今回は
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楽しい時はあっという間に過ぎるもので、本日の飲み会はお開きの時間だ。他の人たちも交えてまたやろう、という言葉に嬉しくなる。また会える、というだけのことが、こんなに嬉しいなんて。
アシリパさんは杉元さんが送って行ってあげるらしい。酔っているし半分寝ているしで心配だったけれど、それなら安心だ。ついでに白石さんもべろべろだったので、こちらは谷垣さんが担当してくれた。各々挨拶を交わして、それぞれ帰っていく。
残った私と尾形さんは必然的に、一緒に帰る流れとなった。
「家まで送る」
「え、いいですよそこそこ遠いし……時間も遅いですし」
「アホか。だからだろ」
……そりゃそうだ。完全に墓穴掘った。とはいえ未成年が一人で夜のすすきのを歩くのは正直少しこわかったので、有難くお願いすることにする。
「家どこだ」
「学校の北です」
「そこそこ遠いじゃねえか」
「でも駅からはまあまあ近いので、電車乗ればすぐですよ」
「めんどくせえ。タクシー拾うぞ」
「えっいやそんなにお金ないです!」
「払うに決まってんだろバカ」
アホの次はバカ頂きました。すいませんほんと。貧乏大学生はそうそうタクシーなど乗れないのだから許して欲しい。そもそもいくらかかるのかもよくわからない。成人一歩手前でも、社会人とは違うのだ。
というか、実は今回飲み会の代金も払っていない。私とアシリパさんは学生だからとのことで、社会人であらせられる皆様が代わりに出してくれた。ありがとうございます……本当にありがたい。(ちなみに白石さんもその流れに乗っかろうとしていたが、杉元さんが財布から強制的に抜いていた。)
なんだかもう、すごく年の差を感じてしまう。再会してから空回りばっかりだし。再会してから?あれ、ずっと前からこんな感じだったかもしれない。迷惑をかけてばかり。
……年の差?そういえば、今の尾形さんは何歳なんだろう。以前は気にしたこともなかったけれど、今回はそうもいかなそうだ。あれ、というか、そもそも
「私達って、……付き合ってるんですか?」
「……」
そもそも、そもそもである。今日会ったのは学校で再会して以来初めてだし、LINEは知ってるけど特に連絡もないし。彼から何か、こう、言葉を頂いたわけでもないし。何度か『俺の』という発言を受けてはいるけれど、意味は測りかねる。
恋愛経験がそれほどあるわけでもなく、今がどういう状況なのか、わからなくなってしまった。
「尾形さん?」
「……」
だんまりである。考え込んでいる、という方が正しいかもしれない。少し大きな通りに出たところで立ち止まってしまったので、隣に並んで立つ。タクシー、そこに停まってますけど。
ドアを開けて客を待つタクシー。向かいの店の派手な看板。横断歩道を渡る酔っ払いのサラリーマン。コンビニの前のカップル。目の前を通り過ぎたちょっとこわそうな人たち。変わる信号。動き出す車。大きな笑い声。電話する人。ガードレールの端の錆びたところ。その根本に生えている草。転がる空き缶。
「華」
どうやら言葉がまとまったらしい。隣を向くと、二つの目がしっかりこちらを見ていた。ネオンが反射しているはずなのに、やっぱり深く黒い瞳。
「結婚する」
「…………誰が?」
「俺が。お前と」
予想の遥か上を撃ち抜かれた。
「するぞ、今回は」
尾形さんは至極真面目な、というかいつもの無表情だ。すべての表情筋がお休みしているみたい。
「……酔ってない、ですよね?」
「あの程度じゃ酔わん」
「ですよね……うん……」
どうしよう。なんて返したらいいんだろう。え、なんて返したらいいの?こういう場合どんな顔したらいいの?誰か教えて。正解を教えてください。助けて。ていうか全然質問の答えになってなくない?
