。物理とかいう名前の外国語は、雪道みたいにオレの目を滑って、頭の中に留まってくれないのだ。でもジュンっちにとっては簡単に読める日本語みたいで、これをこうしてああして、とスラスラ計算式を組み立てていく。ペン先から生まれるそれは、まるで魔法みたいだ。前に魔法使いの格好をしていたけど、案外ガチで魔法が使えるのかもしれない。ササッと解き進めたジュンっちは、得意気に最後の単語にアンダーラインを引いた。
「良いですか? これはこの公式を使うんです。教科書はここのページです。まずは……」
ジュンっちは手にしていた教科書をパラパラとめくって、オレが躓いている単元を開いて見せる。あー、もう。これを見るだけで急激に眠気が襲ってくる。早速寝ぼけようとしている脳みそは、お気に入りのくまっち蛍光ペンの発色が最強にイケてるってことしか理解してくれない。多分ジュンっちにもそれが伝わっているんだろう。オレのどうしようもないくらいバカな頭でも何とか理解できるようにと、必死に言葉を選んで説明してくれている。
せっかくジュンっちが面倒を見てくれてるんだ。それに応えたいという気持ちはあるんだけど、体がそれに追いついてくれない。まずは日々の習慣として定着してしまった、勉強イコール眠いという公式を忘れることから始めないといけないのだ。オレは自分に喝を入れるために、手の甲をつねりながらジュンっちの説明に耳をピッタリくっつけた。
「と……そうだ。ノートはありますか?」
「今日は物理あったから、リュックの中にあるはずっす。何で?」
「授業中に先生がコツを教えてくれるでしょう。それを振り返りながらなら四季くんのハードルも下がるかな、と思いまして。では失礼しますね」
本当にこの小さな先生は細かいところに気を配る。もうジュンっちの背中から、後光が差しているような気さえした。番人なんて思ってゴメン、と心の中で謝っていると、オレのリュックからノートを見つけたジュンっちが表紙を開く。けど……あれ、何かジュンっちの顔、だんだん険しくなってるような……?
「君が全然覚えられない理由が、よくわかりますね」
「へ?」
「四季くん。ノートというのは黒板を板書したり、先生のアドバイスをメモするためのものなんですよ。それを何ですか、この前衛的なノートは」
「え……別に変なものは書いて……あっ」
ジュンっちは中身をオレに向ける。そのページには、罫線を切り裂くように引かれたガッタガタの線がはっきりと。その線は文字からじわじわと伸びて、不安定な軌道を辿ったかと思うと徐々に薄まり、最後はブツリと切れている。ヤバい。これは、完全に。
「さぞ寝心地の良い授業だったんでしょうねぇ……」
「あっ! いや、ちがっ! 机って結構キツイっすよ! 起きた時背中とかちょーバッキバキになるし……」
「そんなことは覚える必要ありません! 勉強以前に、君はまずノートの取り方を覚えなさい!」
「ひっ……ひー! ごめんなさいっすー!」
怒りのオーラをまとったジュンっちが、目をひん剥いて叱り始める。でも悪いのは一〇〇パーオレだから言い訳もできない。隠滅できない物的証拠を目の前に、オレは肩を縮こまらせる。
前言撤回。やっぱりジュンっち先生は、ひたすらムチの恐ろしい番人だ!
「四季くん、手が止まってますよ」
「ひぃ……ごめんなさい、わかんないっす……」
「そんなに怯えなくても……それを解決するために、僕がついてるんですよ」
勉強の番人ことジュンっちは、困ったような……それとも呆れたような? 顔で言う。どうやらオレが感じていたプレッシャーは気のせいだったみたいで、ジュンっちの目に威圧感はこもっていない。そのことに一瞬ホッとしたけど、だからといって目の前の問題がとんでもなくゴツい事実は変わらない。物理とかいう名前の外国語は、雪道みたいにオレの目を滑って、頭の中に留まってくれないのだ。でもジュンっちにとっては簡単に読める日本語みたいで、これをこうしてああして、とスラスラ計算式を組み立てていく。ペン先から生まれるそれは、まるで魔法みたいだ。前に魔法使いの格好をしていたけど、案外ガチで魔法が使えるのかもしれない。ササッと解き進めたジュンっちは、得意気に最後の単語にアンダーラインを引いた。
「良いですか? これはこの公式を使うんです。教科書はここのページです。まずは……」
ジュンっちは手にしていた教科書をパラパラとめくって、オレが躓いている単元を開いて見せる。あー、もう。これを見るだけで急激に眠気が襲ってくる。早速寝ぼけようとしている脳みそは、お気に入りのくまっち蛍光ペンの発色が最強にイケてるってことしか理解してくれない。多分ジュンっちにもそれが伝わっているんだろう。オレのどうしようもないくらいバカな頭でも何とか理解できるようにと、必死に言葉を選んで説明してくれている。
せっかくジュンっちが面倒を見てくれてるんだ。それに応えたいという気持ちはあるんだけど、体がそれに追いついてくれない。まずは日々の習慣として定着してしまった、勉強イコール眠いという公式を忘れることから始めないといけないのだ。オレは自分に喝を入れるために、手の甲をつねりながらジュンっちの説明に耳をピッタリくっつけた。
「と……そうだ。ノートはありますか?」
「今日は物理あったから、リュックの中にあるはずっす。何で?」
「授業中に先生がコツを教えてくれるでしょう。それを振り返りながらなら四季くんのハードルも下がるかな、と思いまして。では失礼しますね」
本当にこの小さな先生は細かいところに気を配る。もうジュンっちの背中から、後光が差しているような気さえした。番人なんて思ってゴメン、と心の中で謝っていると、オレのリュックからノートを見つけたジュンっちが表紙を開く。けど……あれ、何かジュンっちの顔、だんだん険しくなってるような……?
「君が全然覚えられない理由が、よくわかりますね」
「へ?」
「四季くん。ノートというのは黒板を板書したり、先生のアドバイスをメモするためのものなんですよ。それを何ですか、この前衛的なノートは」
「え……別に変なものは書いて……あっ」
ジュンっちは中身をオレに向ける。そのページには、罫線を切り裂くように引かれたガッタガタの線がはっきりと。その線は文字からじわじわと伸びて、不安定な軌道を辿ったかと思うと徐々に薄まり、最後はブツリと切れている。ヤバい。これは、完全に。
「さぞ寝心地の良い授業だったんでしょうねぇ……」
「あっ! いや、ちがっ! 机って結構キツイっすよ! 起きた時背中とかちょーバッキバキになるし……」
「そんなことは覚える必要ありません! 勉強以前に、君はまずノートの取り方を覚えなさい!」
「ひっ……ひー! ごめんなさいっすー!」
怒りのオーラをまとったジュンっちが、目をひん剥いて叱り始める。でも悪いのは一〇〇パーオレだから言い訳もできない。隠滅できない物的証拠を目の前に、オレは肩を縮こまらせる。
前言撤回。やっぱりジュンっち先生は、ひたすらムチの恐ろしい番人だ!