DFF

コンビネーション

 杖の先を床に突く。カツン、という小さな音は戦場の中に飲み込まれて誰の耳にも届かない。
 空で炎が燃え上がる。全身にそれを纏ったジェクトが標的たる戦士に迫り、その顔を乱暴に鷲掴む。ぐっと力を込めると猛鳥の捕食のように急降下し、その勢いと持ち前の力を以て地面に叩き付けた。
 するとその瞬間、それに呼応するかのように電光が走り、円陣が浮かび上がった。ジェクトは咄嗟に戦士から手を離し、滑るようにその檻から退く。同時に雷の球体が戦士を囲うと、間髪入れずに球体が弾け、一斉に爆発した。
 あーあ、とジェクトは少しばかりの同情を込めて爆心地を見やる。しかし特に何をするでもなく、頭を掻くと生死も確認せずにその場から立ち去る。
「なんだ、貴様にも少しは協調性とやらがあったのか」
「おめえが言うかあ? 今のは偶然だ、偶然。見りゃわかんだろ」
 自身の方へと歩いて来るジェクトに、皇帝は皮肉げな視線を寄越す。それに対し、ジェクトは至極つまらなそうに答えた。皇帝もまた、面白味のない反応を鼻先であしらう。
「貴様に戦略性を求めるだけ無駄というものか」
「あぁん? 馬鹿にすんなよおめえ。頭脳プレーくらいできんだぜ。ただ俺様は強過ぎてワンマンショーになっちまうからな、やる必要ねえのよ」
「ふん、一人芝居ばかりでは客も見飽きよう」
「そりゃねえな。皆、スターの大活躍が観たくてやって来んのさ」
 暗に自分がそうだと言うように、胸を張ってニヤリと笑う。皇帝は過剰なまでの自信に満ちた男の顔を冷めた眼差しで一瞥するも、嘲るような笑みを浮かべた。
 杖を掲げ、前方に光の紋章を作り出す。それを見たジェクトが片腕を軽く回した。
「あの程度では、歓声の一つも聞こえてこんな」
「へっ、これからだ……よっと!」
 拳を握り締め、踏み出した足に力を込めて駆け出していく。遠くなる背に鼻で笑いながら、また杖の先を床に突く。カツン、という小さな音はやはり戦場の中に飲み込まれていき、誰の耳にも届かない。
5/6ページ