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おはよう恋心
ブーツの重い足音を気にして少し控えめに歩いてくる。それから、煙草のにおいが近付いてくるのを感じて、デイビットはテスカトリポカがやってきたことを知る。
けれど微睡んでいたせいで瞼を開けるのが億劫だった。大きなソファーに寝転がっていたって誰も咎めない。やれやれと呆れられることはあっても叱られることはないと知っているだけで、うとうとと眠りこけてしまいそうだった。
それを見て、テスカトリポカはやはり肩を竦めつつ笑った。そして身を屈めると頭を撫でて、額にキスを落とす。
「ただいま」
唇がそっと触れる。柔らかな声が囁く。
まるで眠り姫が目覚めるシーンを演じているみたいだと、デイビットは他人事のように思った。自分に向けられたそれがあまりにも穏やかだったものだから心地がよくて眠かった。そして胸の内にじんわりと溶けてからようやく驚いて、目を覚ます。
いきなりぱちりと開いた瞳にテスカトリポカも驚いたが、じっと見つめられる内に少し眉尻を下げた。
それがまたデイビットの度肝を抜いた。
「起こしちまったか」
他人を案じる優しい声音だ。だけど見つめ合うのが嬉しいと綻んでいる顔だ。気付いてしまった。
その正体に、気付いてしまった。
カッと頬が熱くなって目が回る。今まで気にならなかったものが気になってくる。顔の近さだとか、頭に触れる手だとか、見つめる瞳の奥だとか。忘れるのに困るものが急に増えた。
呆然としているデイビットにテスカトリポカが首を傾げる。内心を悟られたくなくて、デイビットは慌てて口を開く。
「お、おかえり」
「ああ。……どうした?」
額から頬に滑る手に、デイビットの心臓はいつになく高鳴った。
わかってやっているのか、いないのか。テスカトリポカは優しく問いかける。
しかしデイビットには答えようがなかった。
頬の火照りをどう隠せばいいのか、目覚めたばかりではそんなこともわからない。
ブーツの重い足音を気にして少し控えめに歩いてくる。それから、煙草のにおいが近付いてくるのを感じて、デイビットはテスカトリポカがやってきたことを知る。
けれど微睡んでいたせいで瞼を開けるのが億劫だった。大きなソファーに寝転がっていたって誰も咎めない。やれやれと呆れられることはあっても叱られることはないと知っているだけで、うとうとと眠りこけてしまいそうだった。
それを見て、テスカトリポカはやはり肩を竦めつつ笑った。そして身を屈めると頭を撫でて、額にキスを落とす。
「ただいま」
唇がそっと触れる。柔らかな声が囁く。
まるで眠り姫が目覚めるシーンを演じているみたいだと、デイビットは他人事のように思った。自分に向けられたそれがあまりにも穏やかだったものだから心地がよくて眠かった。そして胸の内にじんわりと溶けてからようやく驚いて、目を覚ます。
いきなりぱちりと開いた瞳にテスカトリポカも驚いたが、じっと見つめられる内に少し眉尻を下げた。
それがまたデイビットの度肝を抜いた。
「起こしちまったか」
他人を案じる優しい声音だ。だけど見つめ合うのが嬉しいと綻んでいる顔だ。気付いてしまった。
その正体に、気付いてしまった。
カッと頬が熱くなって目が回る。今まで気にならなかったものが気になってくる。顔の近さだとか、頭に触れる手だとか、見つめる瞳の奥だとか。忘れるのに困るものが急に増えた。
呆然としているデイビットにテスカトリポカが首を傾げる。内心を悟られたくなくて、デイビットは慌てて口を開く。
「お、おかえり」
「ああ。……どうした?」
額から頬に滑る手に、デイビットの心臓はいつになく高鳴った。
わかってやっているのか、いないのか。テスカトリポカは優しく問いかける。
しかしデイビットには答えようがなかった。
頬の火照りをどう隠せばいいのか、目覚めたばかりではそんなこともわからない。