「まあ、卒業したらな」
「……で、ですよね!そうですよね!」
「俺は今すぐでも構わんが」
「…………」
今度は私が考え込む番だった。
そりゃあ、"前"は随分と長く一緒に過ごしていたのだし、お互いのことは良くわかっているつもりだ。"こちら"で会ったのは二回目だけれど、勿論気持ちとしてはそれ以上の関係で。
まして、"前"の私達にはできなかった選択。私も、きっと尾形さんも、思いはありながら選ぶことが出来なかった未来だった。それに私だって、今は普通の女の子だ。
結婚、だなんて。そんなの、したくないわけがない。
だから、ずるい。
結婚したいでも、結婚しようでもなく、結婚する。私がNOと言わないことはわかっていると。そういうことですか。どんな自信ですか。その通りなのがなんとも悔しい。
でもね、それ、やっぱり私の質問の答えにはなってませんからね。第一私まだ、尾形さんの気持ち聞いてないですよ。その上私はまだ子供で、今回の私達は、まだ出会ったばかりだ。
もう、全部が不本意だ。だけどどれも、不思議と嫌ではない。私はやっぱりこの人に適わないし、頭が上がらない。仕方がない。
つまるところ、惚れた方が負けなのだ。
「こ……恋人からでお願いします」
尾形さんが満足そうに笑ったので、とりあえず正解だったらしい。
アシリパさんは杉元さんが送って行ってあげるらしい。酔っているし半分寝ているしで心配だったけれど、それなら安心だ。ついでに白石さんもべろべろだったので、こちらは谷垣さんが担当してくれた。各々挨拶を交わして、それぞれ帰っていく。
残った私と尾形さんは必然的に、一緒に帰る流れとなった。
「家まで送る」
「え、いいですよそこそこ遠いし……時間も遅いですし」
「アホか。だからだろ」
……そりゃそうだ。完全に墓穴掘った。とはいえ未成年が一人で夜のすすきのを歩くのは正直少しこわかったので、有難くお願いすることにする。
「家どこだ」
「学校の北です」
「そこそこ遠いじゃねえか」
「でも駅からはまあまあ近いので、電車乗ればすぐですよ」
「めんどくせえ。タクシー拾うぞ」
「えっいやそんなにお金ないです!」
「払うに決まってんだろバカ」
アホの次はバカ頂きました。すいませんほんと。貧乏大学生はそうそうタクシーなど乗れないのだから許して欲しい。そもそもいくらかかるのかもよくわからない。成人一歩手前でも、社会人とは違うのだ。
というか、実は今回飲み会の代金も払っていない。私とアシリパさんは学生だからとのことで、社会人であらせられる皆様が代わりに出してくれた。ありがとうございます……本当にありがたい。(ちなみに白石さんもその流れに乗っかろうとしていたが、杉元さんが財布から強制的に抜いていた。)
なんだかもう、すごく年の差を感じてしまう。再会してから空回りばっかりだし。再会してから?あれ、ずっと前からこんな感じだったかもしれない。迷惑をかけてばかり。
……年の差?そういえば、今の尾形さんは何歳なんだろう。以前は気にしたこともなかったけれど、今回はそうもいかなそうだ。あれ、というか、そもそも
「私達って、……付き合ってるんですか?」
「……」
そもそも、そもそもである。今日会ったのは学校で再会して以来初めてだし、LINEは知ってるけど特に連絡もないし。彼から何か、こう、言葉を頂いたわけでもないし。何度か『俺の』という発言を受けてはいるけれど、意味は測りかねる。
恋愛経験がそれほどあるわけでもなく、今がどういう状況なのか、わからなくなってしまった。
「尾形さん?」
「……」
だんまりである。考え込んでいる、という方が正しいかもしれない。少し大きな通りに出たところで立ち止まってしまったので、隣に並んで立つ。タクシー、そこに停まってますけど。
ドアを開けて客を待つタクシー。向かいの店の派手な看板。横断歩道を渡る酔っ払いのサラリーマン。コンビニの前のカップル。目の前を通り過ぎたちょっとこわそうな人たち。変わる信号。動き出す車。大きな笑い声。電話する人。ガードレールの端の錆びたところ。その根本に生えている草。転がる空き缶。
「華」
どうやら言葉がまとまったらしい。隣を向くと、二つの目がしっかりこちらを見ていた。ネオンが反射しているはずなのに、やっぱり深く黒い瞳。
「結婚する」
「…………誰が?」
「俺が。お前と」
予想の遥か上を撃ち抜かれた。
「するぞ、今回は」
尾形さんは至極真面目な、というかいつもの無表情だ。すべての表情筋がお休みしているみたい。
「……酔ってない、ですよね?」
「あの程度じゃ酔わん」
「ですよね……うん……」
どうしよう。なんて返したらいいんだろう。え、なんて返したらいいの?こういう場合どんな顔したらいいの?誰か教えて。正解を教えてください。助けて。ていうか全然質問の答えになってなくない?
「まあ、卒業したらな」
「……で、ですよね!そうですよね!」
「俺は今すぐでも構わんが」
「…………」
今度は私が考え込む番だった。
そりゃあ、"前"は随分と長く一緒に過ごしていたのだし、お互いのことは良くわかっているつもりだ。"こちら"で会ったのは二回目だけれど、勿論気持ちとしてはそれ以上の関係で。
まして、"前"の私達にはできなかった選択。私も、きっと尾形さんも、思いはありながら選ぶことが出来なかった未来だった。それに私だって、今は普通の女の子だ。
結婚、だなんて。そんなの、したくないわけがない。
だから、ずるい。
結婚したいでも、結婚しようでもなく、結婚する。私がNOと言わないことはわかっていると。そういうことですか。どんな自信ですか。その通りなのがなんとも悔しい。
でもね、それ、やっぱり私の質問の答えにはなってませんからね。第一私まだ、尾形さんの気持ち聞いてないですよ。その上私はまだ子供で、今回の私達は、まだ出会ったばかりだ。
もう、全部が不本意だ。だけどどれも、不思議と嫌ではない。私はやっぱりこの人に適わないし、頭が上がらない。仕方がない。
つまるところ、惚れた方が負けなのだ。
「こ……恋人からでお願いします」
尾形さんが満足そうに笑ったので、とりあえず正解だったらしい。