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childish wedding march


 降水確率は低いという予報は見事に外れた。運悪く予報を信じてしまったフィオナは、叩くような雨から逃げ帰ってくるなりジャケットを脱いだ。染み込んだ雨水が床に滴る。
 一方、共に外出したラウルもやはりジャケットを脱いだが、目をキョロキョロと当てもなく彷徨わせていた。
「どうかした?」
 そんな兄の様子に、フィオナは首を傾げる。
「あー、その……」
 何を言い淀んでいるのか。フィオナはますます不思議そうにラウルを見た。
 心なしか、兄の頬が赤い。
「…………前、隠せよ」
 ぽそりと注意され、目を丸くしたフィオナは僅かな沈黙の後、漸く理解したのか自然と顔を下に向けた。
 ジャケットを通り過ぎて染み込んだ雨水により、シャツまで濡れている。肌に貼り付いたそれは、身体や下着やらが浮き彫りになっていたのだ。
「…………」
 ラウルは更に気まずくなって、逃げ出したいと目を逸らす。
 そんな兄を余所に、あらまあと言わんばかりのフィオナが肌に貼り付くシャツを摘んで引っ張った。
「兄妹なんだから恥ずかしがることないじゃない」
 さらりと言い放つ妹に、未だに照れの抜け切らないラウルが眉を顰めた。
「そりゃそうだけど……お前なあ、そんなんじゃ嫁の貰い手もなくなるぞ?」
 それに対してもフィオナはまたさらりと、まるでお使いでも頼むような軽さで言い放った。
「その時はラウルが貰ってよ」
「ばっ……何言ってんだお前はっ」
「昔はお兄ちゃんのお嫁さんになる! って言ったら約束したくせに」
 勝ち誇ったように証言を突きつけられた。まさかそんな口約束を持ち出されるとは思っていなかったが、しかしラウルにも覚えのあることだった。
「子供の頃の話だろ! 大体、あれは嫌だって言ったらお前が泣き出したから頷いたんだよ!」
「でも承諾したのは事実よ。式はやっぱり六月に挙げて、その暁にはエクサランスに乗って帰りましょ、お兄ちゃんっ」
 語尾にハートマークでも付けそうなフィオナの笑みを見て、ラウルはからかわれているとわかる。溜息を吐いた。
「……その前に着替えよう。風邪引きそうだ。あと、チャペルの入口にエクサランスは置けないと思うぞ」
 言ってから、その光景やウェディング仕様のエクサランス、そしてそれを想像してしまった自分に後悔した。
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