DFF

祈りの歌

 微かに、鼻歌が聴こえる。
 巨大な剣が突き刺さった舞台に降り立てば、より耳に届いた。幻光虫という生命の光に紛れるようなそれに少し顔を顰める。冷めた瞳を巨大な剣の向こう側へ向けた。
「下手だな。聴くに耐えん」
 靴音を控えもせずに歩む。遮られた鼻歌の代わりに、舌打ちが返ってきた。
「悪かったな。そう言うてめえは上手いのかい」
 粗野で粗雑な声が巨大な剣の向こう側から発せられる。それを鼻で笑って、巨大な剣を背凭れに腕を組む。
「私が歌など歌うわけがなかろう。私は常に歌われる側だ」
「そうかよ」
 けっ、と男が吐き捨てると、不調和な沈黙が訪れる。
 その間も耐えず幻光虫は浮き上がり、天に届かぬ内に消えていく。循環とも言えるそれを目で追うのに飽いた頃、見計らったように、男がまた鼻歌を口遊み始めた。先と同じく調子外れの音程。
 お世辞でも上手いとは言えないそれに合わせて踊るように、幻光虫が不規則に揺れる。ゆらゆらと辿った道筋に、覚束ない光の跡が残る。
 やはりどれも天高くは昇っていかず、途中で空に溶けた。
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