友人
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「お姉さんとはどんな話をしているんですか?」
「お姉ちゃん?えっと…『この前挨拶くらいしか出来なかったけど、的場さんってどんな人?』と訊かれたから、『高い壺売ってる人じゃなく、買ってる人みたい』って答えました」
どんなと聞かれても、いろいろ話した中からどの話題を挙げたらいいかわからないので、以前に一度話した話題を選択してみる。
「あはは、この前そんなこと言ってましたね。ほんと霊感商法の高い壺を売るってのは何なんですかね」
この前の話を覚えていたようで良かった。
「安く量産出来るし、もともと値段がピンキリで一般の人には相場がわかりにくいからじゃないでしょうか。あと、壺は基本的に持ち歩がないから外部の人の目に触れる機会が少なく、騙されていると指摘されにくいですし」
「なるほど、合理的ですね」
「壺を買って救われる合理的な理由や原理は思いつかないですけど。救われるもっともらしい理由を創作しやすいのは水とか直接摂取する物ですが、そういうのはどうしても個人の体質で合う合わないが出てくるので、宗教的にはやっぱり物品がいいんじゃないでしょうか」
「確かに。理にかなった推察ですね。それで、お姉さんは『高い壺買ってる人』という答えに対しては何と?」
「『シャーマンって感じだね!』と言ってました」
「ははは…シャーマンって感じですかね」
「『何かグツグツ煮たり、壺から香草の粉末とか掴み取って燃やしたりするのかな?シャーマン感あるね』と」
「あはははははは…すごいシャーマン感ありますね。もしかして、煮炊きするための物と思ってます?」
的場さんは可笑しそうに笑って目元を拭う。
「道具のお部屋に人が出入りする時に見た限りでは、煮炊きには不向きな形状だと思いましたが」
「ええ、壺はね、妖怪を中に封じるのに使うんですよ」
どこか含みのある笑み。
「壺の中に?」
「ええ。特別な材料と方法で焼かれた壺には強い封じの力があるのです」
「祓ったら消えて無くなるのかと思っていました」
「跡形もなく滅してしまう場合もありますが、こちらが負う負担が大きい場合や元神格の妖など滅すると問題が起きそうな場合など、封じておくことが多いですね。あと、使えそうな妖を封じて持ち帰ったりもします」
「…特別な壺だから高いんですか?」
つい「へー」と言いそうになって、年上の人にその相槌は失礼かと思い、質問に切り替える。
「そうですね。まあ、値段はピンキリですが、最近は術具の壺を焼ける職人も減っているので、相場は上がっていますね。基本的に封じる妖怪が強いほど、良い壺が必要になるので、妖力や術力があってもいい道具を手に入れられない者はこの業界ではなかなか上へは行けないのです」
「金銭的にもハイリスク・ハイリターンな業界なんですね」
「まあ実際は、決まった相手としか取り引きしない職人や業者も多いので、一概に金を積めばいいとも限りませんが。希少価値が高い術具はそもそも滅多にお目にかかれないので、運の要素もありますしね」
話の後半、何か別のことを思い出しているのか、一瞬視線が左上に泳いだ。
「…沢山の祓い屋大家を抱えている的場一門は財力面でもコネクション面でも情報網面でも有利だから、現状的場一門一強の状態になっているんですか?」
「そうですね。とはいえ、的場一門と取り引きしたくないという職人もいるので、上手く均衡が保たれているという面もありますね。あまり独占状態になるのもよろしくないですし」
「…他のお友達が困るからですか?」
「彼らはべつに友人ではありませんよ」
一瞬不思議そうな表情をしてからくすくすと笑う。
「ん?はい。友人関係にないと『お友達』とは言わないんですか?」
「?」
「名前がわからない同年代や年下の人のことを『お友達』と言わないですか?」
「ああ、その『お友達』…その表現16、7年ぶりくらいに聞きました」
「今どき使わない表現ですか?」
「今どきというより、小学生以上はあまり使わない表現です」
「えっ幼児語なんですか?」
「たぶん、そうですね」
「…名前のわからない年配の女性を『おばあさん』と言うのは?」
「それは大人同士でも言います」
「中年の男性を『おじさん』と言うのは?」
「それも言います」
