今回は
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「おお!何か不思議な食感だ!噛むとほのかに甘い!うまい!」
「タピオカって初めて食べました!おいしい!」
「でしょでしょ〜!?よかったぁ〜気に入ってくれて!」
大学生の長い長い夏休みが終わる頃、流行りものに疎い私とアシリパさんのために、杉元さんがタピオカドリンクの美味しいお店に連れてきてくれた。
もちもちとタピオカを頬張るアシリパさんと、並ぶ価値あるよね〜!うふふ!とすっかりキラキラ乙女モードの杉元さん。どっちもかわいくって癒やされる。
「それはさておき……なんで尾形もいるんだよ!」
「……」
「そんでタピオカ似合わねーよお前!なんで来たんだよ!」
「杉元も別に似合ってないぞ」
「あはは……」
杉元さんがビシィッと指さした先、ガタイのいいツーブロックの男性が無表情でかわいらしいパッケージのタピオカを吸う姿は、アンバランスで面白い。
私がアシリパさんと杉元さんと遊びに行くと言ったら、丁度お休みだったらしい尾形さんが急遽合流したので、杉元さんは若干拗ねていた。
一瞬考えごとをするように右上を見た尾形さんが、パステルカラーのストローから口を離す。
「彼氏だから」
「ん"っ」
「なんだ華大丈夫か!?」
むせた。アシリパさんが背中をさすってくれた。杉元さんに笑われたし、尾形さんには睨まれた。
「あ?彼氏だろうが」
「まあ、はい……そうなんですけど……」
いやわかるでしょ。わかってくださいよ。少なくとも自分で彼氏とか言うキャラじゃないじゃないですかあなた。びっくりしましたよ。
「今日は"だぶるでーと"だからな!ケンカするなよ杉元、尾形」
「ダブルデートって……意味わかってんの?アシリパさぁん」
「多分わかってなさそうですね……」
「シングルデートだろ」
「華さんに触るんじゃねえよクソ尾形、汚れるから」
「てめぇに文句言われる筋合いねぇよ、彼氏だから」
「もぉ〜〜」
「ケンカするなよ!!」
何かといがみ合う男性陣を引きずってタピオカ屋を出たあとは、これまた流行りの、泣けると噂の犬の映画を観に行った。
ぐずぐずになって泣いている私を見て尾形さんは眉間にしわを寄せたけど、杉元さんは私以上に泣いていた。アシリパさんは、どちらかと言うと売店で買った変わった味のポップコーンアソートに夢中らしい。抹茶のポップコーンとか、微妙に味の想像がつかない。私は無難にキャラメル味をつまんでいた。
それから満を持して、我がアルバイト先である喫茶店に向かいます!
「マスターお手製のお菓子が本当に美味しくて!私は特にマドレーヌが大好きなんです。タピオカから甘いものばっかりですけど……あっ、ポップコーンも甘かったですね!?」
「甘いもの大好きだよぉ」
「華のアルバイト先、どんな所か楽しみだ」
「甘いもの以外も美味しいですから!ね、尾形さん」
「なんでもいい」
北海道はもう大分気温が下がって、秋の風が心地良い。札幌駅から北に向かって皆でゆっくり歩いていく。またブツブツと言い争いを始める二人と、それを叱るアシリパさん。今世の二人はなんと言うか、仲が良いやら悪いやら……喧嘩するほど、なんて言うけれど。
"前の"二人のことは、正直なところ、あまり思い出したくない。
不意に肩に回された尾形さんの腕から伝わる体温が、やけにあたたかく感じた。
「お店の中で喧嘩したら嫌ですからね」
「別に喧嘩はしてない。こいつがやたら吠えてくるだけだ」
「そういう刺のある言い方するからですよ。大人なのに」
「…………」
少しは反省しているのか、わからないけど、ぐっと頭を寄せられた。頭の横をくっつけてゴリゴリされる。涼しくなってきて、スキンシップが増えた気がするなあ。たまにこの人のことを大きな猫みたいだと思う。叱られてしゅんとしている猫だと思えばかわいらしいものだ。
……いや、叱られたことをなあなあに済まそうとしているだけかもしれないな、これは。危ない危ない。まんまと絆されるところだった。隣では杉元さんがアシリパさんに叱られてしゅんとしていた。
