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君が報われて**しい


 世界はいつだって残酷だ。
 どんなに惨たらしく嘆かわしくとも、ただただ堪えて歩き続けるしかない。
 そのことを少年は身を以て知っている。


 互いの存在を確かめるように抱き合う男女。涙を浮かべるエルフの少女と、彼女に柔らかな眼差しを向ける魔王の男。
 少年は、まるで御伽噺のような光景を茫然と見つめながら、心のどこかでガラガラと崩れ落ちるものを感じた。
 積み上げた石が崩れていく感覚。今まで作り上げてきたものが、一瞬で台無しになるような、そんな喪失感に近い。
 それに気付く者はいない。誰もが黙って目の前の感動的な再会を見つめている。
 少年自身、理解を拒んでいるのか、その崩壊の正体を探ることができなかった。頭の中は真っ白で、立ち尽くしたまま、それでも目に映る光景だけは認識している。だからこそ余計に茫然とした。
 エルフの少女が少年の元へ駆け寄った。堪え切れぬ涙を拭いながらも嬉しげに微笑み、礼を言う。零れた涙がルビーとなって地面に散らばる。そこに、ただの涙が一滴落ちた。少女は気付かない。しかし顔を上げ、少年を見るや目を見開いた。
「あなたも、泣いているの?」
 その言葉に、少年は初めて気付く。
 少女がその頬に手を伸ばすよりも早く、少年が目元を手で覆い隠した。止め処なく零れてくる涙に唇を噛む。
 心配した踊り子と占い師の姉妹が寄り添い、それぞれ細い手を肩と背に置いた。宥めるような、慰めるようなそれらは、ひどく優しい。
「大丈夫、平気、だから」
 その場を繕うように、薄く笑って言葉を紡ぐ。泣きたくなどないのに。悔しさすら感じながら、一向に収まらない涙を忌々しく思った。
「ありがとう……」
 それを見ていたエルフの少女が祈るように胸元で手を組み、再び感謝を口にした。
 ああ、違うよ、違うんだよ。
 少年はそう否定したかったが、どうしても声にならなかった。誰かのための、目の前の少女のためではない涙が忌々しくて仕方がなかった。唇を噛み締めて、ただただ堪えるしかできない。
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