ペルソナ

りせと完二

 強烈な日差しは夏らしいが、爽やかな気分ではなかった。
 折角の夏休み。日焼けは気になるが遊びに行きたい気持ちはある。けれど一人きりは、嫌だった。
 連絡した先輩には先約があると、静かな声で断られてしまった。携帯の画面をふてくされるように見つめて、結局は照明が切れると閉じた。
 完全な手持ち無沙汰を少しでも解消したくて、店先で打ち水をする。ホースから出る生温い水がまた暑苦しい。
 このままだらだらと今日を終えてしまうのは、なんだか嫌だ。一人で過ごしたいわけでもない。暑くて仕方ない。
 そう思いながら晴天を仰いだ、直後。
(……あれって)
 店から少し先、先輩よりも薄い髪色が目に入る。背高で体格の良い後ろ姿。
 呼び掛けるには遠くて、でも足を止めたくて、そこで思い付いたのは電話だ。指を通話ボタンへと滑らせる。
 表示された登録名は、完二。
 呼び出し音が一回、二回。すると見つめる後ろ姿は、携帯を取り出した。
(やっぱり)
 そのまま携帯を耳に当てる。呼び出し音が切れてすぐ、こちらから口を開く。
「そんなとこで何してるの? ヒマしてるの?」
『ああ? なんだいきなり』
 案の定、返ってきたのは完二のぶっきらぼうな声だった。柄の悪い調子は先輩に断られた鬱憤もあってか、癪に障る。
「いいから、ヒマって言いなさいよ」
『ヒマじゃねえ』
「じゃあなんで炎天下の中、一人で歩いてるの」
 完二の後ろ姿を軽く睨む。どうやら言葉を解せなかった彼は適当に返そうとして、だがはっとしたようにキョロキョロと辺りを見回した。
 そんな姿は滑稽で気分が良く、してやったりと、つい人の悪い笑みが浮かぶ。
「後ろ」
 振り向いた完二に手を振れば、ぷつりと切れる電話。文字通りあっと言う間もない。唇を尖らせていると、完二が大股で近付いてきた。
「やっぱりヒマなんじゃない」
「うっせえ」
 得意気に笑えば、完二は悪態をつくことも出来ずに顔を顰める。今度は彼が唇を尖らせて、そっぽを向く。
「私もヒマなの。すっごいヒマ。予定もないし、先輩にはフラれちゃったし」
 寂しさを含めれば、完二は気にするようにこちらを見た。
 晴天を背景にした彼の肩越しで、太陽が光っている。
「ね、私をデートに誘ってよ」
 上目遣いで言ってみた。
 そしたら、思考停止が解けた完二から素っ頓狂な声が飛び出した。
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