旬四季SSログ01
「自分のものを着た方が良いと思います」
テレビの音に混じりながら、ジュンっちが冷めた声で言う。振っておいてなんだけど、あまりにも予想通りの答えにオレは微妙な気分になった。
「絶対そう言うと思ったっす……」
「なら聞かないでくださいよ。そもそも質問の意図もわかりませんし……」
「違うじゃないっすかー! こういうドキドキなシチュエーションを想像しながら語るのが楽しいんすよ!」
「他を当たってください。ハヤトなら好きなんじゃないですか? そういう色恋系の話題は」
「ハヤトっちとはもうした! ハイパー盛り上がったっす!」
「だったらそれで満足したらどうですか」
つっけんどんな態度のジュンっちは、頑固にこの話を拒否し続ける。知ってる。こういうの、ニベモナイって言うんでしょ。この前放送したドラマの中でジュンっちが使ってた。どういう意味? って聞いたら無言で辞書を差し出されたことも、よーっく覚えてる。細かい字がビッシリ詰まった紙にイヤイヤ言ってたら「君が好きな雑誌にだって、これくらい小さな字が詰まっているでしょう」って冷たくあしらわれたことも。ホント、オレたちって考えが合わないなってその時はものスゴく実感した。
「ハヤトっちとはしてもジュンっちとはまだじゃないっすかー。オレはジュンっちとお喋りしたいんす」
「なら話題はもう少し選んでほしいんですが……」
「ほら、最近よくファッションの話するじゃないっすか。その流れでついでに……みたいな?」
「さすがにファッションとその彼シャツとやらが同じカテゴリーでないことは、僕にだって察しがつきますよ。自分が着るのと彼女に着てもらうのとでは違うじゃないですか」
「だからこそキュンってするんじゃないっすかー! いつも自分が着てる服を彼女に着せたらブッカブカで……っていうのが可愛いんすよ! 特別感たっぷりなのが良いんす!」
「はぁ……?」
「ところでジュンっち、オレ今シャツを着てるんすけど……」
「ぜっったいに嫌です」
「まだ何も言ってないんすけど!」
ちょっと前に買ってからヘビロテ中のカッターシャツを摘んで、ジュンっちの方をチラ見。でもオレが続きを言う前に何かを感じ取ったジュンっちは、今日イチ嫌そうな顔で即答した。
「今の流れでわからないはずないでしょう。嫌ですよ、何でわざわざ四季くんとの体格差を痛感しなきゃいけないんですか」
「うー……じゃあオレがジュンっちのを着るっていうのは……」
「嫌です。大人しく自分の服を着てください」
「ぶー」
「養豚場に送りつけますよ」
「やめて!」
さすがに養豚場はひどい。今日のジュンっち、やけに言葉が鋭いよ。そんなにこの話題は、ジュンっちにとって嫌なものだったのかな。せっかく久々のふたりっきりだし、お家デートっぽくまったりお喋りをしたかったのに。表情の読めないジュンっちを前にしたオレの心はすっかり萎んでいた。
「……人と服を貸し借りするよりは、同じものを身につける方が良いな、って思います」
「え……?」
「僕たちは好みも違いますから、お互いが納得いくものがあるかはわかりませんが……そういうものなら、悪くはないかな、と」
小さい声で、ボソボソ。でも隣にピッタリ座ってるオレにはよく聞こえる。さっきまでは全然読めなかったジュンっちの顔には、今、少し照れくさそうなピンク色が。思わず言葉を失ってその様子をじーっと見ていると、じわじわ滲んでいたピンク色がボフッと全体に爆発した。
「何ですか、人の顔をジロジロと!」
「えっ、だって、それって」
「〜……っ! 次のデートのお誘いですよ! 悪いですか⁉︎」
「……もー、何それ!」
この流れでそれって、そんなの読めるわけないじゃないっすか! でもそんな上っ面の文句より、もっと奥から溢れるこの気持ちの方が大事。ジュンっちの胸に目がけて思いっきりダイブをすると、鼻の中にジュンっちの匂いが飛び込んだ。
ジュンっちがいつも着ている、多分お気に入りのデザインシャツ。鮮やかな青に染まったそれに頬擦りをしながら、やっぱりこれはジュンっちが着ているのが一番カッコイイって実感した。
