DFF
セフィロスとティーダ
膝を抱えたティーダは近付く足音に気付いて、振り向かぬまま呟いた。
「ここって青空はないんだな」
通り過ぎ損ねたように、足音の主が立ち止まる。微かに揺れた長い銀髪が、ティーダの視界の端に引っかかった。
「曇り空ばっか」
「青空が見たいなら次元城にでも行くんだな」
「海の中から見たいんだ。綺麗だから」
端から興味がないセフィロスは蹲るティーダを面倒そうに見やる。縮こまる姿は寂しげで、親の帰りを、もしくは迎えを待つ子供に似ていた。
「……私は、青空は好かん」
「なんで」
「さあな。記憶にない」
子供の目に仄かな好奇心が灯る。向けられた青い瞳を、セフィロスは無碍に振り払うことができなかった。その海の色が似ているから。青空を切り取ったような、誰かの瞳を彷彿させる所為だ。
しかしその記憶にかかる雲が晴れることはない。姿も何も、ただ瞳の色だけが鮮明だった。後ろ髪を引かれるようなそれが煩わしく、重苦しい。
「嫌なことがあったのかも」
「何?」
「だって嫌いなんだろ? だったらそれは……いい思い出じゃなかったんだ」
ティーダは自嘲めいた笑みを浮かべた。まるで自分に言っているようだった。彼は愛しいとも憎いとも判じ難い瞳で海を見つめ直す。
自身の発言がどのような記憶に起因しているかなど知る由もない。だが明確に嫌悪しているかと言えばそうではないことを、セフィロスは自覚した。すると胸の痞えはますます大きくなる。要らぬ荷だと思う反面、捨て去れぬ気持ちがまだ残っている。僅かなそれを斬り捨てるのは、果たして容易いのか。それがわからない。
わかるのは、捨ててしまえば楽だということ。そうすれば海の深くに沈んでしまうくらい、誰も届かぬところへ行ける。静かな闇が私を待っているのだと。嘗て己が、或いは母が囁いたことのような気がした。
記憶の中の青空までもが、翳ってゆく。
膝を抱えたティーダは近付く足音に気付いて、振り向かぬまま呟いた。
「ここって青空はないんだな」
通り過ぎ損ねたように、足音の主が立ち止まる。微かに揺れた長い銀髪が、ティーダの視界の端に引っかかった。
「曇り空ばっか」
「青空が見たいなら次元城にでも行くんだな」
「海の中から見たいんだ。綺麗だから」
端から興味がないセフィロスは蹲るティーダを面倒そうに見やる。縮こまる姿は寂しげで、親の帰りを、もしくは迎えを待つ子供に似ていた。
「……私は、青空は好かん」
「なんで」
「さあな。記憶にない」
子供の目に仄かな好奇心が灯る。向けられた青い瞳を、セフィロスは無碍に振り払うことができなかった。その海の色が似ているから。青空を切り取ったような、誰かの瞳を彷彿させる所為だ。
しかしその記憶にかかる雲が晴れることはない。姿も何も、ただ瞳の色だけが鮮明だった。後ろ髪を引かれるようなそれが煩わしく、重苦しい。
「嫌なことがあったのかも」
「何?」
「だって嫌いなんだろ? だったらそれは……いい思い出じゃなかったんだ」
ティーダは自嘲めいた笑みを浮かべた。まるで自分に言っているようだった。彼は愛しいとも憎いとも判じ難い瞳で海を見つめ直す。
自身の発言がどのような記憶に起因しているかなど知る由もない。だが明確に嫌悪しているかと言えばそうではないことを、セフィロスは自覚した。すると胸の痞えはますます大きくなる。要らぬ荷だと思う反面、捨て去れぬ気持ちがまだ残っている。僅かなそれを斬り捨てるのは、果たして容易いのか。それがわからない。
わかるのは、捨ててしまえば楽だということ。そうすれば海の深くに沈んでしまうくらい、誰も届かぬところへ行ける。静かな闇が私を待っているのだと。嘗て己が、或いは母が囁いたことのような気がした。
記憶の中の青空までもが、翳ってゆく。
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