BSR

鳴き声

「そりゃあ楽しかったぜ。ずっと続いてほしいくらい、いい時間だった。……思えばあの瞬間が一番happyだったのかもしれねえな」
 政宗は夏らしい、暑く強い日差しに目を細めた。遠くから届いた蝉の声が微かに耳の奥で木霊している。
 煩わしさはない。しかし空虚だった。
 腫れ物を触るような面持ちで政宗を見据えていた慶次だったが、また前を向く頃には小さく笑っていた。されどそれはどこか辛そうで。
「好きだったんだな。その人のこと」
「……What?」
 思いも寄らない感想だった。つい顔を顰めるほどには、理解し難かった。空を仰いでいた顔を向ければ、慶次は慣れない異国の言葉に首を傾げる。
「どうしてそう思う」
「だって、あんた寂しそうだ」
 政宗は一瞬信じられないというように目を見開いた。だが思う節があったのか僅かに俯き、それから自嘲した。
「……そうだったのかもな」
 蝉の鳴き声にかき消されそうな政宗の声を、言葉を静かに飲み込んだ慶次は柔らかく苦笑した。
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