テレビの音に混じりながら、ジュンっちが冷めた声で言う。振っておいてなんだけど、あまりにも予想通りの答えにオレは微妙な気分になった。
「絶対そう言うと思ったっす……」
「なら聞かないでくださいよ。そもそも質問の意図もわかりませんし……」
「違うじゃないっすかー! こういうドキドキなシチュエーションを想像しながら語るのが楽しいんすよ!」
「他を当たってください。ハヤトなら好きなんじゃないですか? そういう色恋系の話題は」
「ハヤトっちとはもうした! ハイパー盛り上がったっす!」
「だったらそれで満足したらどうですか」
つっけんどんな態度のジュンっちは、頑固にこの話を拒否し続ける。知ってる。こういうの、ニベモナイって言うんでしょ。この前放送したドラマの中でジュンっちが使ってた。どういう意味? って聞いたら無言で辞書を差し出されたことも、よーっく覚えてる。細かい字がビッシリ詰まった紙にイヤイヤ言ってたら「君が好きな雑誌にだって、これくらい小さな字が詰まっているでしょう」って冷たくあしらわれたことも。ホント、オレたちって考えが合わないなってその時はものスゴく実感した。
「ハヤトっちとはしてもジュンっちとはまだじゃないっすかー。オレはジュンっちとお喋りしたいんす」
「なら話題はもう少し選んでほしいんですが……」
「ほら、最近よくファッションの話するじゃないっすか。その流れでついでに……みたいな?」
「さすがにファッションとその彼シャツとやらが同じカテゴリーでないことは、僕にだって察しがつきますよ。自分が着るのと彼女に着てもらうのとでは違うじゃないですか」
「だからこそキュンってするんじゃないっすかー! いつも自分が着てる服を彼女に着せたらブッカブカで……っていうのが可愛いんすよ! 特別感たっぷりなのが良いんす!」
「はぁ……?」
「ところでジュンっち、オレ今シャツを着てるんすけど……」
「ぜっったいに嫌です」
「まだ何も言ってないんすけど!」
ちょっと前に買ってからヘビロテ中のカッターシャツを摘んで、ジュンっちの方をチラ見。でもオレが続きを言う前に何かを感じ取ったジュンっちは、今日イチ嫌そうな顔で即答した。
「今の流れでわからないはずないでしょう。嫌ですよ、何でわざわざ四季くんとの体格差を痛感しなきゃいけないんですか」
「うー……じゃあオレがジュンっちのを着るっていうのは……」
「嫌です。大人しく自分の服を着てください」
「ぶー」
「養豚場に送りつけますよ」
「やめて!」
さすがに養豚場はひどい。今日のジュンっち、やけに言葉が鋭いよ。そんなにこの話題は、ジュンっちにとって嫌なものだったのかな。せっかく久々のふたりっきりだし、お家デートっぽくまったりお喋りをしたかったのに。表情の読めないジュンっちを前にしたオレの心はすっかり萎んでいた。
「……人と服を貸し借りするよりは、同じものを身につける方が良いな、って思います」
「え……?」
「僕たちは好みも違いますから、お互いが納得いくものがあるかはわかりませんが……そういうものなら、悪くはないかな、と」
小さい声で、ボソボソ。でも隣にピッタリ座ってるオレにはよく聞こえる。さっきまでは全然読めなかったジュンっちの顔には、今、少し照れくさそうなピンク色が。思わず言葉を失ってその様子をじーっと見ていると、じわじわ滲んでいたピンク色がボフッと全体に爆発した。
「何ですか、人の顔をジロジロと!」
「えっ、だって、それって」
「〜……っ! 次のデートのお誘いですよ! 悪いですか⁉︎」
「……もー、何それ!」
この流れでそれって、そんなの読めるわけないじゃないっすか! でもそんな上っ面の文句より、もっと奥から溢れるこの気持ちの方が大事。ジュンっちの胸に目がけて思いっきりダイブをすると、鼻の中にジュンっちの匂いが飛び込んだ。
ジュンっちがいつも着ている、多分お気に入りのデザインシャツ。鮮やかな青に染まったそれに頬擦りをしながら、やっぱりこれはジュンっちが着ているのが一番カッコイイって実感した。