「同年代や年下の他人は何というんですか?」
「『人』ですかね。まぁ、この場合『同業者』といったところでしょうか」
考えるように0.5秒ほど上に視線を向けてから彼は答える。
「『人』…急に広くなるんですね」
「広く?」
「日本語では、その年齢の人をあらわす言葉と血縁関係を表す言葉が同じだから、名前の知らない他人を呼称する時、自分と近しい関係の人物と同じ呼び方をするのだと思っていました」
「親族でないけれど『おばあさん』とか『おじさん』とか表現するという意味ではそうですね」
「少し年上だと兄と同じ呼称で『おにいさん』ですが、自分と同年代の近しい存在は『友達』だから、同年代の不特定多数の人や名前を知らない特定の人物は『お友達』なのだと思っていました」
「なるほど。実際は、友人とそうでない人との区別がはっきりする年齢になると違和感が強くなって使わなくなる表現ですが、説明されれば納得できる法則ですね」
「いえ、本当にそういう法則で発生した表現なのかはわかりませんが…とりあえず、『他のお友達が困っちゃう』みたいには使わないんですね」
「ええ、『お友達』は友人関係にある人限定です」
またくすくすと笑う。
「でも、代々継承している家業だと同年代と同業者とそれなりに繋がりがあるものではないんですか?」
祓い屋のお友達もいるのではないだろうか。
「知り合う機会は多いですしそれなりに交流はありますが、家同士の関係性や立場もあるので、『友人』というと難しいですね」
『的場は敵も多いんでね』という彼の言葉を思い出す。家同士が反目していなくとも、大家の御曹司となると遠巻きに噂されたり、媚びる者がいたりと、いろいろあるのだろう。本人が有能なら尚更。大家の御曹司、有能な若き頭首。沢山の人に囲まれて、何でも持っているけれど、閉ざされた孤独な王様のように…。
「まぁ、一人だけ、いますけどね。家のとこなど考えもせず、『本当に困ったら来い。相談くらいはきいてやれる』などと言うような、そんな…」
少しだけ視線を左上に向けたその表情が、どんな感情を映しているのか、私にはわからない。『そんな友人が』と続くのかと黙って待ってみても、彼は続きを口にすることなく、こちらに視線を戻してただ微笑んでみせた。
「お姉ちゃん?えっと…『この前挨拶くらいしか出来なかったけど、的場さんってどんな人?』と訊かれたから、『高い壺売ってる人じゃなく、買ってる人みたい』って答えました」
どんなと聞かれても、いろいろ話した中からどの話題を挙げたらいいかわからないので、以前に一度話した話題を選択してみる。
「あはは、この前そんなこと言ってましたね。ほんと霊感商法の高い壺を売るってのは何なんですかね」
この前の話を覚えていたようで良かった。
「安く量産出来るし、もともと値段がピンキリで一般の人には相場がわかりにくいからじゃないでしょうか。あと、壺は基本的に持ち歩がないから外部の人の目に触れる機会が少なく、騙されていると指摘されにくいですし」
「なるほど、合理的ですね」
「壺を買って救われる合理的な理由や原理は思いつかないですけど。救われるもっともらしい理由を創作しやすいのは水とか直接摂取する物ですが、そういうのはどうしても個人の体質で合う合わないが出てくるので、宗教的にはやっぱり物品がいいんじゃないでしょうか」
「確かに。理にかなった推察ですね。それで、お姉さんは『高い壺買ってる人』という答えに対しては何と?」
「『シャーマンって感じだね!』と言ってました」
「ははは…シャーマンって感じですかね」
「『何かグツグツ煮たり、壺から香草の粉末とか掴み取って燃やしたりするのかな?シャーマン感あるね』と」
「あはははははは…すごいシャーマン感ありますね。もしかして、煮炊きするための物と思ってます?」
的場さんは可笑しそうに笑って目元を拭う。
「道具のお部屋に人が出入りする時に見た限りでは、煮炊きには不向きな形状だと思いましたが」
「ええ、壺はね、妖怪を中に封じるのに使うんですよ」
どこか含みのある笑み。
「壺の中に?」
「ええ。特別な材料と方法で焼かれた壺には強い封じの力があるのです」
「祓ったら消えて無くなるのかと思っていました」
「跡形もなく滅してしまう場合もありますが、こちらが負う負担が大きい場合や元神格の妖など滅すると問題が起きそうな場合など、封じておくことが多いですね。あと、使えそうな妖を封じて持ち帰ったりもします」
