友達(ぐだ金)
波の音を聞きながら海を眺め、自分がカルデアに来る前のことを思い出す。
高校に入って初めての夏休み。友達と自転車でただひたすら走って、気がついたら海にいた。二人して海だ!なんてはしゃいで服をびしゃびしゃにしながら水をかけあって遊んだな。
カルデアに来てからは友人は勿論、家族とも連絡はとれていない。
彼は元気だろうか。
ぼんやりと沈む太陽をながめる。ルルハワと俺の地元じゃ全く景色が違うけれども、なんだかあの日の光景と重なってじわりと涙が滲む。
おおい、と後ろから俺を呼ぶ声が聞こえる。ざくざくと砂を踏む音が近づいてくる。
鼻をすすって目を擦り振り向くと、綺麗な金髪が夕陽を浴びてキラキラと輝いていた。
「よっ大将。こんな所に居たのか。」
金時がにっかりと笑う。サングラス越しに薄く見える碧眼がまるで三日月みたいだ。
「うん。夕陽を観てたんだ。」
「おお、確かにこりゃ絶景だな。」
さらりと流れる髪をくしゃりと手で抑え海の方を向く金時の横顔は、全く似ていない筈の彼に似ていた。
そんな彼に見惚れていると、不意になんて顔してんだ、とぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。
「うわ!?」
「ハハ、男前が台無しだぜ。」
コツンと軽くおでこを小突かれる。俺は、一体どんな顔をしていたのだろう。
「まあ、その…寂しいっつーのはわかるぜ。けどよ、大将にはオレらが居るってこと忘れてんじゃねぇか?」
肩を組まれ、ほっぺたをむにむにと抓られる。
そういうんじゃないけど…と、もごもご返すと、金時が優しく笑いかける。
「いいか?オレらはサーヴァントとマスターっつー関係ではあるが、それ以上でもあるだろ?」
ぽかん、と金時を見つめると気恥しそうにぽりぽりと頬をかいて俯き、つまりはよ…と続ける。
「ダチだろ。オレら。」
耳まで真っ赤な金時を見るなり、ぶわっと体温が上がるのを感じた。そうか、俺たちは友達なんだ。どくんどくんと心臓が騒ぎ立てる。
「そ、っか…友達だ…。友達だな…ははは…」
「ダチでもねー奴と2ケツなんてしねーだろ?」
「うん、うん…お揃いのネックレスだって、くれたもんな…そうだよ、友達だったんだ…俺ら…」
さっき堪えた涙がぼろぼろと零れ落ちる。
ちょ、泣くなよ!オレが泣かしたみたいジャン!?と金時が焦ってタオルを渡してくれた。
えへえへと気持ち悪い声を漏らして笑う。まだ顔が熱い。
さっきまで感じていた寂しさはいつの間にか自分の心からいなくなっていた。
「マスター!坂田君!支度が出来たぞ!」
遠くから聞こえるエミヤの声に今行く!と元気よく返事をすると、俺達は仲良く浜辺を後にしたのだった。
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