もみじの手
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冷たい石の橋に座って、池の水面に向けて足を伸ばしてみたが、予想通りつま先は水面まであと3.3cmもあった。
べつに、水に足を入れたかったわけではない。
脚の力を抜き、楽に水面に向けて脚を垂らして、座位を安定させる。
小石を1つ池の中に落とすと、水面に小さな波紋が広がる。
けれど、ほんの11秒ほどで何事もなかったかのように水面は平たさを取り戻す。
小石を1つ塀の外に投げると、結界に小さな波紋が広がる。
けれど、ほんの11秒ほどで何事もなかったかのように結界は視認できなくなる。
石は塀の内側に落ちてしまっている。
「はぁ」
ため息か、無意識に息を詰めていたのか、どちらにしても意図せず深く息を吐く。
それと同時に、ひとひらの紅が水面に波紋をつくった。
この庭にはない種類のもみじ。
それは、風に吹かれて飛ばされてきた1枚。
暗い、流れのない池の水面を静かに浮かぶ。
うろこ雲の波に揺られるように、12mほど上をヒヨドリが飛んでいく。
明るい、夕焼け雲の波間をゆるやかに進む。
赤い掌状複葉は、まるで赤い手形。
お誕生会でもらった記念の手形のような、小さな赤い手。
誕生日ではない日に押した記念の手形のような、儚く強い赤い手。
3歳の秋と7歳の秋に、母は「記念手形を作りましょう」と言い出した。冬の近づく肌寒い日。
――「私の手、たくさんね」
落書き帳の1ページに1つずつ、押してある手形。
すべて同じ掌紋。すべて違う大きさ。
「あなたの本当のお母さんが、1ヶ月に1つずつ押してたんでしょうね…」
そう言ったお母さんの表情は寂しげだった。
手形は少しずつ大きくなり、最後のページは一部が切り取られていた。
残った部分には、小さな手に寄り添うように1つの大人の手形が押されている。
折れそうなほどの細い細い指…
その手に寄り添うように、幼い手形に何度も手を重ねた――
寄り添う2つの手の次のページに3歳の手、その次のページに7歳の手。
全部で16個の手形が収められた落書き帳。
いつの間にか開くことも、手を重ねることもしなくなった。
あの落書き帳は、今は…。
べつに、水に足を入れたかったわけではない。
脚の力を抜き、楽に水面に向けて脚を垂らして、座位を安定させる。
小石を1つ池の中に落とすと、水面に小さな波紋が広がる。
けれど、ほんの11秒ほどで何事もなかったかのように水面は平たさを取り戻す。
小石を1つ塀の外に投げると、結界に小さな波紋が広がる。
けれど、ほんの11秒ほどで何事もなかったかのように結界は視認できなくなる。
石は塀の内側に落ちてしまっている。
「はぁ」
ため息か、無意識に息を詰めていたのか、どちらにしても意図せず深く息を吐く。
それと同時に、ひとひらの紅が水面に波紋をつくった。
この庭にはない種類のもみじ。
それは、風に吹かれて飛ばされてきた1枚。
暗い、流れのない池の水面を静かに浮かぶ。
うろこ雲の波に揺られるように、12mほど上をヒヨドリが飛んでいく。
明るい、夕焼け雲の波間をゆるやかに進む。
赤い掌状複葉は、まるで赤い手形。
お誕生会でもらった記念の手形のような、小さな赤い手。
誕生日ではない日に押した記念の手形のような、儚く強い赤い手。
3歳の秋と7歳の秋に、母は「記念手形を作りましょう」と言い出した。冬の近づく肌寒い日。
――「私の手、たくさんね」
落書き帳の1ページに1つずつ、押してある手形。
すべて同じ掌紋。すべて違う大きさ。
「あなたの本当のお母さんが、1ヶ月に1つずつ押してたんでしょうね…」
そう言ったお母さんの表情は寂しげだった。
手形は少しずつ大きくなり、最後のページは一部が切り取られていた。
残った部分には、小さな手に寄り添うように1つの大人の手形が押されている。
折れそうなほどの細い細い指…
その手に寄り添うように、幼い手形に何度も手を重ねた――
寄り添う2つの手の次のページに3歳の手、その次のページに7歳の手。
全部で16個の手形が収められた落書き帳。
いつの間にか開くことも、手を重ねることもしなくなった。
あの落書き帳は、今は…。