そんなこんなで店に着いたので、尾形さんを引き剥がす。店内を覗き見て、特に混んでいないことを確認してからドアを開いた。ここまで来てUターンで帰ることはないけど、混んでいるところに入るのは少し申し訳なさがあるのだ。
カランカラン、と聞き慣れた入店ベルが響く。
「マスターこんにちは」
「いらっしゃい、待ってたよ」
「あっ、今日マドレーヌですか!?」
「約束だからね」
「わー!嬉しいです!」
前もって今日友人を連れてきますと伝えていたから、なんと私の大好きなマドレーヌを作ってくれたらしい。嬉しい。マスターの優しさを噛みしめる。
「おお!オシャレな店だな!」
「うふふふ、そうでしょうそうでしょう!」
続いて入ってきたアシリパさんの反応に更に嬉しくなる。私のお店じゃないけど、大好きなものを褒められるのは嬉しいものです。うふふ。
「マスターこちらが私の友人で、皆さんこちらが……え、どうしました?」
「華さん、そいつ…………覚えてないの?」
こちらで会ってから見ていなかった、杉元さんのこんな顔は。こんな怖い顔は。ああそうだ私は、この顔が嫌いで、嫌いで、ずっと笑っていて欲しいと思ったんだ。地を這うような低い声に寒気がする。
尾形さんが無言で私の腕を引いた。心做しか表情がいつもより険しい。触れた手が冷たい。引かれるままに寄っていくと、まるで隠すように背後へ追いやられた。私を、マスターから隠すように。
「尾形さん……?」
「なんだお前ら、どうしたんだ?」
「アシリパさんもこっち来て」
杉元さんの有無を言わせぬ声色。尾形さんに掴まれた腕にかかる圧。穏やかに微笑みながらこちらを眺めるマスターの目。漸く発せられた尾形さんの声と、その言葉。
「お久しぶりですね、鶴見中尉殿」
視界の奥で、ノイズが走ったような気がした。
「タピオカって初めて食べました!おいしい!」
「でしょでしょ〜!?よかったぁ〜気に入ってくれて!」
大学生の長い長い夏休みが終わる頃、流行りものに疎い私とアシリパさんのために、杉元さんがタピオカドリンクの美味しいお店に連れてきてくれた。
もちもちとタピオカを頬張るアシリパさんと、並ぶ価値あるよね〜!うふふ!とすっかりキラキラ乙女モードの杉元さん。どっちもかわいくって癒やされる。
「それはさておき……なんで尾形もいるんだよ!」
「……」
「そんでタピオカ似合わねーよお前!なんで来たんだよ!」
「杉元も別に似合ってないぞ」
「あはは……」
杉元さんがビシィッと指さした先、ガタイのいいツーブロックの男性が無表情でかわいらしいパッケージのタピオカを吸う姿は、アンバランスで面白い。
私がアシリパさんと杉元さんと遊びに行くと言ったら、丁度お休みだったらしい尾形さんが急遽合流したので、杉元さんは若干拗ねていた。
一瞬考えごとをするように右上を見た尾形さんが、パステルカラーのストローから口を離す。
「彼氏だから」
「ん"っ」
「なんだ華大丈夫か!?」
むせた。アシリパさんが背中をさすってくれた。杉元さんに笑われたし、尾形さんには睨まれた。
「あ?彼氏だろうが」
「まあ、はい……そうなんですけど……」
いやわかるでしょ。わかってくださいよ。少なくとも自分で彼氏とか言うキャラじゃないじゃないですかあなた。びっくりしましたよ。
「今日は"だぶるでーと"だからな!ケンカするなよ杉元、尾形」
「ダブルデートって……意味わかってんの?アシリパさぁん」
「多分わかってなさそうですね……」
「シングルデートだろ」
「華さんに触るんじゃねえよクソ尾形、汚れるから」
「てめぇに文句言われる筋合いねぇよ、彼氏だから」
「もぉ〜〜」
「ケンカするなよ!!」
何かといがみ合う男性陣を引きずってタピオカ屋を出たあとは、これまた流行りの、泣けると噂の犬の映画を観に行った。
ぐずぐずになって泣いている私を見て尾形さんは眉間にしわを寄せたけど、杉元さんは私以上に泣いていた。アシリパさんは、どちらかと言うと売店で買った変わった味のポップコーンアソートに夢中らしい。抹茶のポップコーンとか、微妙に味の想像がつかない。私は無難にキャラメル味をつまんでいた。
それから満を持して、我がアルバイト先である喫茶店に向かいます!
