スキお礼SS
朝は少し肌寒い。それが定説となり始める、秋を纏った今朝が今日も変わりなく訪れた。ひやりと温い空気に混じった仄かな匂いを辿った旬は、つい先刻まで人がいたであろうダイニングへ足を入れる。
そこから見える位置にあるラックには、まだ水を滴らせた調理道具たち。キッチンには曇りを被った味噌汁、卵焼き。そしてここ数日の食卓でレギュラー入りしているおひたしがまばらに陳列されていた。これを用意したであろう人物の昨晩の言葉、「明日は共演者の人たちとモーニングの約束をしてるっす!」。それらが導く答えは、つまり。
「わざわざ作ってくれたのか、四季くん……」
今日丸々オフの旬が、ここまでの道程で考えていた一日の予定の一つが早速潰れた。しかしそれは決して不快でない。きっと、朝くらいはのんびり食事を楽しんでほしいという四季の気遣いがこもっているのだから。まだ火の温かみを忘れていない朝食は、秋に冷えた旬の心をそっと包んだ。
四季の労いを受け取ろうと卵焼きが乗った平皿に手を伸ばす。そこで旬は、初めてラップの上に貼り付いた白い紙に意識が向いた。そこには見慣れた自体でこう綴られている。
『おはようジュンっち! 早起きしたんで朝ご飯作っておいたっす。ご飯は七時に炊けるっす。自分でよそって食べてね』
そんな愛に溢れた三行。そして締めには、ピースサインを作る旬のデフォルメイラストも。隅々まで旬への想いに溢れたメモは、ここにあるものの中で一番暖かい。
さて、メモに記された七時は既に過ぎている。早速四季特製の朝食を堪能しようと、旬は炊飯器の前に立った。ボタンを押して、蓋を開けたら、白米の芳しい香りが鼻腔をくすぐ──ることはなかった。
「ぷっ……ちょっと、四季くん……!」
蓋の中には湯気なんて微塵もない。代わりにあったのは、外気と大差ない空気と、水に浸かったまま沈んだ米。その光景に全てを察した旬は思わず吹き出した。
そこから見える位置にあるラックには、まだ水を滴らせた調理道具たち。キッチンには曇りを被った味噌汁、卵焼き。そしてここ数日の食卓でレギュラー入りしているおひたしがまばらに陳列されていた。これを用意したであろう人物の昨晩の言葉、「明日は共演者の人たちとモーニングの約束をしてるっす!」。それらが導く答えは、つまり。
「わざわざ作ってくれたのか、四季くん……」
今日丸々オフの旬が、ここまでの道程で考えていた一日の予定の一つが早速潰れた。しかしそれは決して不快でない。きっと、朝くらいはのんびり食事を楽しんでほしいという四季の気遣いがこもっているのだから。まだ火の温かみを忘れていない朝食は、秋に冷えた旬の心をそっと包んだ。
四季の労いを受け取ろうと卵焼きが乗った平皿に手を伸ばす。そこで旬は、初めてラップの上に貼り付いた白い紙に意識が向いた。そこには見慣れた自体でこう綴られている。
『おはようジュンっち! 早起きしたんで朝ご飯作っておいたっす。ご飯は七時に炊けるっす。自分でよそって食べてね』
そんな愛に溢れた三行。そして締めには、ピースサインを作る旬のデフォルメイラストも。隅々まで旬への想いに溢れたメモは、ここにあるものの中で一番暖かい。
さて、メモに記された七時は既に過ぎている。早速四季特製の朝食を堪能しようと、旬は炊飯器の前に立った。ボタンを押して、蓋を開けたら、白米の芳しい香りが鼻腔をくすぐ──ることはなかった。
「ぷっ……ちょっと、四季くん……!」
蓋の中には湯気なんて微塵もない。代わりにあったのは、外気と大差ない空気と、水に浸かったまま沈んだ米。その光景に全てを察した旬は思わず吹き出した。