「…特別な壺だから高いんですか?」
つい「へー」と言いそうになって、年上の人にその相槌は失礼かと思い、質問に切り替える。
「そうですね。まあ、値段はピンキリですが、最近は術具の壺を焼ける職人も減っているので、相場は上がっていますね。基本的に封じる妖怪が強いほど、良い壺が必要になるので、妖力や術力があってもいい道具を手に入れられない者はこの業界ではなかなか上へは行けないのです」
「金銭的にもハイリスク・ハイリターンな業界なんですね」
「まあ実際は、決まった相手としか取り引きしない職人や業者も多いので、一概に金を積めばいいとも限りませんが。希少価値が高い術具はそもそも滅多にお目にかかれないので、運の要素もありますしね」
話の後半、何か別のことを思い出しているのか、一瞬視線が左上に泳いだ。
「…沢山の祓い屋大家を抱えている的場一門は財力面でもコネクション面でも情報網面でも有利だから、現状的場一門一強の状態になっているんですか?」
「そうですね。とはいえ、的場一門と取り引きしたくないという職人もいるので、上手く均衡が保たれているという面もありますね。あまり独占状態になるのもよろしくないですし」
「…他のお友達が困るからですか?」
「彼らはべつに友人ではありませんよ」
一瞬不思議そうな表情をしてからくすくすと笑う。
「ん?はい。友人関係にないと『お友達』とは言わないんですか?」
「?」
「名前がわからない同年代や年下の人のことを『お友達』と言わないですか?」
「ああ、その『お友達』…その表現16、7年ぶりくらいに聞きました」
「今どき使わない表現ですか?」
「今どきというより、小学生以上はあまり使わない表現です」
「えっ幼児語なんですか?」
「たぶん、そうですね」
「…名前のわからない年配の女性を『おばあさん』と言うのは?」
「それは大人同士でも言います」
「中年の男性を『おじさん』と言うのは?」
「それも言います」
「同年代や年下の他人は何というんですか?」
「『人』ですかね。まぁ、この場合『同業者』といったところでしょうか」
考えるように0.5秒ほど上に視線を向けてから彼は答える。
「『人』…急に広くなるんですね」
「広く?」
「日本語では、その年齢の人をあらわす言葉と血縁関係を表す言葉が同じだから、名前の知らない他人を呼称する時、自分と近しい関係の人物と同じ呼び方をするのだと思っていました」
「親族でないけれど『おばあさん』とか『おじさん』とか表現するという意味ではそうですね」
「少し年上だと兄と同じ呼称で『おにいさん』ですが、自分と同年代の近しい存在は『友達』だから、同年代の不特定多数の人や名前を知らない特定の人物は『お友達』なのだと思っていました」
「なるほど。実際は、友人とそうでない人との区別がはっきりする年齢になると違和感が強くなって使わなくなる表現ですが、説明されれば納得できる法則ですね」
「いえ、本当にそういう法則で発生した表現なのかはわかりませんが…とりあえず、『他のお友達が困っちゃう』みたいには使わないんですね」
「ええ、『お友達』は友人関係にある人限定です」
またくすくすと笑う。
「でも、代々継承している家業だと同年代と同業者とそれなりに繋がりがあるものではないんですか?」
祓い屋のお友達もいるのではないだろうか。
「知り合う機会は多いですしそれなりに交流はありますが、家同士の関係性や立場もあるので、『友人』というと難しいですね」
『的場は敵も多いんでね』という彼の言葉を思い出す。家同士が反目していなくとも、大家の御曹司となると遠巻きに噂されたり、媚びる者がいたりと、いろいろあるのだろう。本人が有能なら尚更。大家の御曹司、有能な若き頭首。沢山の人に囲まれて、何でも持っているけれど、閉ざされた孤独な王様のように…。
「まぁ、一人だけ、いますけどね。家のとこなど考えもせず、『本当に困ったら来い。相談くらいはきいてやれる』などと言うような、そんな…」
少しだけ視線を左上に向けたその表情が、どんな感情を映しているのか、私にはわからない。『そんな友人が』と続くのかと黙って待ってみても、彼は続きを口にすることなく、こちらに視線を戻してただ微笑んでみせた。