「マスターお手製のお菓子が本当に美味しくて!私は特にマドレーヌが大好きなんです。タピオカから甘いものばっかりですけど……あっ、ポップコーンも甘かったですね!?」
「甘いもの大好きだよぉ」
「華のアルバイト先、どんな所か楽しみだ」
「甘いもの以外も美味しいですから!ね、尾形さん」
「なんでもいい」
北海道はもう大分気温が下がって、秋の風が心地良い。札幌駅から北に向かって皆でゆっくり歩いていく。またブツブツと言い争いを始める二人と、それを叱るアシリパさん。今世の二人はなんと言うか、仲が良いやら悪いやら……喧嘩するほど、なんて言うけれど。
"前の"二人のことは、正直なところ、あまり思い出したくない。
不意に肩に回された尾形さんの腕から伝わる体温が、やけにあたたかく感じた。
「お店の中で喧嘩したら嫌ですからね」
「別に喧嘩はしてない。こいつがやたら吠えてくるだけだ」
「そういう刺のある言い方するからですよ。大人なのに」
「…………」
少しは反省しているのか、わからないけど、ぐっと頭を寄せられた。頭の横をくっつけてゴリゴリされる。涼しくなってきて、スキンシップが増えた気がするなあ。たまにこの人のことを大きな猫みたいだと思う。叱られてしゅんとしている猫だと思えばかわいらしいものだ。
……いや、叱られたことをなあなあに済まそうとしているだけかもしれないな、これは。危ない危ない。まんまと絆されるところだった。隣では杉元さんがアシリパさんに叱られてしゅんとしていた。
そんなこんなで店に着いたので、尾形さんを引き剥がす。店内を覗き見て、特に混んでいないことを確認してからドアを開いた。ここまで来てUターンで帰ることはないけど、混んでいるところに入るのは少し申し訳なさがあるのだ。
カランカラン、と聞き慣れた入店ベルが響く。
「マスターこんにちは」
「いらっしゃい、待ってたよ」
「あっ、今日マドレーヌですか!?」
「約束だからね」
「わー!嬉しいです!」
前もって今日友人を連れてきますと伝えていたから、なんと私の大好きなマドレーヌを作ってくれたらしい。嬉しい。マスターの優しさを噛みしめる。
「おお!オシャレな店だな!」
「うふふふ、そうでしょうそうでしょう!」
続いて入ってきたアシリパさんの反応に更に嬉しくなる。私のお店じゃないけど、大好きなものを褒められるのは嬉しいものです。うふふ。
「マスターこちらが私の友人で、皆さんこちらが……え、どうしました?」
「華さん、そいつ…………覚えてないの?」
こちらで会ってから見ていなかった、杉元さんのこんな顔は。こんな怖い顔は。ああそうだ私は、この顔が嫌いで、嫌いで、ずっと笑っていて欲しいと思ったんだ。地を這うような低い声に寒気がする。
尾形さんが無言で私の腕を引いた。心做しか表情がいつもより険しい。触れた手が冷たい。引かれるままに寄っていくと、まるで隠すように背後へ追いやられた。私を、マスターから隠すように。
「尾形さん……?」
「なんだお前ら、どうしたんだ?」
「アシリパさんもこっち来て」
杉元さんの有無を言わせぬ声色。尾形さんに掴まれた腕にかかる圧。穏やかに微笑みながらこちらを眺めるマスターの目。漸く発せられた尾形さんの声と、その言葉。
「お久しぶりですね、鶴見中尉殿」
視界の奥で、ノイズが走ったような気がした。